「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは?「流れ・保険料・注意点・メリット」について詳しく解説

雇用保険_マルチジョブホルダー制度とは

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2022年1月1日に施行された雇用保険マルチジョブホルダー制度。

新しく施行された制度なので、どのような制度か分からない方も多いのでしょうか。

今回の記事では雇用保険マルチジョブホルダー制度について解説しています。

目次

「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは?

雇用保険_マルチジョブホルダー制度とは

「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは、ダブルワークのように複数の事業所で勤務する「65歳以上の労働者」が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して一定の要件を満たす場合、任意で雇用保険に加入することができる制度です。2022年1月1日から施行スタートされました。

65歳以上の労働者 週の所定労働時間と給料 雇用保険の適用
A社 B社
今まで 10時間
10万円
12時間
12万円
雇用保険に加入不可
雇用保険マルチジョブホルダー制度 AB社で雇用保険に加入

雇用保険の加入要件は、1つの会社での週の所定労働時間が20時間以上となりますので、今まではこのように2つの会社の週の所定労働時間を合計して20時間以上の場合でも、それぞれの会社での週の所定労働時間が20時間未満の場合、雇用保険に加入することが出来ませんでした。

雇用保険マルチジョブホルダー制度を適用することにより、このような場合でもAB社で雇用保険に加入することが出来るようになりました。

3つ以上の会社で勤務している場合の「雇用保険マルチジョブホルダー制度」

比較 週の所定労働時間と給料 雇用保険の適用
A社 B社 C社
今まで 10時間
10万円
12時間
12万円
11時間
11万円
雇用保険に加入不可
雇用保険マルチジョブホルダー制度 BC社で雇用保険に加入を選択

3つ以上の事業所で勤務している場合は、マルチ高年齢被保険者として申出をする方が雇用保険に加入する2つの事業所を選択することになります。

雇用保険マルチジョブホルダー制度の「適用要件」

雇用保険マルチジョブホルダー制度の「適用要件」は次のいずれの要件にも該当する場合に適用されます。

  • 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
  • 2つの事業所の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であること
  • 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

これらの要件に適用した65歳以上の労働者は雇用保険の高年齢被保険者となり、「マルチ高年齢被保険者」と呼びます。

「マルチ高年齢被保険者」とは?

雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用要件を満たし、ご自身のご住所の管轄のハローワークへ申請をした「65歳以上の労働者がマルチ高年齢被保険者」となります。

雇用保険では、65歳以上の労働者を高年齢被保険者と呼んでいますが、雇用保険マルチジョブホルダー制度によって被保険者となった高年齢被保険者を「マルチ高年齢被保険者」としています。

「いつから」マルチ高年齢被保険者になる?

マルチ高年齢被保険者は、適用要件を満たし、ご自身のご住所の管轄ハローワークへ申請をした日からマルチ高年齢被保険者となります。

雇用保険マルチジョブホルダー制度の「申請の流れ」

通常、雇用保険の申請手続きは事業主が行いますが、雇用保険マルチジョブホルダー制度の場合に2つの事業主とのやりとりが発生するため、どちから片方の事業主が、もう片方の事業主とのやりとりは困難になるため、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、「マルチ⾼年齢被保険者としての適用を希望する本人が申請の手続きを行います。

雇用保険マルチジョブホルダー制度の「申請の流れ」
STEP1 「マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」「個人番号登録・変更届」「被保険者資格取得時アンケート」の3点に本人が記入
STEP2 「マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」に、2つの事業所の事業主が記入
STEP3 「マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」「個人番号登録・変更届」「被保険者資格取得時アンケート」「本人確認書類」の4点を本人が住所管轄のハローワークへ届出
STEP4 申出を⾏った日から特例的にマルチ⾼年齢被保険者になる

「マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」「個人番号登録・変更届」「被保険者資格取得時アンケート」に関しては厚生労働省のホームページからダウンロードすることが出来ます。

厚生労働省ホームページ「各種届出資料ダウンロード

届出を行うハローワークは「ご自身の住所を管轄するハローワークしか受理されません」のでご注意下さい。

マルチ高年齢被保険者「雇用保険料」は?

マルチ高年齢被保険者になると「雇用保険料を事業主・労働者ともに支払う義務が発生」します。

通常の雇用保険と同様にそれぞれの事業主が労働者に支払う賃金総額に保険料率を乗じて計算することを原則としています。

マルチ高年齢被保険者 給料
A社 B社
給料 10万円 12万円
雇用保険料 10万円に対する
雇用保険料を納付
12万円に対する
雇用保険料を納付

保険料率:厚生労働省ホームページ「雇用保険料率について

雇用保険マルチジョブホルダー制度の「メリット」

雇用保険マルチジョブホルダー制度は65歳以上の方は、一般的には定年を迎えていて仕事をする場合は、掛け持ちでのダブルワークになりがちですが、65歳未満の方と比較して失業の可能性も非常に高いことが想定されます。

  • 65歳以上は定年を迎えている
  • 掛け持ちでのダブルワークになりやすい
  • 65歳未満の労働者と比較して失業の可能性も非常に高い

雇用保険マルチジョブホルダー制度によって雇用保険に加入することで「失業した場合の所得保障が得られるというメリットがあります。

高年齢求職者給付金は?

高年齢被保険者だった方が失業した場合、要件を満たすと高年齢求職者給付金という失業保険をもらうことが出来ます。

マルチ高年齢被保険者であった方が失業した場合も、要件を満たせば「高年齢求職者給付金を一時金で受給することができる」ようになります。

高年齢求職者給付金の要件

高年齢求職者給付金の要件は次の2つに該当することが要件となっています。

要件①「離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あること」
被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切っていった期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。
なお、令和2年8月1日以降に離職した人について、賃金支払基礎日数が11日以上の月が6か月ない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として計算します。
要件②「失業の状態にあること」
離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」にある方をいいます。

高年齢求職者給付金の支給日数

高年齢求職者給付金は「基本手当日額」という1日あたりの支給額を、次に定める支給日数分を一括で支給することになっています。

被保険者であった期間 1年未満 1年以上
高年齢求職者給付金の支給日数 30日分 50日分

基本手当日額に関しては計算方法が非常にわかりづらいので、別の記事に早見表がありますのでそちらを参考にしてください。

計算方法も含めてより詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。

雇用保険マルチジョブホルダー制度「注意点」

雇用保険マルチジョブホルダー制度の「注意点」は次のとおりになります。

  • 任意脱退することができない
  • 雇用保険に加入する事業所を変更することができない

マルチジョブホルダー制度を適用してマルチ高年齢被保険者となった場合、任意脱退することができませんのでご注意ください。

また適用要件を満たさなくなった場合を除き、雇用保険に加入する事業所を変更することができません。

まとめ:「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは?

今回の記事では雇用保険マルチジョブホルダー制度を解説しました。

2022年1月1日から施行されたのでまだ分からないという方も多いのではないでしょうか?

比較的失業のリスクが高い65歳以上の労働者を対象に、掛け持ちしている2つ以上の事業所の週の所定労働時間の合計が20時間以上の場合に雇用保険に加入できるようにした制度です。

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