就活ハラスメントとは?種類・具体例・企業がとるべき対策を社会保険労務士が解説

目次

はじめに

「就活ハラスメント」という言葉を耳にする機会が増えています。就職活動やインターンシップの場面で、企業の採用担当者や社員から学生・求職者が不適切な言動を受ける問題は、以前から指摘されてきました。近年は法制度の整備も進み、2026年(令和8年)10月1日からは、求職者等に対するセクシュアルハラスメントについて事業主に防止措置が義務付けられることになりました。

本記事では、社会保険労務士の立場から、就活ハラスメントにはどのような種類があるのか、どのような法的根拠に基づいて問題とされているのか、そして企業と求職者それぞれがとるべき対応について、厚生労働省が公表している一次情報(法令・指針・調査報告書等)に基づいて整理します。特定の企業や個人を非難する目的ではなく、公正な情報提供を通じて、就職活動に関わるすべての方にとって安心できる採用環境づくりの一助となることを目指します。

就活ハラスメントとは何か

就活ハラスメントとは、一般に、就職活動中の学生やインターンシップ参加者、転職活動中の求職者などに対して、企業の採用担当者、面接官、OB・OG、社員などが、その優越的な立場を利用して行う不適切な言動全般を指す言葉です。法令上の正式な用語ではありませんが、厚生労働省と文部科学省は2022年3月、就職活動中の学生等に対するハラスメント防止対策を強化する方針を示しており、行政としても看過できない問題として位置づけています。

就活ハラスメントは、その言動の性質によって大きく「セクシュアルハラスメント型」と「パワーハラスメント型」に分けて整理することができます。さらに、就職活動特有の問題として「オワハラ(就活終われハラスメント)」や、公正な採用選考に反する「不適切な質問・個人情報の収集」も、広い意味での就活ハラスメントに含まれると考えられます。以下、それぞれの類型について、根拠となる法令や指針とともに解説します。

就活ハラスメントの種類①:求職者等に対するセクシュアルハラスメント

定義と法的根拠

2025年(令和7年)6月11日に公布された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)により、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「求職者等セクハラ」)の防止措置が、2026年(令和8年)10月1日から事業主の義務となります。これに伴い、2026年2月26日には「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号)が公布されました。

厚生労働省のポータルサイト「あかるい職場応援団」では、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを次のように定義しています。

求職者等によるその求職活動等において行われる当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により当該求職者等の求職活動等が阻害されることをいいます。

ここでいう「求職者等」には、企業の求人に応募する求職者本人だけでなく、事業主が実施する採用に資する活動(就職説明会やインターンシップなど)に参加する者、教育実習・看護実習などの実習を受ける者も含まれます。また「求職活動等」には、企業の採用面接への参加、就職説明会への参加、事業主が雇用する労働者への訪問(いわゆるOB・OG訪問)、インターンシップへの参加などが該当し、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも対象に含まれる点が特徴です。

「性的な言動」の具体的内容

指針では「性的な言動」を、性的な内容の発言と性的な行動に分けて説明しています。性的な内容の発言の例としては、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布することなどが挙げられます。性的な行動の例としては、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触れること、わいせつな図画を配布することなどが挙げられています。

あかるい職場応援団が示す具体例としては、次のようなケースが紹介されています。

  • インターンシップ中に、社員が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行い、求職者等が苦痛を感じてインターンシップ中の活動に支障が出ているケース
  • 面接中、面接官を務める社員から性的な事実に関する質問を受け、求職者が苦痛を感じて求職活動の意欲が低下しているケース
  • OB・OG訪問の際に、OB・OGから性的な関係を求められ、求職者等が苦痛を感じて求職活動等の意欲が低下しているケース
  • インターンシップ中に社員が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、求職者等が苦痛を感じて求職活動等の意欲が低下しているケース

なぜ制度化が急がれたのか―実態調査の数字

このような制度整備の背景には、深刻な実態があります。厚生労働省の令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によれば、2020年度からの3年間に大学等を卒業した人のうち、就職活動中にセクシュアルハラスメントを経験した学生は31.9%、インターンシップ中に経験した学生は30.1%にのぼるとされています。おおむね3人に1人が何らかの被害を経験しているという結果は、就職活動という場が、労働者以上に「立場上、拒否しづらい」構造的なリスクを抱えていることを示しています。

なお、これまで男女雇用機会均等法に基づくセクシュアルハラスメント防止措置の対象は主に「労働者」とされてきましたが、上記の法改正により、2026年10月1日以降は「求職者等」にも対象が拡大される点が、実務上の大きな変更点です。

就活ハラスメントの種類②:パワーハラスメント型の言動

職場のパワーハラスメントの定義との関係

パワーハラスメントについては、労働施策総合推進法に基づく指針において、職場におけるパワーハラスメントを次の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であること
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
  3. 労働者の就業環境が害されるものであること

現行のパワハラ防止措置義務は「労働者」を対象とするものですが、就職活動中の学生やインターンシップ参加者に対して、面接官や社員が優越的な立場を利用して行う威圧的な言動、人格を否定するような発言なども、その性質はパワーハラスメントの典型的な類型と共通しており、あかるい職場応援団の啓発コンテンツにおいても「就活ハラスメント」はセクハラとパワハラの両方の側面を持つ問題として紹介されています。

パワーハラスメントの6つの類型

厚生労働省が示す職場のパワーハラスメントの代表的な類型は、以下の6つです。これらは限定列挙ではありませんが、就職活動の場面でも起こりうる言動を考えるうえで参考になります。

身体的な攻撃 蹴ったり、殴ったりするなど、体に危害を加える行為や、相手に物を投げつけるような行為です。

精神的な攻撃 脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など、精神的な攻撃を加える行為です。人格を否定するような言動には、相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動も含まれるとされています。就活の場面では、面接で人格や容姿を執拗に否定するような発言がこれに近い性質を持つといえます。

人間関係からの切り離し 隔離や仲間外れ、無視など、個人を疎外する行為です。

過大な要求 業務上明らかに不要なことや、遂行不可能な業務を押し付ける行為です。インターンシップにおいて、学生の経験・能力を大きく超える課題を課し、達成できないことを厳しく叱責するような行為が該当し得ます。

過小な要求 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えなかったりする行為です。

個の侵害 私的なことに過度に立ち入る行為です。上司や面接官が、本人の了解を得ずに機微な個人情報を他者に暴露するようなケースがこれにあたります。

これらの類型は、あくまで職場における労働者を念頭に置いたものですが、就職活動中の学生等に対して同様の言動が行われた場合、その悪質性・不適切性は労働者に対するものと変わらないという理解のもと、各種啓発資料でも共通の視点として整理されています。

就活ハラスメントの種類③:不適切な質問・個人情報の収集(就職差別につながる言動)

公正な採用選考の基本的な考え方

就活ハラスメントの中には、セクハラやパワハラのように直接的な威圧・性的言動を伴わなくても、応募者の適性・能力とは関係のない事項を質問し、それによって採否を左右することで、実質的に応募者の就職の機会を不当に狭める問題があります。厚生労働省は、応募者の基本的人権を尊重した公正な採用選考を行うよう、事業主に協力を求めています。

厚生労働省が示す「公正な採用選考の基本」では、採用選考は次の2点を基本的な考え方として実施することが大切だとされています。

  • 応募者の基本的人権を尊重すること
  • 応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと

そのうえで、次のような事項を応募用紙に記載させたり、面接で尋ねたりすることは、就職差別につながるおそれがあるとして注意喚起がなされています。

本人に責任のない事項の把握 本籍・出生地に関すること、家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)、住宅状況に関すること、生活環境・家庭環境などに関することです。

本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握 宗教に関すること、支持政党に関すること、人生観・生活信条などに関すること、尊敬する人物に関すること、思想に関すること、労働組合や学生運動などの社会運動に関すること、購読新聞・雑誌・愛読書などに関することです。

不適切な採用選考の方法 身元調査などの実施、本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用、合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施などです。

職業安定法上の根拠

これらの取扱いは、単なる企業倫理上の配慮にとどまらず、法令上の根拠を持っています。職業安定法第5条の5では、労働者の募集を行う者等は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、保管し、使用しなければならないと規定されています。そして、この規定に基づく指針(平成11年労働省告示第141号)により、人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項や、思想・信条に関する事項などは、原則として収集してはならない個人情報とされています。

つまり、面接やエントリーシートで家族構成や本籍地、支持政党などを尋ねる行為は、単に「マナー違反」というレベルの話ではなく、職業安定法に基づく指針に抵触するおそれがある行為だということです。採用担当者・面接官がこの点を正しく理解しておくことは、就活ハラスメントの防止において極めて重要です。

就活ハラスメントの種類④:オワハラ(就活終われハラスメント)

就職活動の終盤で問題になりやすいのが、いわゆる「オワハラ」です。オワハラとは、内定または内々定を出すことと引き換えに、学生の意思に反して他の企業への就職活動を終了するよう強要する行為を指します。

厚生労働省は、青少年の雇用の促進等に関する法律に基づく「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」の中で、次のように定めています。

採用内定又は採用内々定を行うことと引替えに、他の事業主に対する就職活動を取りやめるよう強要すること等青少年の職業選択の自由を妨げる行為又は青少年の意思に反して就職活動の終了を強要する行為については、青少年に対する公平かつ公正な就職機会の提供の観点から行わないこと。

これは日本国憲法が保障する職業選択の自由という基本的人権に関わる問題であり、行政としても看過できない行為として明確に位置づけられています。オワハラの具体的な手口としては、内定と引き換えに他社への就職活動の終了を迫る、内定者研修などの予定を頻繁に入れて他社の選考に参加しにくくする、内定辞退の申し出に対して強い引き止めや威圧的な対応を行うといったケースが指摘されています。

なお、採用内定は法的には労働契約の締結にあたると解されており、内定者が内定を辞退すること自体は、民法上の退職の自由と同様に、原則として自由に行えるものであることも押さえておく必要があります。

就活ハラスメントが企業にもたらすリスク

社会保険労務士の立場から強調しておきたいのは、就活ハラスメントは学生・求職者個人の問題にとどまらず、企業経営そのものに影響を及ぼすリスクであるという点です。

第一に、2026年10月1日の法改正施行により、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の法的義務となります。措置義務を怠った場合、行政指導や勧告の対象となり得るほか、勧告に従わない場合には企業名の公表といった対応も制度上想定されています。

第二に、就活ハラスメントの発生は、採用活動そのものの機会損失につながります。SNSなどを通じて情報が拡散しやすい現代においては、ハラスメントの発生が企業の採用ブランドやレピュテーションに直接的な打撃を与えることも少なくありません。

第三に、内定辞退やオワハラに関するトラブルが法的紛争に発展した場合、損害賠償請求などのリスクも否定できません。

企業がとるべき防止対策

厚生労働省の指針や「あかるい職場応援団」の啓発コンテンツを踏まえると、企業が講じるべき対策の骨子は概ね以下のように整理できます。

方針の明確化と周知 就活ハラスメントを含むあらゆるハラスメントを禁止する方針を明確にし、全従業員、特に採用担当者・面接官・リクルーターに周知することが基本です。就業規則や懲戒規定に、求職者等へのハラスメント行為が懲戒処分の対象となる旨を明記することも有効な対応です。

相談体制の整備 学生や求職者からの相談に対応できる窓口を整備し、その存在を採用活動のプロセスの中で明確に伝えることが求められます。

採用担当者向けの研修 面接官やOB・OG訪問の受け入れ担当者を含め、採用に関わる従業員に対して、何がハラスメントに該当するかについての研修を実施することが重要です。厚生労働省の「あかるい職場応援団」では、就活ハラスメント対策研修用の資料や動画コンテンツも公開されています。

面接・接触時の運用ルールの整備 学生と接する際は採用担当者を複数名とする、オンライン面接であってもプライベートな空間への過度な踏み込みを避けるなど、具体的な運用ルールを設けることも効果的とされています。

公正な採用選考の徹底 面接や応募書類で、本籍・家族構成・思想信条など、適性・能力に関係のない事項を尋ねないよう、採用選考のプロセスそのものを点検することも欠かせません。

求職者・学生の皆さんへ

もし就職活動中にハラスメントと思われる言動を受けた場合、一人で抱え込まず、外部の相談窓口を利用することも選択肢の一つです。厚生労働省の「あかるい職場応援団」サイトでは、ハラスメントに関する相談窓口の案内が掲載されているほか、都道府県労働局や大学のキャリアセンターなどに相談することも可能です。

また、内定辞退そのものは法的に認められた権利であり、オワハラのような強要を受けたとしても、その場ですぐに結論を出す必要はありません。「持ち帰って検討する」という対応をとること自体は、何ら問題のある行為ではないことも知っておいていただきたいポイントです。

まとめ

就活ハラスメントには、求職者等に対するセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント型の言動、公正な採用選考に反する不適切な質問・個人情報の収集、そしてオワハラ(就活終われハラスメント)など、複数の類型があります。それぞれについて、男女雇用機会均等法・労働施策総合推進法・職業安定法・青少年雇用促進法といった法令や、それに基づく指針が存在し、行政としての取り組みも年々強化されています。特に2026年10月1日からは、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の法的義務となる点は、採用活動に関わるすべての企業にとって重要な変更点です。

社会保険労務士は、こうした法改正への対応や就業規則の整備、ハラスメント防止研修の実施支援などを通じて、企業と求職者の双方にとって公正で安心できる採用環境づくりを支援する専門家です。就活ハラスメントへの対応にお悩みの企業ご担当者様は、早めに顧問社会保険労務士等の専門家へご相談されることをおすすめします。


参考文献・引用元(一次情報)

本記事は、以下の厚生労働省等の一次情報に基づいて作成しています。制度の詳細や最新情報については、必ず各リンク先の原典をご確認ください。

※本記事は2026年8月時点で公表されている一次情報に基づき作成しています。法令・指針は改正される場合がありますので、最新の内容は厚生労働省等の公式サイトでご確認ください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。具体的な対応については、顧問社会保険労務士や弁護士等の専門家にご相談ください。

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