36協定の「月45時間」を3ヶ月連続で超えたらどうなる?社会保険労務士が法的根拠とともに解説

時間外労働(残業)の管理をしている中で、「気づいたら3ヶ月連続で月45時間の残業を超えてしまっていた」というご相談は、企業の人事労務担当者様から非常によくいただきます。

「36協定を締結していれば大丈夫なのでは?」「特別条項があるから問題ない?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、「月45時間を3ヶ月連続で超える」こと自体が直ちに労働基準法違反になるとは限りません。一方で、これは労務管理上の重要な「危険信号」であり、健康障害防止や安全配慮義務の観点から企業が真剣に向き合うべき問題です。

本記事では、社会保険労務士の立場から、労働基準法・労働安全衛生法の条文、厚生労働省の通達・認定基準など、公的な根拠に基づいて「月45時間・3ヶ月連続」の意味と、企業が取るべき実務対応を解説します。


目次

1. そもそも36協定とは何か

36協定とは、労働基準法第36条に基づき、労働者に法定労働時間(1日8時間・週40時間、労働基準法第32条)を超えて時間外労働をさせる場合、または法定休日に労働させる場合に、あらかじめ労使間で締結し、所轄労働基準監督署長に届け出る労使協定のことです。

労働基準法第36条第1項では、使用者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(それがない場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による協定をし、これを行政官庁(労働基準監督署)に届け出た場合において、その協定で定めるところによって法定労働時間を延長し、または法定休日に労働させることができるとされています。

つまり、36協定を締結・届出していない状態で法定時間外労働をさせることは、労働基準法第32条違反として扱われます。36協定はあくまで「時間外労働・休日労働をさせても違法にならないための前提条件」であり、無制限に残業をさせてよいことを意味するものではありません。

2. 時間外労働の上限規制:原則は「月45時間・年360時間」

2018年の働き方改革関連法による労働基準法改正により、それまで大臣告示(限度基準告示)にとどまっていた時間外労働の上限が、罰則付きの法律上の規制として明確化されました。この改正は、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から適用されています。

労働基準法第36条第3項・第4項により、時間外労働の限度時間は、原則として

  • 1ヶ月45時間
  • 1年360時間

と定められています(1年単位の変形労働時間制の対象者については月42時間・年320時間)。

この「月45時間・年360時間」は、臨時的な特別の事情がない限り、36協定を締結していても超えることができない上限です。1分でもこれを超える時間外労働をさせれば、原則として労働基準法違反となります。

3. 「特別条項付き36協定」でも無制限ではない

繁忙期など、臨時的かつ特別な事情がある場合に限り、労使であらかじめ「特別条項」を定めた36協定(特別条項付き36協定)を締結することで、月45時間・年360時間を超える時間外労働をさせることが可能になります(労働基準法第36条第5項)。

ただし、特別条項付き36協定を締結した場合でも、以下の絶対的な上限を超えることはできません(労働基準法第36条第5項・第6項)。

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、2ヶ月・3ヶ月・4ヶ月・5ヶ月・6ヶ月の各平均がいずれも80時間以内
  • 月45時間を超えることができるのは、1年間のうち6ヶ月(6回)まで

この最後の「年6回まで」というルールが、本記事のテーマである「3ヶ月連続」を考えるうえでの重要な出発点になります。

4. 「月45時間を3ヶ月連続で超える」ことは違法なのか

4-1. 36協定の枠組みだけで見た場合

労働基準法第36条第5項が定める「月45時間を超えることができるのは年6回まで」というルールは、あくまで「回数」の上限であり、「連続してはいけない」とは規定していません。

したがって、特別条項付き36協定を締結しており、かつ協定で定めた延長事由・上限時間・回数の範囲内であれば、3ヶ月連続で月45時間を超える時間外労働をさせたとしても、その事実だけで直ちに労働基準法違反になるわけではありません。

もっとも、次の点には注意が必要です。

  • 特別条項の発動は「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等」に伴う臨時的なものに限られ、単なる恒常的な繁忙を理由に濫用することはできません。
  • 年間の上限回数(6回)を超えて月45時間超の月が発生した時点(=7回目)で、労働基準法違反となります。3ヶ月連続で超過した場合、その時点で年間の残り枠が3回しかなくなるため、年間を通じた管理が一層重要になります。
  • 単月100時間未満、複数月平均80時間以内という絶対的上限は、連続しているか否かにかかわらず常に遵守しなければなりません。3ヶ月連続で45時間を超えている状況は、この複数月平均80時間規制に抵触するリスクが高まる局面でもあります。

つまり「3ヶ月連続で45時間超=即違法」ではありませんが、「違法に転じる一歩手前の状態」であることは間違いなく、協定の範囲内かどうか、他の絶対的上限に抵触していないかを都度確認する必要があります。

4-2. 特別条項を締結していない場合

そもそも特別条項付き36協定を締結していない事業場では、月45時間・年360時間が絶対的な上限です。この場合、1回でも月45時間を超えれば労働基準法第32条・第36条違反となり得ます。3ヶ月連続かどうか以前の問題として、特別条項の有無を必ず確認してください。

5. なぜ「月45時間」がボーダーラインとされるのか:過労死ラインとの関係

「月45時間」という数字が意識される背景には、労働基準法上の上限規制だけでなく、厚生労働省が定める労災認定基準(いわゆる「過労死ライン」)の考え方があります。

厚生労働省は、脳血管疾患・虚血性心疾患等の労災認定基準として「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」(令和3年9月14日付け基発0914第1号、令和5年10月18日付け基発1018第1号により一部改正)を定めています。

この認定基準では、時間外労働時間と発症との関連性について、次のような考え方が示されています。

  • 発症前1ヶ月間におおむね100時間、または発症前2ヶ月間から6ヶ月間にわたって1ヶ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性が強いと評価できること
  • 発症前1ヶ月間から6ヶ月間にわたって、1ヶ月あたりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

つまり「月45時間」は、それ自体が病気を発症させる基準ではありませんが、厚生労働省の認定基準上、これを超える時間外労働が続くほど、業務起因性の評価が段階的に強まっていく分岐点として位置づけられています。3ヶ月連続で45時間を超えている状態は、その労働者について健康障害リスクが徐々に高まりつつある局面と理解し、単なる「協定違反の有無」というコンプライアンスの視点だけでなく、健康管理の視点からも注視すべき状態といえます。

6. 医師による面接指導制度との関係

労働安全衛生法は、長時間労働者に対する健康確保措置として、医師による面接指導の制度を設けています。

労働安全衛生法第66条の8第1項および労働安全衛生規則第52条の2により、休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えて労働させた時間が1ヶ月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければならないとされています。また、時間外・休日労働が1ヶ月あたり100時間を超える研究開発業務従事者については、本人の申出の有無にかかわらず面接指導の実施が義務付けられています(労働安全衛生法第66条の8の2、労働安全衛生規則第52条の7の2)。

面接指導の法的な発動基準は「月80時間超」であり「月45時間」ではありませんが、月45時間超が3ヶ月連続しているような労働者は、その後の月に80時間を超えるリスクや、疲労が慢性的に蓄積していくリスクが相対的に高い層と考えられます。法定の基準に達していないからといって放置するのではなく、産業医との連携や任意の健康相談の機会を早めに設けることが望ましい対応といえます。

7. 企業が負う安全配慮義務との関係

使用者は、労働契約法第5条により、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っています。

36協定や特別条項の範囲内で残業をさせていたとしても、それによって労働者の健康に具体的な影響が生じた場合、安全配慮義務違反として民事上の責任(損害賠償責任等)を問われる可能性がある点には注意が必要です。労働基準法上の上限規制の遵守と、安全配慮義務の履行は、別個の問題として整理しておく必要があります。月45時間超の状態が3ヶ月連続している労働者については、単に「協定の範囲内だから問題ない」と判断するのではなく、業務量の見直しや人員配置の是正など、実質的な負荷軽減策を検討することが求められます。

8. 違反した場合の罰則

36協定で定めた上限や、労働基準法第36条に定める絶対的な上限(単月100時間未満、複数月平均80時間以内、年720時間以内、月45時間超は年6回までなど)を超えて時間外労働をさせた場合は、労働基準法違反となります。

具体的には、行為者に対して6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(労働基準法第119条第1号)、法人に対しても両罰規定により30万円以下の罰金(労働基準法第121条第1項)が科される可能性があります。

9. 実務担当者が取るべき3つの対応

月45時間超の状態が複数月にわたって発生している場合、企業として次のような対応を検討することをおすすめします。

9-1. 36協定・特別条項の内容を再点検する

現在締結している36協定に特別条項が定められているか、定められている場合はどのような事由で、年何回まで、何時間まで延長可能と記載されているかを確認します。あわせて、単月100時間未満・複数月平均80時間以内・年720時間以内という絶対的上限に抵触していないかを、労働者ごとに毎月確認する体制を整えることが重要です。

9-2. 労働時間を客観的な方法で把握する

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)は、使用者に対し、タイムカードやパソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することを求めています。自己申告制のみに依存せず、客観的な記録によって時間外労働の状況を把握することが、月45時間超の連続発生を早期に発見するための前提となります。

9-3. 産業医・健康管理体制との連携を強化する

月45時間超が続く労働者については、法定の面接指導の対象(月80時間超等)に該当していなくても、事業場の実情に応じて、産業医への情報共有や任意の面談機会の設定を検討することが望まれます。労働安全衛生法第13条は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に産業医の選任を義務付けており、産業医は労働者の健康管理等について事業者に勧告する権限を有しています(労働安全衛生法第13条第5項)。日頃から労働時間データを産業医と共有できる体制を整えておくことが、健康障害の予防につながります。

10. まとめ

「36協定 月45時間 3ヶ月連続」というテーマについて、法的根拠に基づき整理すると、以下のようになります。

  • 時間外労働の原則的な上限は月45時間・年360時間(労働基準法第36条第4項)
  • 特別条項付き36協定を締結していれば、年6回までは月45時間を超えることが可能(労働基準法第36条第5項)
  • 「3ヶ月連続」であること自体は、直ちに違法性を意味するものではないが、年間の残り枠(あと3回)が少なくなっている状態であり、単月100時間未満・複数月平均80時間以内という絶対的上限との関係にも注意が必要
  • 厚生労働省の労災認定基準上、月45時間を超える時間外労働が続くほど、業務と健康障害発症との関連性が段階的に強まるとされている
  • 法令遵守(コンプライアンス)の観点だけでなく、安全配慮義務や労働者の健康確保の観点からも、月45時間超が連続している状態は早期に是正・フォローすべき対象である

36協定の運用は、単に「協定の範囲内に収まっているかどうか」を確認するだけでなく、労働者の健康確保という本来の趣旨に立ち返って点検することが重要です。自社の36協定の内容や運用に不安がある場合は、顧問社会保険労務士など専門家に相談し、個別の事情に応じた対応を検討されることをおすすめします。


参考文献・参照リンク

本記事は以下の法令・行政資料等を根拠に作成しています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案における法的判断を保証するものではありません。実際の労務管理・36協定の運用にあたっては、所轄労働基準監督署または顧問社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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