就活ハラスメントの相談窓口を社会保険労務士が解説|今すぐ頼れる公的機関と対処法

就職活動やインターンシップの最中に、面接官や採用担当者から不快な言動を受けた——。そうした「就活ハラスメント」に関する相談は、近年、厚生労働省の調査でも増加傾向が確認されています。

本記事では、社会保険労務士という中立的な立場から、就活ハラスメントの定義や法的根拠、そして「どこに相談すればよいのか」という相談窓口について、法令・行政通達・厚生労働省の公表データなど、確認可能な一次情報にもとづいて整理します。個人の体験談や推測ではなく、根拠のある情報のみを取り上げていますので、就活生・転職活動中の方はもちろん、企業の人事・採用担当の方にも参考にしていただける内容です。

目次

1. 就活ハラスメントとは何か

1-1 厚生労働省による整理

厚生労働省は、就活ハラスメントについて、採用選考やインターンシップの場において、企業やその採用担当者等が優越的な立場を利用し、就職活動中・インターンシップ中の学生等に対して行うセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを指すものとして周知しています。都道府県労働局が作成した資料でも、「就職活動中やインターンシップの学生等に対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントのことをいい、立場の弱い学生等の尊厳や人格を不当に傷つける等の人権に関わる許されない行為」と説明されています(愛媛労働局ほか都道府県労働局公表資料、令和6年11月作成)[1]。

就職活動中は、学生等と企業との間に「採用する・される」という明確な力関係の不均衡が生じます。この不均衡を背景に行われる不適切な言動が、就活ハラスメントとして問題視されているのです。

1-2 セクハラ型とパワハラ型

就活ハラスメントは、大きく次の2類型に整理できます。

  • セクハラ型:性的な冗談やからかい、食事・デートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触、オンライン面接での「服装を見せてほしい」といった要求、交際や性的関係を採用の見返りとして求める行為など
  • パワハラ型:人格を否定するような暴言、内定と引き換えにした就職活動の終了強要(いわゆるオワハラ)、長時間の拘束、高圧的な態度での威圧など

都道府県労働局のリーフレットでは、実際の相談事例として「女子学生に対し、採用の見返りに不適切な関係を迫り、断ると不採用にした」「インターンシップ中の学生に対し人格を否定する暴言を吐いた」といった事例が紹介されています[1]。

2. データで見る就活ハラスメントの実態

2-1 厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」

厚生労働省は、令和2年度・令和5年度に「職場のハラスメントに関する実態調査」を委託事業として実施し、報告書を公表しています[2]。この調査は、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、介護休業等ハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)に加え、就職活動中またはインターンシップ中の学生に対するセクハラ(就活等セクハラ)についても調査対象としています[3]。

令和5年度報告書によれば、就活等セクハラを経験した学生の割合は、令和2年度調査時点のおよそ4人に1人から、令和5年度調査ではおよそ3人に1人へと増加していることが明らかになっています。行為者としては「インターンシップで知り合った従業員」が多く、内容としては「性的な冗談やからかい」が最も多いという結果も示されています[4]。

また、企業側の相談対応状況を見ると、過去3年間に従業員等からハラスメントの相談を受けた企業のうち、就活等セクハラに関する相談があったと回答した企業は0.7%にとどまっており、被害の実態と企業への相談件数との間に開きがある可能性もうかがえます[4]。

2-2 社会問題化の背景

厚生労働省の委託事業報告書では、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)とあわせて、就活等セクハラが「社会問題化している状況」にあると位置づけられており、これを踏まえて「就活ハラスメント防止対策企業事例集」の作成や周知広報が行われてきました[5]。こうした流れの延長線上に、後述する2025年の法改正があります。

3. 就活ハラスメントに関する法的根拠

就活ハラスメントは、被害者が「労働者」ではなく「求職者」であるという特殊性から、これまで法律上の明確な措置義務の対象とはされていませんでした。しかし、関連する法律・指針は複数存在し、2025年の法改正によって状況が大きく変わります。順を追って整理します。

3-1 男女雇用機会均等法第11条(職場のセクハラ防止措置)

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第11条第1項は、事業主に対し、職場における性的な言動により労働者の就業環境が害されることのないよう、相談体制の整備その他雇用管理上必要な措置を講じることを義務付けています[6]。この措置の具体的内容は、「事業主が職場において行われる性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)で定められています[7]。

ただし、この条文が対象とする「労働者」には、これまで就職活動中の学生等(求職者)は含まれていませんでした。

3-2 労働施策総合推進法第30条の2(職場のパワハラ防止措置)

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第30条の2第1項は、事業主に対し、職場におけるパワーハラスメントについて労働者からの相談に応じ、適切に対応するための体制整備等の雇用管理上必要な措置を講じることを義務付けています[8]。この規定は2020年6月に大企業へ、2022年4月に中小企業を含む全事業主へ適用されました[9]。こちらも対象は「雇用する労働者」であり、求職者は直接の対象とはされていません。

3-3 2025年法改正と2026年10月1日施行の義務化

こうした「求職者は対象外」という状況を変えるのが、2025年(令和7年)の法改正です。

2025年6月11日、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)が公布されました[10][11]。この改正法により、男女雇用機会均等法が改正され、これまで努力義務にとどまっていた「求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置」が、事業主の法的義務へと格上げされます。施行日は公布の日から1年6か月を超えない範囲内で政令が定める日とされ、2026年(令和8年)10月1日が予定されています[10][11][12]。

厚生労働省は、この改正にあわせて「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(求職者等セクハラ防止指針)の案を公表し、2025年12月11日から意見公募(パブリックコメント)を実施しています[13]。この指針案では、事業主が講ずべき措置として、方針の明確化・周知啓発、相談窓口の整備、事後の迅速かつ適切な対応などが盛り込まれる見込みです。

なお、同じく令和7年法律第63号により、労働施策総合推進法にはカスタマーハラスメント防止措置の義務化規定も新設されており、こちらも2026年10月1日の施行が予定されています(政府広報オンライン記事参照)[11]。一方、就活ハラスメントのうちパワハラ型(いわゆるオワハラ等)については、今回の法改正では直接の義務化の対象とはなっていない点にも留意が必要です[14]。

4. こんな言動は就活ハラスメントに該当する可能性があります

都道府県労働局が公表している事例集や相談窓口の案内資料では、就活ハラスメントに該当しうる言動として、次のようなものが挙げられています[1]。

  • 採用の見返りとして不適切な関係を求め、拒否したことを理由に不採用とする
  • インターンシップ中の学生を食事やデートにしつこく誘う
  • インターンシップ中の学生に対し、人格を否定するような暴言を吐く
  • 面接で恋人の有無など業務に関係のない事項を質問する、オンライン面接で不必要に容姿・服装を見せるよう求める

このような言動に心当たりがある場合は、「自分の受け止め方が過敏なのではないか」と一人で抱え込まず、次章で紹介する相談窓口の利用を検討することをおすすめします。

5. 就活ハラスメントに遭ったときの相談窓口

就活ハラスメントについては、複数の公的な相談窓口が用意されています。それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った窓口を選びましょう。

5-1 厚生労働省委託事業「ハラスメント悩み相談室」

厚生労働省の委託事業として運営されている「ハラスメント悩み相談室」では、就職活動中等のハラスメントを含め、電話・メール・SNS(LINE)による相談を受け付けています[15][16]。

  • 専用サイト:https://harasu-soudan.mhlw.go.jp/
  • 電話相談:0120-714-864(受付時間:月〜金 17:00〜22:00、土・日 10:00〜17:00、祝日・年末年始を除く)
  • メール相談:mail@harasu-soudan.mhlw.go.jp(24時間受付、72時間以内に返信予定)
  • SNS(LINE等)相談:24時間受付、48時間以内に返信予定

匿名での相談も可能で、相談は無料です。専門の相談員が対応し、必要に応じて関係機関の案内も行われます[15]。「まずは誰かに話を聞いてほしい」という段階でも利用しやすい窓口です。

5-2 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)

より公的・行政的な対応を求める場合は、各都道府県労働局に設置されている「雇用環境・均等部(室)」への相談が適しています。就活生本人だけでなく、大学のキャリアセンター担当者と一緒に相談することも可能とされています[1]。

雇用環境・均等部(室)では、相談内容に応じて、就職活動中の学生等へのハラスメント防止に関する事業主への助言や、就活セクハラ等のトラブルに関する解決援助等の対応が行われます[1]。受付時間は平日8時30分から17時15分までとしている労働局が多く、土日祝日・年末年始は休業となります(例:島根労働局の案内)[17]。管轄の労働局・連絡先は、厚生労働省の該当ページで確認できます。

5-3 総合労働相談コーナー

パワハラ型の就活ハラスメントや、労働問題全般について幅広く相談したい場合は、各労働局・労働基準監督署内に設置されている「総合労働相談コーナー」も利用できます。これは個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)等を根拠に設置されている総合的な相談窓口で、面談または電話で、専門の相談員が無料で対応します[17][18]。

5-4 大学のキャリアセンター・就職支援窓口

在学中の方は、まず大学のキャリアセンターや就職支援窓口に相談するのも有効な選択肢です。大学によっては、就活ハラスメントに関する専用の相談ルートを設けている場合もあります。また、前述のとおり、都道府県労働局への相談にキャリアセンター職員の同席を依頼することも可能です[1]。

5-5 弁護士・法テラス

不採用の撤回や損害賠償など、法的な権利救済を具体的に検討したい場合は、弁護士への相談が選択肢となります。経済的な理由で弁護士費用の負担が難しい場合は、法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談等の利用も検討できます。なお、法テラスの利用には収入等に関する一定の要件があるため、詳細は法テラスの案内をご確認ください。

6. 相談する前に準備しておきたいこと

相談窓口へ連絡する際は、次のような点を整理しておくと、その後の対応がスムーズになります。

  • いつ、どこで、誰から、どのような言動を受けたか(日時・場所・相手の氏名や役職)
  • メールやチャット、応募先企業とのやり取りの記録が残っている場合は保存しておく
  • 面接や説明会でのやり取りについて、覚えている範囲でメモを残しておく

これらは、相談員や労働局が事実関係を確認する際の参考情報になります。無理に証拠集めを優先する必要はありませんが、覚えている間に記録しておくことは、後々の相談をスムーズにする一助となります。

7. 企業に求められる対応(社労士の視点から)

企業の採用担当者や人事部門にとっても、就活ハラスメントへの対応は避けて通れないテーマになっています。厚生労働省の資料では、企業が講じている取組例として、求職者等が利用できる相談窓口を採用情報のトップページやマイページに掲載する、リクルーターの行動指針・マニュアルを策定する、面接で聞いてよい範囲・NGな質問を明確にする、といった事例が紹介されています[5][19]。

2026年10月1日の求職者等セクハラ防止措置の義務化を見据え、企業としては、①方針の明確化と周知・啓発、②相談(苦情を含む)に対応する体制の整備、③相談があった場合の事実確認と迅速・適切な対応、という職場のセクハラ・パワハラ対策と共通する枠組みに沿って、社内規程の見直しや相談窓口の整備を進めておくことが望まれます[9][12]。措置を怠った場合、厚生労働大臣による助言・指導・勧告、勧告に従わない場合の企業名公表といった行政上の措置が講じられる可能性がある点にも留意が必要です(均等法・労働施策総合推進法における一般的な履行確保の仕組み)。

まとめ

就活ハラスメントは、厚生労働省の実態調査でも増加傾向が確認されている社会的な課題です。これまで法律上明確な位置づけがなかった「求職者に対するセクハラ」についても、2025年の法改正(令和7年法律第63号)により、2026年10月1日から事業主の防止措置義務の対象となる見込みです。

もし就職活動やインターンシップの中で不快な言動を受けた場合は、一人で抱え込まず、厚生労働省の「ハラスメント悩み相談室」や、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、大学のキャリアセンターなど、複数ある公的な相談窓口を活用してください。それぞれの窓口には無料で相談できる体制が整っています。

本記事は、社会保険労務士として、法令・行政資料等の一次情報にもとづき、就活ハラスメントに関する現状と相談先を客観的に整理したものです。個別の状況によって適切な対応は異なりますので、具体的なトラブルについては、上記の相談窓口や顧問社会保険労務士等の専門家に直接ご相談されることをおすすめします。


参考文献・出典一覧

[1] 都道府県労働局「これって『就活ハラスメント』?ハラスメントに関するお悩みは都道府県労働局にぜひご相談を」(令和6年11月作成) https://jsite.mhlw.go.jp/ehime-roudoukyoku/content/contents/002438379.pdf

[2] 厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000165756.html

[3] 令和5年度厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(PwCコンサルティング合同会社、令和6年3月) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001541299.pdf

[4] 「令和5年度職場のハラスメントに関する実態報告書」の紹介記事(就活等セクハラの経験割合等) https://www.dsn.co.jp/column/vol140/

[5] 厚生労働省「就活ハラスメント防止対策研修」資料 https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/assets/pdf/kensyu_2026/4_syukatsu_hara.pdf

[6] 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第11条

[7] 事業主が職場において行われる性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号) https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/kigyou01b.pdf

[8] 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第30条の2

[9] 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号) https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf

[10] 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)の施行に関する厚生労働省パブリックコメント資料 https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000303469

[11] 政府広報オンライン「労働施策総合推進法 一部改正でハラスメント対策強化」 https://www.gov-online.go.jp/article/202510/entry-9434.html

[12] 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等一部改正法のポイント」 https://www.mhlw.go.jp/content/001502758.pdf

[13] 求職者等セクハラ・カスタマーハラスメントに関する指針案パブリックコメント(令和7年12月11日〜)に関する紹介記事 https://www.psrn.jp/topics/detail.php?id=39117

[14] 社会保険労務士法人による解説記事「就活ハラスメント防止措置の法制化と企業の対応実務」(パワハラは今回改正の対象外である旨の解説を含む) https://www.human-tech.co.jp/column/2637/

[15] 厚生労働省委託事業「ハラスメント悩み相談室」案内資料 https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/content/contents/001310149.pdf

[16] ハラスメント悩み相談室(厚生労働省委託事業)公式サイト https://harasu-soudan.mhlw.go.jp/

[17] 島根労働局「ハラスメント相談窓口」案内資料 https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/content/contents/001767146.pdf

[18] 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)

[19] 厚生労働省「就活ハラスメント防止対策 企業事例集」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001060585.pdf


本記事は、社会保険労務士としての専門的知見にもとづき、公的機関が公表する法令・指針・統計データ等の一次情報を根拠として作成しています。掲載内容は作成時点の情報であり、法令の施行状況(特に2026年10月1日施行予定の求職者等セクハラ防止措置に関する政省令・指針の内容)は今後変更される可能性があります。最新情報は、必ず厚生労働省等の公式サイトでご確認ください。

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