福岡県の最低賃金はいくら?【2026年最新】社会保険労務士が公的資料をもとに徹底解説

福岡県内で従業員を雇用している事業主の方、あるいはパート・アルバイトとして働いている方にとって、「最低賃金」は毎年必ず確認しておきたい重要なテーマです。最低賃金は毎年秋に改定されるため、「今の時給は最低賃金を下回っていないか」「来年はどのくらい上がるのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、社会保険労務士の立場から、厚生労働省・福岡労働局・福岡県といった公的機関が公表している一次情報のみに基づき、福岡県の最低賃金について、現在の金額から制度の仕組み、罰則、そして2026年度(令和8年度)の見通しまでを解説します。特定の立場に偏ることなく、公平な視点で実務に役立つ情報をお届けします。

目次

1. 福岡県の最低賃金(地域別最低賃金)の現在額

福岡労働局の発表によれば、福岡県の地域別最低賃金は時間額1,057円です。福岡労働局長により令和7年9月5日に決定され、同年9月17日に官報公示、効力発生日は令和7年(2025年)11月16日となっています(福岡労働局「福岡県最低賃金の1時間1057円への引上げ決定~効力発生日は、令和7年11月16日~」)。

福岡県庁も同様に、地域別最低賃金と特定最低賃金の両方について案内しており、福岡県内の事業場の使用者は、正社員だけでなくパートタイマー・アルバイト・臨時雇用など、雇用形態や呼称にかかわらず、すべての労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払う義務があると明記しています。

なお、地域別最低賃金は都道府県ごとに毎年10月を目処に見直される可能性があり、特定最低賃金は毎年12月を目処に見直される可能性があるとされています(福岡県「最低賃金をチェックしましょう ~福岡県の最低賃金~」)2。事業主・労働者のいずれの立場であっても、年に一度は必ず最新情報を確認することが重要です。

2. そもそも最低賃金制度とは?法律上の根拠

最低賃金制度は、最低賃金法(昭和34年法律第137号)に基づく制度です。同法第1条は、その目的を次のように定めています。

第一条 この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

また、最低賃金額を決定する際の考慮要素については、同法第3条において「労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力」の3要素を考慮しなければならないと定められています3

さらに、最低賃金の履行を担保する規定として、同法第5条は次のように定めています。

第五条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

つまり、労使双方が合意のうえで最低賃金を下回る賃金を定めたとしても、その部分は法律上無効となり、自動的に最低賃金額での契約とみなされます。この点は福岡県庁のホームページでも同様に案内されており2、労使双方が正しく理解しておく必要がある重要なポイントです。

3. 地域別最低賃金と特定最低賃金の違い

福岡県内で働く場合、適用される最低賃金には大きく分けて2種類があります。福岡県庁の案内をもとに整理します2

3-1. 地域別最低賃金

都道府県ごとに定められる最低賃金で、年齢・雇用形態(正社員、契約社員、パート、アルバイトなど)にかかわらず、その都道府県で働くすべての労働者に適用されます。福岡県の地域別最低賃金が、前述の時間額1,057円です。

3-2. 特定最低賃金

特定の産業に従事する基幹的な労働者を対象に、地域別最低賃金よりも高い水準で定められる最低賃金です。ただし、18歳未満または65歳以上の人、雇い入れ後一定期間未満で技能習得中の人など、個別に定められた範囲の労働者には適用されず、その場合は地域別最低賃金が適用されます。

福岡労働局の案内によれば、福岡県では以下の産業について特定最低賃金が定められています(令和7年12月10日または令和8年2月1日効力発生分)。

  • 製鉄業
  • 電子部品・デバイス・電子回路等製造業
  • 輸送用機械器具製造業
  • 各種商品小売業(百貨店、総合スーパーなど):時間額1,065円
  • 自動車(新車)小売業:時間額1,131円

該当する産業分類は日本標準産業分類(令和5年7月告示、令和6年4月1日施行)に基づいて判定されます5。自分の勤務先がどの産業分類に該当するか分からない場合は、会社の人事労務担当者や福岡労働局、最寄りの労働基準監督署に確認することをおすすめします。

なお、地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される労働者に対しては、使用者は高い方の金額を支払わなければなりません2

4. 最低賃金の対象となる賃金・ならない賃金

最低賃金額と実際の賃金を比較する際、すべての賃金項目が対象となるわけではありません。最低賃金法第4条第3項では、最低賃金に算入しない賃金として、次のようなものを定めています3

  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金

福岡労働局の告知でも、「最低賃金には精皆勤手当、通勤手当、家族手当、時間外労働・休日労働等の割増賃金、賞与、臨時の賃金は算入されません」と明記されています。つまり、比較の対象となるのは基本給や、毎月固定的に支払われる諸手当(役職手当や業務手当など)が中心となります。給与明細の額面だけを見て判断せず、算入対象を正しく切り分けたうえで確認する必要があります。

5. 月給制・日給制の場合の確認方法

最低賃金は時間額で定められているため、月給制や日給制の場合は時間額に換算して比較する必要があります。福岡労働局の案内では、次のとおり計算方法が示されています。

  • 月給制の場合:月給を1か月平均の所定労働時間で除して、時間額に換算する
  • 日給制の場合:日給を1日の所定労働時間で除して、時間額に換算する

久留米市の案内でも同様に、最低賃金の対象となる賃金は「通常の労働時間、労働日に対応する賃金」に限られ、実際に支払われている賃金から精皆勤手当・通勤手当・家族手当・割増賃金・賞与・臨時の賃金を除外したものが比較対象になるとされています。

なお、派遣労働者については、派遣元ではなく派遣先の事業場に適用される最低賃金額が適用される点にも注意が必要です。自社が複数の都道府県に事業所を持つ場合は、各事業所所在地の地域別最低賃金を個別に確認する必要があります。

6. 最低賃金を下回った場合の罰則

最低賃金を下回る賃金しか支払わなかった場合、使用者には罰則が科される可能性があります。最低賃金法第4条第1項は使用者の義務を定めており、これに違反した場合(地域別最低賃金に係るもの)は、同法第40条により50万円以下の罰金に処せられる旨が定められています。

また、最低賃金法第5条2項により、最低賃金額に達しない部分の労働契約は無効となり、自動的に最低賃金額の定めをしたものとみなされるため、差額分については遡って支払う義務が生じ得ます。単に罰則の有無にとどまらず、労働者への未払賃金の精算義務が発生する点は、事業主にとって特に注意すべきポイントです。

7. 2026年度(令和8年度)の最低賃金引き上げの見通し

最低賃金は、毎年、中央最低賃金審議会が示す「目安」をもとに、各都道府県の地方最低賃金審議会で審議され、都道府県労働局長が正式に決定するという流れで改定されます。

厚生労働省の発表によれば、令和8年7月28日に開催された第75回中央最低賃金審議会において、令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安に関する答申が取りまとめられました。この答申では、各都道府県の経済実態に応じてA・B・Cの3ランクに分けたうえで、引き上げ額の目安が次のとおり示されています。

  • Aランク(6都府県):54円
  • Bランク(28道府県):56円
  • Cランク(13県):56円

この目安どおりに改定が行われた場合、全国加重平均は前年度から55円(4.9%)引き上げられ、時給1,176円になる見通しです。ただし、これはあくまで中央最低賃金審議会が示した「目安」であり、最終的な金額は今後、福岡地方最低賃金審議会における地域の賃金実態調査や審議を経たうえで、福岡労働局長により正式に決定・公示されます26。目安の金額がそのまま福岡県の最低賃金額として決定されるとは限らない点にご留意ください。

過去の推移を振り返ると、福岡県の最低賃金は令和6年度に51円引き上げられ、時間額992円に改定された経緯があります(福岡労働局「福岡県最低賃金の51円引上げを答申」、令和6年8月)。その後、令和7年度に時間額1,057円へと改定されており、近年、大幅な引き上げが続いている状況がうかがえます。

今後の正式な決定内容については、福岡労働局や厚生労働省の公式ページで随時公表されますので、事業主・労働者ともに秋以降、必ず最新情報を確認するようにしてください。

8. 中小企業・小規模事業者向けの支援策

最低賃金の引き上げは、特に中小企業や小規模事業者にとって、人件費の負担増につながる大きな課題です。福岡労働局は、賃金引上げを行う中小企業・小規模事業者に対する各種支援策を案内しています5。代表的なものとして、生産性向上に取り組みながら事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を引き上げる事業者を対象とした「業務改善助成金」があります。

助成金の対象要件や助成率、申請時期などの制度内容は年度によって変更される可能性があるため、利用を検討する場合は、厚生労働省または福岡労働局の最新の公式案内を必ず確認してください。

9. 社会保険労務士からのまとめ

最低賃金は、働くすべての方の生活の土台を支える重要な制度です。福岡県内で事業を営む使用者の方は、地域別最低賃金(現在は時間額1,057円)だけでなく、業種によっては特定最低賃金の適用も受ける可能性があるため、まずは自社の該当する最低賃金額を正確に把握することが第一歩となります。

そのうえで、

  • 現在の時給が改定後の最低賃金額を下回っていないか
  • 月給制・日給制の従業員について、所定労働時間で換算した時間額が最低賃金を下回っていないか
  • 複数の都道府県に事業所がある場合、各事業所所在地の最低賃金を個別に確認できているか

といった点を、毎年の改定時期(例年10月前後)に合わせて確認する体制を整えておくことをおすすめします。

最低賃金は労働者の生計費、地域の賃金水準、企業の賃金支払能力という3つの要素を総合的に考慮して決定される制度であり(最低賃金法第3条)、使用者・労働者いずれの立場であっても、正しい理解のもとで適切に運用していくことが求められます。自社の賃金制度が最低賃金に適合しているかご不安な場合や、賃金規程の見直しを検討されている場合は、最寄りの労働基準監督署や、社会保険労務士などの専門家に相談されることをおすすめします。


参考・引用一次情報

※本記事の内容は執筆時点(2026年8月)の公的機関発表情報に基づいています。最低賃金は毎年改定される可能性があるため、最新の金額については必ず厚生労働省・福岡労働局等の公式ページでご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。具体的な取扱いについては、最寄りの労働基準監督署または顧問社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

  1. 福岡労働局「福岡県最低賃金の1時間1057円への引上げ決定~効力発生日は、令和7年11月16日~」<br>https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/news_topics/houdou/_02954.html
  2. 福岡県「最低賃金をチェックしましょう ~福岡県の最低賃金~」<br>https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/kisochishiki-2-saiteichingin.html 2 3 4 5 6 7 8 9 10
  3. 最低賃金法(昭和34年法律第137号)e-Gov法令検索<br>https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000137 2 3 4 5 6 7
  4. 福岡労働局「福岡県特定最低賃金」関連ページ(jsite.mhlw.go.jp)<br>https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/jirei_toukei/chingin_kanairoudou/toukei/saitei_chingin/chingin09_22.html
  5. 福岡労働局「福岡県最低賃金改定のお知らせ」(令和7年11月16日発効分) 2 3 4 5 6 7 8
  6. 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」<br>https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74920.html 2 3 4
  7. 福岡労働局「福岡県最低賃金の51円引上げを答申」(令和6年8月9日)<br>https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/photoreport/240809.html
  8. 厚生労働省・都道府県労働局「最低賃金制度」特設サイト<br>https://saiteichingin.mhlw.go.jp/
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