目次
「労働保険概算・確定保険料申告書」とは
「労働保険概算・確定保険料申告書」とは、年度の初めに前年度の労災保険・雇用保険料・一般拠出金を申告・納付(還付・充当)し、その年度の賃金総額の見込み額に応じた労災保険・雇用保険などの労働保険の保険料を申告・納付するための書類です。
「労働保険」とは
「労働保険」とは「労災保険」「雇用保険」の2つの労働に関する保険制度を総称したものです。保険給付は各保険制度から行われますが、保険料の徴収・申告については原則として労働保険として一体のものとして取り扱われることになっています。
雇用保険とは
「雇用保険」とは失業者や雇用継続困難者など「雇用に関する総合的な機能をもった保険制度」です。
労災保険とは
「労災保険」とは「業務上や通勤が原因で負傷、疾病、死亡した場合に労働者やその遺族を保護するための保険制度」です。
一般拠出金とは
「労災保険」とは「業務上や通勤が原因で負傷、疾病、死亡した場合に労働者やその遺族を保護するための保険制度」です。
一般拠出金に関しては、別の記事で解説していますので参考にしてください。
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労働保険の加入義務
労働保険は一部の農林水産業の事業所を除き、原則として労働者1名以上雇用するとその事業所は適用事業所となるため、事業主は労働保険の成立手続を行い、保険料や申告を行わないといけない義務が生じます。
労働保険料の納付の仕組み
労働保険料の納付は「年度更新」という仕組みをとっています。
「労働保険概算・確定保険料申告書」の年度更新の仕組み
労働保険の年度更新とは
労働保険料はその年度の賃金額に保険料率をかけて決定します。賃金額が確定しないと保険料の確定ができませんが、年度の初めの段階では、賃金額は確定しません。
そのため、まずその年度の見込み額を概算で申告・納付を行い、翌年度に確定した保険料を申告する「年度更新」という仕組みを用いています。
当年度の初めの時点では概算で納付しますので、「納付した概算保険料」と、「確定した確定保険料」に差が生じますので、その差額を確定保険料の申告時に納付・還付、もしくは次の年度に充当されます。
この年度の初めに納付する概算保険料を「労働保険概算保険料」、次の年度の初めに納付する確定した前年度の保険料を「労働保険確定保険料」といいます。
前年度から保険関係が成立していて概算保険料申告・納付している事業主の場合、前年度の確定保険料申告書とセットで今年度の概算保険料申告書を提出する事になります。その為、確定保険料と概算保険料の申告書は1枚で両方申告できるようになっています。
今回の記事では会社設立した場合など今年度に保険関係が成立した事業主ではなく、前年度から保険関係が成立している事業主の場合の「労働保険概算・確定保険料申告書」の書き方を解説しています。
「労働保険概算・確定保険料申告書」の様式第6号の構成
まず「労働保険概算・確定保険料申告書」の最新の様式第6号の構成は次のとおりになっています。
上段が「❶:前期の確定保険料の計算」+「❷:一般拠出金の計算」、中段が「❸:今期の概算保険料の計算」、下段が「❹前期に支払った概算保険料」、「❺:❶今回計算した前期の確定保険料から❹すでに前期支払った概算保険料の差額」を計算、記入して「❻:最終的に今年度納付する保険料と一般拠出金の合計」を記入します。
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
「労働保険概算・確定保険料申告書」の記入例
「労働保険概算・確定保険料申告書」の記入例は次のとおりになります。
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
「労働保険概算・確定保険料申告書」の書き方
「労働保険概算・確定保険料申告書」の書き方を各項目ごとに画像付きで説明していきます。
先述しましたが、会社設立した場合など今年度に保険関係が成立した事業主ではなく、前年度から保険関係が成立している事業主の場合の「労働保険概算・確定保険料申告書」の書き方を解説しています。
申告種別・労働保険番号・常時使用労働者数・雇用保険被保険者数
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 申告種別…概算を◯で囲う
- 労働保険番号…労働保険番号を記入
- 常時使用労働者数…保険関係成立届に記入した、1年間の1ヶ月平均使用労働者数を記入
- 雇用保険被保険者数…保険関係成立届に記入した、雇用保険被保険者数を記入
申告年月日・申告先労働局
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 申告年月日…申告年月日を記入
- 申告先労働局…申告先の労働局を記入
前期の保険料・算定基礎額・保険料率(労災保険分/雇用保険分/一般拠出金)
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 保険料算定基礎額(労災保険分)…算定期間内に支払った賃金総額を記入。
- 保険料率(労災保険分)…労災保険の保険料率を記入。
- 保険料算定基礎額(雇用保険分)…算定期間内に雇用保険被保険者に支払った賃金総額を記入。
- 保険料率(雇用保険分)…雇用保険の保険料率を記入。
- 保険料算定基礎額(一般拠出金)…算定期間内に支払った賃金総額を記入。
- 保険料率(一般拠出金)…一般拠出金の料率を記入。
- 1,000円未満の端数は切り捨て
- 労災保険率はこちらを参照
前期の確定保険料額(労働保険分/労災保険分/雇用保険分)・一般拠出金額
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 確定保険料額(労働保険分)…「労災保険分」+「雇用保険分」の確定保険料額の合計を記入。
- 確定保険料額(労災保険分)…③で記載した労災保険分の「賃金総額」×「労災保険料率」で算出した確定保険料額を記入。
- 確定保険料額(雇用保険分)…③で記載した雇用保険分の「賃金総額」×「労災保険料率」で算出した確定保険料額を記入。
- 一般拠出金…③で記載した「賃金総額」×「一般拠出金の料率」で算出した一般拠出金を記入。
- 一般拠出金は確定保険料と合計しませんのでご注意ください。
今期の保険料算定基礎額の見込額・保険料率(労災保険分/雇用保険分)
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 保険料算定基礎額の見込額(労災保険分)…算定期間内に支払う賃金総額の見込み額を記入。
- 保険料率(労災保険分)…労災保険の保険料率を記入。
- 保険料算定基礎額の見込額(雇用保険分)…算定期間内に雇用保険被保険者に支払う賃金総額の見込み額を記入。
- 保険料率(雇用保険分)…雇用保険の保険料率を記入。
- 1,000円未満の端数は切り捨て
- 労災保険率はこちらを参照
- 令和4年度においては年度の途中で雇用保険率が変更される予定があります。保険料算定基礎額の見込額(雇用保険分)については「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」に設けている概算保険料(雇用保険分)算定内訳の「②保険料算定基礎額(イ)+(ロ)」欄の額を記入。
今期の概算保険料額(労働保険分/労災保険分/雇用保険分)
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 概算保険料額(労働保険分)…「労災保険分」+「雇用保険分」の概算保険料額の合計を記入。
- 概算保険料額(労災保険分)…⑤で記載した労災保険分の「賃金総額の見込み額」×「労災保険料率」で算出した概算保険料額を記入。
- 概算保険料額(雇用保険分)…⑤で記載した雇用保険分の「賃金総額の見込み額」×「雇用保険料率」で算出した概算保険料額を記入。
延納の回数
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 延納回数…延納回数を記入。延納とは分割して支払う事を指していて、申告時期によりますが、最大3分割が可能です。1回で納付する場合は「1」と記入。
- 延納をするのに条件があり、概算保険料が40万円以上(労災保険または雇用保険に係る保険関係のみ成立している事業は20万円)の場合や労働保険事務組合に事務を委託している場合に行うことができます。
申告済み概算保険料額・差引額(充当額・還付額・不足額)
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 申告済み概算保険料額…前年度にすでに支払っている概算保険料の金額を記入
- 差引額(充当額・還付額・不足額)…「申告済み概算保険料額」と❹で記入した「確定保険料額(労働保険分)」を比較して、「申告済み概算保険料額」の方が多ければ多い分を還付か今期の保険料の支払いへ充当へ選択。少なければ不足額を記入。
法人番号
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
概算保険料額・不足額・今期労働保険料・一般拠出金・今期納付額
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 概算保険料額…❻で記入した概算保険料額(労働保険分)の金額を記入
- 不足額…❽で計算して不足額があれば不足額を記入
- 今期労働保険料…「概算保険料額」と「不足額」の合計を記入
- 一般拠出金…❹で記入した一般拠出金を記入
- 今期納付額…「今期労働保険料」と「一般拠出金」の合計を記入
事業又は作業の種類・事業(所在地・名称)・事業主(住所・名称・氏名)
Neutral「労働保険概算・確定保険料申告書」の「書き方・記入例」
- 事業又は作業の種類…作業の種類を記入。
- 事業(所在地)…事業の所在地を記入。
- 事業(名称)…事業の名称を記入。
- 事業主(住所)…事業主の住所を記入。
- 事業主(名称)…事業主の名称を記入。
- 事業主(氏名)…事業主の氏名を記入。
「労働保険概算・確定保険料申告書」のダウンロード方法
「労働保険概算・確定保険料申告書」は納付書も兼ねているため、ダウンロードをすることはできません。
「労働保険概算・確定保険料申告書」はどこでもらえる?
「労働保険概算・確定保険料申告書」は公共職業安定所(ハローワーク)または労働基準監督署でもらうことが出来ます。
「労働保険概算・確定保険料申告書」の添付書類
前年度から保険関係が成立している場合の「労働保険概算・確定保険料申告書」は原則として添付書類の提出は不要です。
ただし、会社設立の場合など初めて保険関係が成立した事業の場合は「労働保険保険関係成立届」「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」に関しては後日提出する必要がある書類になるので労働保険概算保険料申告書とあわせて提出する方も多いです。
- 「労働保険保険関係成立届」
- 「雇用保険適用事業所設置届」
- 「雇用保険被保険者資格取得届」
初めて保険関係が成立した場合の「労働保険概算保険料申告書」の記入例・書き方や添付書類に関しては別の記事で解説していますので参考にしてください。
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「労働保険概算・確定保険料申告書」の提出期限
「労働保険概算・確定保険料申告書」の提出期限は「6月1日から7月10日まで」です。
提出期限を過ぎた場合の延滞金
「労働保険概算・確定保険料申告書」の納付を怠った場合は「延滞金」が徴収されます。
督促による指定期限である「納期限」までに完納しないと、保険料とは別で「延滞金」を納付する義務が生じます。
「延滞金」は、法定納期限の翌日から納付されるまでの日数に応じて、保険料額に年14.6%を乗じて計算となりますのでご注意ください。※最初の2か月間は軽減措置が設けられています。
「労働保険概算・確定保険料申告書」の提出先
「労働保険概算・確定保険料申告書」の提出先は「所轄の労働基準監督署」もしくは「所轄の都道府県労働局」「金融機関・郵便局」です。
「労働保険概算・確定保険料申告書」の個人事業主の記入例・書き方の注意点
「労働保険概算・確定保険料申告書」の個人事業主の場合の提出方法も法人の場合と同様です。
記入例や書き方の注意点としては事業所の名称・氏名を記入するときに屋号だけではなく、氏名も記入することにご注意ください。
「労働保険概算・確定保険料申告書」のe-Govでの電子申請の方法
「労働保険概算・確定保険料申告書」の電子申請で届出することも可能です。
e-Gov
「確定保険」と検索するとさまざまなパターンの「労働保険確定保険料申告」が出てきます。
建設の場合、一人親方の場合、継続事業の場合などが出てきますので一般的には継続事業を選択する形になりますが、もしご自身での判断が難しい場合は顧問先の社会保険労務士へ相談してください。
e-Gov
すでにe-Govをご利用の方は次のリンク先から申請を行うことが可能です。
e-Govや電子申請をまだ行なったことがないという方は別の記事で詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください。
厚生労働省:労働保険年度更新電子申請操作マニュアル
厚生労働省から「労働保険年度更新電子申請操作マニュアル」の資料が公表されているのでこちらもあわせて参考にしてください。
「労働保険確定保険料申告書」事業廃止の場合の書き方・記入例
年度更新だけではなく、事業を廃止した場合も労働保険料が確定しますので、「労働保険確定保険料申告書」を提出する必要があります。
「労働保険確定保険料申告書」事業廃止の場合の構成
「労働保険確定保険料申告書」事業廃止の場合の構成
「労働保険確定保険料申告書」事業廃止の場合の書き方
「労働保険確定保険料申告書」事業廃止の場合の書き方
「労働保険確定保険料申告書」の事業廃止の場合の提出期限
「労働保険確定保険料申告書」の事業廃止の場合の提出期限は、保険関係の消滅後50日以内が提出期限となっています。
保険関係の消滅とは
事業が廃止することで保険関係が消滅します。廃止の場合は保険関係の成立時に提出した保険関係成立届のような届出は不要で、労働保険確定保険料申告書のみ提出します。
「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」書き方・記入例
「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」書き方・記入例はこちらです。
令和4年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方
「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」ダウンロード
「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」のエクセルは厚生労働省ホームページの「労働保険関係各種様式」からダウンロードすることが出来ます。
「労働保険概算・確定保険料申告書」の保管期間
「労働保険概算・確定保険料申告書」の保管期間 は納付日から起算して3年間となっています。
まとめ「労働保険概算・確定保険料申告書」書き方・記入例を解説!「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」「事業廃止」「保管期間」 最新の様式第6号の場合で紹介
「労働保険概算・確定保険料申告書」の記入例・書き方を解説しました。
全体の構成が複雑ですので、構成から頭に入れて記入するとスムーズに記入できますので参考にしてください。