「企画業務型裁量労働制」をわかりやすく解説!メリット・要件・企画業務型裁量労働制に関する決議届・報告の書き方・具体例・職種・残業代・様式のダウンロードについても紹介

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目次

「企画業務型裁量労働制」とは

「企画業務型裁量労働制」とは労働者の裁量に委ねる必要のある特定の業務を行なっている労働者の労働時間を労使委員会で定めた時間労働したものとみなす制度で、みなし労働時間制の1つです。

みなし労働時間制とは

みなし労働時間制とは、労働時間の算定の方法の1つです。通常、労働時間の算定は「使用者の指揮命令下にある実際に働いた時間」になりますが、使用者の指揮命令下にないような状況の特定の労働者に対して、みなし労働時間制を導入することでみなし労働時間として定めた時間労働したものとみなすことができるようになります。

みなし労働時間制には「事業場外労働のみなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3種類があります。「事業場外労働のみなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」に関しては別の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

「企画業務型裁量労働制」を導入するメリット

「企画業務型裁量労働制」を導入すると次のようなメリットがあります。

  1. 人件費を予測しやすい
  2. 労働者に裁量を持たせることで責任を持ち、生産性が高い仕事をしてくれるようになる
  3. 長く働くのではなく、成果に目を向けて仕事をしてもらえるようになる

「企画業務型裁量労働制」を導入する流れ

「企画業務型裁量労働制」を導入する流れは次の7ステップです。

  1. 労使委員会を設置
  2. 企画業務型裁量労働制の必要決議事項を労使委員会で決議する
  3. 労働基準監督署長に決議を届出
  4. 対象労働者の同意
  5. 企画業務型裁量労働制を実施・運営
  6. 労働基準監督署長への6ヶ月に1回の定期報告
  7. 決議の有効期間の満了(再度労使委員会にて決議)

労使委員会とは

労使委員会とは労働時間・賃金・その他の労働条件に関する事項の調査審議を行い事業主に対して意見を述べる委員会です。使用者側の代表委員と労働者側の代表委員で構成されます。

労使委員会の設置の手順

労使委員会の設置の手順は次のとおりになっています。

  1. 労使での事前にスケジュールや目的などを話し合う
  2. 代表委員の指名
  3. 運用ルールを定めた運用規定の策定
  4. 運用規定を労使委員会で同意を得る

労使委員会の要件

労使委員会の要件は次の2つを満たしている必要があります。

  1. 労働者側の代表委員が半数を占めている(労働者側の代表委員1名、使用者側の代表委員1名の合計2名は認められない)
  2. 委員会の議事について議事録が作成・保存され、委員会の議事が労働者に周知されている

ちなみに、労使委員会は企画業務型裁量労働制以外にもその他の特定の労使協定を代替えすることができます。

労使委員会の構成委員の指名

使用者側の代表委員、労働者側の代表委員は指名によって選出されます。

  • 使用者側の代表委員…使用者が指名
  • 労働者側の代表委員…過半数労働組合もしくは過半数労働組合がない場合は過半数代表者が指名

労働者側の代表委員の指名の方法は、過半数労働組合がない場合は過半数代表者を投票や挙手など民主的な方法で選出を行い、過半数労働組合もしくは過半数代表者は管理監督者以外の者の中から労働者を代表する委員を任期を定めて指名する必要があります。

労使委員会の運営規定

労使委員会の運営ルールである運営規定では労使委員会を運営していく為に必要な事項を規定する必要があります。運営規定で規定する項目は次の5つになっています。

運営規定
東京都労働局・労働基準監督署「企画業務型裁量労働制」の適切な導入のために

労使委員会の運営規定の具体例

労使委員会の運営規定の具体例は次のとおりです。

運営規定
東京都労働局・労働基準監督署「企画業務型裁量労働制」の適切な導入のために

「企画業務型裁量労働制」労使委員会で決議する内容

「企画業務型裁量労働制」を導入するために労使委員会では必要決議事項について、委員の5分の4以上の多数決で決議する必要があります。

「企画業務型裁量労働制」労使委員会の必要決議事項

「企画業務型裁量労働制」を導入する上での労使委員会の必要決議事項は次のとおりです。

  1. 対象業務
  2. 対象労働者の範囲
  3. みなし労働時間(1日あたりの時間数)
  4. 対象労働者の健康・福祉確保の措置(具体的措置とその措置を実施する旨)
  5. 対象労働者の苦情処理の措置(具体的措置とその措置を実施する旨)
  6. 労働者の同意を得なければならない旨及びその手続き、不同意労働者に不利益な取り扱い禁止の旨

「企画業務型裁量労働制」の対象業務・職種

「企画業務型裁量労働制」の対象業務・職種は次の4つの要件を全て満たした業務となっています。

  1. 事業の運営に関する業務であること
  2. 企画、立案、調査及び分析の業務であること
  3. 遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があると業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
  4. 企画、立案、調査及び分析という相互に関連し合う作業をどのように、いつ行うかなどの裁量が労働者に認められている業務であること

労働基準法 第38条4項1 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務(以下この条において「対象業務」という。)

「企画業務型裁量労働制」の対象労働者

「企画業務型裁量労働制」の対象労働者は次の2つの要件を満たしている必要があります。

  1. 対象業務に状態として従事している
  2. 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有している

対象業務に従事していても、新卒の場合は対象業務を適切に遂行するための知識、経験を有しているとは認められません。一般的には3年〜5年の対象業務経験が必要とされています。

健康・福祉確保の措置とは

「企画業務型裁量労働制」を導入する場合に使用者は対象労働者の健康・福祉確保の措置を行わないといけません。

健康・福祉確保をするために次の2つを労使委員会で決議する必要があります。

  1. 対象労働者の勤務状況を把握する方法を具体的に定める
  2. 把握した勤務状況に応じてどういう状況の対象労働者に対して、いかなる健康・福祉確保措置を、どのように講ずるかを明確にすること

健康・福祉確保措置の例

健康福祉確保措置
東京都労働局・労働基準監督署「企画業務型裁量労働制」の適切な導入のために

苦情処理の措置

「企画業務型裁量労働制」を導入する場合に使用者は対象労働者の苦情処理の措置を行わないといけません。

苦情処理をするために次のような事項を労使委員会で決議する必要があります。

  1. 苦情の申出の窓口
  2. 取り扱う苦情の範囲
  3. その他

取り扱う苦情の範囲として企画業務型裁量労働制の導入の際に評価制度や賃金制度が併せて導入されるケースがありますが、評価制度や賃金制度なども取り扱う苦情の範囲にするなどもしておいた方が良いでしょう。

労働者の同意を得なければならない旨及び不同意労働者に不利益な取り扱い禁止

企画業務型裁量労働制を導入する場合は労働者本人の同意が必要になります。また同意しなかった労働者に対して使用者が不利益な取り扱いを行うことは禁止されているため、労使委員会でそれらを決議する必要があります。

  1. 労働者の同意を得なければならない旨
  2. 労働者の同意の手続き方法
  3. 不同意労働者に不利益な取り扱い禁止の旨
  4. 対象となる労働者から同意を撤回することを認める場合にはその要件・手続き

労使委員会の決議の有効期間

労使委員会の決議の有効期間は3年以内とすることが望ましいとされています。

また「委員会の半数以上から決議の変更等の労使委員会の開催の申し出があった場合に、決議の有効期間の途中であっても決議の変更等のための調査審議を行うもとすること」についても、有効期間と併せて決議することが望ましいとされています。

労使委員会の決議の記録の保存期間

労使委員会の決議は「有効期間及び有効期間満了後、3年間保存」する必要があります。

企画業務型裁量労働制に関する決議届の記入例・書き方

企画業務型裁量労働制に関する決議届の記入例・書き方は次のとおりです。

東京都労働局・労働基準監督署「企画業務型裁量労働制」の適切な導入のために

企画業務型裁量労働制に関する報告(労働基準監督署長へ6ヶ月以内に1回の定期報告)

企画業務型裁量労働制を導入後、使用者は決議が行われた日から起算して6ヶ月以内ごとに1回所定の様式により事業所の所轄の労働基準監督署長へ定期報告を行うことが義務付けられています。

報告する項目は次のとおりです。

  1. 対象労働者の労働時間の状況
  2. 対象労働者の健康及び福祉を確保する措置の実施状況

企画業務型裁量労働制に関する報告の書き方・記入例

企画業務型裁量労働制に関する報告の書き方・記入例は次のとおりです。

東京都労働局・労働基準監督署「企画業務型裁量労働制」の適切な導入のために

企画業務型裁量労働制を導入する場合の就業規則の改訂

企画業務型裁量労働制を導入する場合に就業規則の改訂を行う必要があります。

東京都労働局・労働基準監督署「企画業務型裁量労働制」の適切な導入のために

「企画業務型裁量労働制に関する決議届・報告」ダウンロード

「企画業務型裁量労働制に関する決議届・報告」は厚生労働省ホームページからダウンロードすることが出来ます。

まとめ:「企画業務型裁量労働制」をわかりやすく解説!メリット・要件・企画業務型裁量労働制に関する決議届・報告の書き方・具体例・職種・残業代についても紹介

今回の記事では「企画業務型裁量労働制」をわかりやすく解説しました。

「企画業務型裁量労働制」そのものは少し複雑ですが、労使委員会を設置して対象業務や対象労働者、その他の措置を定めた上で労働者への同意を行い、労働基準監督署へ届出を行い、改めて労働者への周知を行った上で「企画業務型裁量労働制」を運営していきましょう。

運営後に健康福祉の確保措置の実施と、6ヶ月以内ごとに1回労働基準監督署長への定期報告がありますのでご注意ください。

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