企業型確定拠出年金「退職後の見落としがちな罠」とは?

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従業員の老後の資産形成のための福利厚生「企業型確定拠出年金」。

企業型確定拠出年金を実施している会社に勤めている期間は原則掛け金は会社が支払ってくれるのでメリットがありますが、退職後のことは正しく理解していない方も多くいらっしゃいます。

退職後にあるポイントを見落としてしまいますと、せっかく貯めた資産が減少してしまうリスクもあります。

税制優遇もあり老後の資産形成にかかせない確定拠出年金を正しく理解して有効活用していただく為に、今回の記事では企業型確定拠出年金の退職後に見落としがちな罠について解説していきます。

目次

企業型確定拠出年金「退職後の見落としがちな罠」

確定拠出年金_企業型_罠

企業型確定拠出年金の退職後の見落としがちな罠は「退職後6ヶ月放置しておくてと国民年金基金連合会へ自動移管される」というです。

通常は企業型確定拠出年金に加入していた会社を退職後、次の会社が企業型確定拠出年金が制度としてあれば引き続き企業型確定拠出年金を継続、制度としてなければ個人型確定拠出年金に加入して退職前の資産を個人型確定拠出年金へ移管するのが一般的です。

また次の会社が企業型確定拠出年金がなく、個人型確定拠出年金への移管せず6ヶ月経過すると、今までの資産が国民年金基金へ自動移管されます。

次の会社の
制度の有無
企業型確定拠出年金がある 企業型確定拠出年金がない
(個人型確定拠出年金へ移管)
企業型確定拠出年金がない
(6ヶ月放置)
退職前 企業型確定拠出年金 企業型確定拠出年金 企業型確定拠出年金
退職後 企業型確定拠出年金 個人型」確定拠出年金 国民年金基金へ自動移管

退職後6ヶ月放置しておくてと国民年金基金連合会へ自動移管される」とどのようなデメリットがあるのでしょうか。

「罠」と聞くと悪意があるように感じるかもしれませんが、デメリットを理解せず資産が減少してしまい、本来の目的である老後の資産の確保ができないケースがありますので、デメリットを正しく理解して適切な判断をおこない、ご自身の老後の資産の確保をおこなっていきましょう

企業型確定拠出年金「自動移管」のデメリット

企業型確定拠出年金が「国民年金基金連合会へ自動移管された場合のデメリット」は次のとおりです。

  1. 自動移管のときに「事務手数料がかかる
  2. その後資産の保管に「管理手数料がかかる
  3. 次の確定拠出年金(企業型・個人型)へ「移管するのに事務手数料がかかる
  4. 加入者期間にカウントされない」(60歳になってももらえないリスク)

それぞれについて細かく解説していきます。

自動移管のときに「事務手数料がかかる

自動移換の際の事務手数料は「4,348円(税込)」(2019年10月1日現在)となっています。

内訳としては次のとおりになります。

内訳 手数料(税込) 内容
自動移換に関する事務手数料 1,048円 国民年金基金連合会の事務手数料として徴収される手数料
特定運営管理機関へ移換手数料 3,300円 特定運営管理機関の手数料として徴収される手数料

自動移換の場合、資産は国民年金基金連合会に移換されます。

国民年金基金連合会は資産の記録を管理する等の業務を特定運営管理機関へ委託することができます。

「国民年金基金連合会」「特定運営管理機関」それぞれに手数料が取られるという事になります。

その後資産の保管に「管理手数料がかかる

毎月の管理手数料として「月額52円(税込)」がかかります。

内容としては次のとおりになります。

内訳 手数料(税込) 内容
特定運営管理機関手数料 月額52円 移換された月の4ヶ月後の月分から徴収されます。
※2022年4月に移管された場合2022年8月分から徴収

自動移管は本来は一時保管的な役割なので自動移管後3ヶ月間は無料で管理してくれるイメージです。

4ヶ月後の月からは毎月52円が徴収されます。

次の確定拠出年金(企業型・個人型)へ「移管するのに事務手数料がかかる

自動移管された後に次の確定拠出年金等へ資産を移管するときにかかる手数料は「1,100円(税込)」です。

内容としては次のとおりになります。

内訳 手数料(税込) 内容
特定運営管理機関からの
移換手数料
1,100円 特定運営管理機関から次の確定拠出年金へ移換する際に
特定運営管理機関に徴収される手数料

これはあくまで移管元である特定運営管理機関へ支払う手数料となりますので、移換先でさらに手数料がかかることがありますのでご注意ください。

加入者期間にカウントされない」(60歳になってももらえないリスク)

国民年金基金連合会に自動移管されたあとの期間はただ保管しているだけで掛け金を拠出していませんので「加入者期間にカウントされません」。

確定拠出年金の受給要件は次ようになっていて、60歳時点で確定拠出年金への加入者期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢が段階的に先延ばしになる制度になっています。

区分 受給開始年齢
60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳
加入者期間 10年以上 8年以上
10年未満
6年以上
8年未満
4年以上
6年未満
2年以上
4年未満
1ヶ月以上
2年未満

確定拠出年金は60歳で受給したい場合、10年以上の加入者期間を有している事が受給要件となります。

仮に5年勤めた会社で5年間企業型確定拠出年金に加入して、退職後60歳まで自動移管された国民年金基金連合会に保管していた場合、加入者期間は最初の5年間となりますので、60歳になっても老齢年金(もしくは一時金)を受給することができないという事になります。

60歳から受給を開始したいと計画されている方は確定拠出年金の加入者期間を10年以上満たしているかどうかを考えながら運用していきましょう。

企業型確定拠出年金「自動移管」のデメリットのまとめ

企業型確定拠出年金の自動移管時にかかる費用は次のとおりです。

内訳 手数料(税込) 内容
最初にかかる 自動移換に関する事務手数料 1,048円 国民年金基金連合会の事務手数料として徴収される手数料
特定運営管理機関へ移換手数料 3,300円 特定運営管理機関の手数料として徴収される手数料
毎月かかる 特定運営管理機関手数料 月額52円 移換された月の4ヶ月後の月分から徴収されます。
※2022年4月に移管された場合2022年8月分から徴収
最後にかかる 特定運営管理機関からの
移換手数料
1,100円 特定運営管理機関から次の確定拠出年金へ移換する際に
特定運営管理機関に徴収される手数料

次の図をご覧いただくと分かりますが、積立の途中で自動移管された方の約80%の資産額が25万円以下となっています。

移換資産額別の正規移換者、自動移換者の分布
出典:国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の 制度の概況

仮に30歳の資産額15万の方がそのまま60歳まで自動移管先である国民年金基金連合会に資産を保管しておくと、最初に4,348円、毎月52円(年間624円、30年間で18,720円)がかかりますので、60歳の時点の資産は135,628円となり、30歳の時の資産額と比較すると約10%も減少してしまいます。

これだと確定拠出年金の目的である「長期積立により老後の資産の確保と逆の結果」になってしまいますので、自動移管されないよう、「退職後6ヶ月以内もしくは自動移管後3ヶ月以内に個人型確定拠出年金へ移管して毎月少額でも無理のない範囲で積み立て」し、老後の資産の確保をしていきましょう。

個人型確定拠出年金で毎月積立ができない場合は「脱退一時金」も選択肢に

自動移管となりそのまま国民年金基金に資産を保管しておくと手数料が毎月かかり、資産が減少してしまう為、自動移管される前に個人型確定拠出年金に移管したけど、その後個人型確定拠出年金で毎月積立するのは負担という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような方は、一定の要件を満たした場合に資産を引き出す事ができる「脱退一時金」という制度もあります。

脱退一時金をもらう為の要件

次のように2種類あります。

  1. 「原則」企業型確定拠出年金に加入していた方が脱退一時金をもらうための要件
  2. 「特例」個人型確定拠出年金に移管したいけど国民年金保険料免除の対象となった事で確定拠出年金に加入できない為に脱退一時金をもらうための要件

原則の要件は1になりますが、障害者や低所得者など国民年金保険料の免除の対象となった場合に確定拠出年金への加入ができなくなります。そのような場合に手数料で資産が目減りしてしまうのを防ぐ為の制度が脱退一時金となります。

「原則」企業型確定拠出年金に加入していた人が脱退一時金をもらう要件

まずは原則の企業型確定拠出年金に加入していた人が脱退一時金をもらう要件は次の全てを満たす方になります。

  1. 企業型確定拠出金および個人型確定拠出金(iDeCo)の「加入者でも運用指図者でもない
  2. 資産額が1.5万円以下」であること
  3. 最後に「企業型確定拠出年金の資格を喪失」した日が属する月の翌月から起算して「6カ月を経過していない

自動移管が退職後6ヶ月経過してからになりますのでそれまでに脱退一時金の手続きを行う必要があり、自動移管後は退職後6ヶ月経過してしまっているので新たに個人型確定拠出年金の加入者や運用指図者にならないと退一時金をもらう事ができませんのでご注意ください。

また要件の資産額が1.5万円以下となっていますのでそれ以上資産がある方は要件を満たしていませんので個人型確定拠出年金に加入をして運用した方が、資産の目減りを防ぐ事ができるようになります。

「特例」国民年金保険料を免除されている人が脱退一時金をもらう要件

確定拠出年金は「障害者や低所得者など国民年金保険料を免除されている人」は加入する事ができません。

3階建ての1階部分である国民年金の保険料を支払えない方が、3階部分の掛け金を支払うというのは難しい事が理由となります。

国民年金保険料を免除されている人が脱退一時金をもらう要件は次の全てをみたす方になります。

  1. 国民年金保険料を免除」されている(または学生納付特例、納付猶予)
  2. 掛金の「通算拠出期間が1ヵ月以上5年以下」または「資産額が25万円以下
  3. 最後に企業型確定拠出年金または個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者の資格を喪失した日から「2年を経過していない
  4. 企業型確定拠出年金から「脱退一時金の支給を受けていない
  5. 確定拠出年金の「障害給付金の受給権者でない

脱退一時金に関しては別の記事でも解説していますのでそちらも参考にしてみてください。

合わせて読みたい:確定拠出年金「脱退一時金」をもらう裏ワザとは?

企業型確定拠出年金「退職後6ヶ月間が大切」

企業型確定拠出年金の退職後に見落としがちな「罠」について解説してきましたが、退職後6ヶ月間が非常に重要です。

  • 退職後6ヶ月以内であれば脱退一時金も要件を満たせば選択できる
  • 退職後6ヶ月経過すれば自動移管されて「最初に約4,000円」「最後に約1,000円」が確定する
企業型確定拠出年金がある 企業型確定拠出年金がない
資産額 資産が15,000円以下 資産が15,000円を超える
6ヶ月以内 「企業型確定拠出年金」 「脱退一時金」
「個人型確定拠出年金」
どちらかを選択
「個人型確定拠出年金」
6ヶ月経過後 国民年金基金に自動移管
「最初に約4,000円」「最後に約1,000円」が確定

退職後6ヶ月以内に、資産額に応じて「脱退一時金」「個人型確定拠出年金」どちらかを選択して、自動移管されないようにしていきましょう。

まとめ:企業型確定拠出年金「退職後の見落としがちな罠」

今回の記事では企業型確定拠出年金の退職後の見落としがちな罠について解説しました。

退職後6ヶ月以内に次の転職先の企業型確定拠出年金か、個人型確定拠出年金へ移管しないと国民年金基金連合会へ自動移管されてしまいます。

自動移管されたまま放置すると、管理手数料が毎月かかってしまいますので30年間そのまま放置すると約1万3,000円資産が減少してしまいます。

また自動移管してしまうと国民年金の保険料免除者にならない限り脱退一時金ももらう事ができませんので、退職後6ヶ月以内に個人型確定拠出年金へ移管するようにして改めて老後の資産の確保の為に少額でもいいので積み立てていきましょう。

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