「傷病手当金をもらって退職」する「継続給付」の支給要件を解説|支給期間・支給額など

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社会保険に加入している方が、業務外に傷病によって働く事が出来ない(労務不能)場合、健康保険法による傷病手当金が支給されます。

そんな健康保険法の傷病手当金は、支給開始した日から起算して1年6ヶ月支給されますが、この1年6ヶ月というのは退職した後ももらえる場合がある事をご存じでしょうか。

今回の記事ではそんな健康保険法の傷病手当金をもらって退職後も傷病手当金の継続給付を受け取る為の支給要件について解説します。

支給期間である「支給開始した日から起算して1年6ヶ月」も、「支給開始した日から通算して1年6ヶ月」へ法改正となり令和4年4月1日から施行開始されますので是非確認して下さい。

目次

健康保険に1年間加入していれば退職後も傷病手当金を継続給付する事が出来ます。

退職後も健康保険法の傷病手当金を受け取る事を、「傷病手当金の継続給付」と呼び、一定の要件を満たすと退職後も継続給付をすることができます

傷病手当金の継続給付の支給要件

傷病手当金をもらって退職する為の、傷病手当金の継続給付の支給要件はこちらです。

  1. 被保険者の資格を喪失した日の前日まで「引き続き1年以上被保険者であった事
  2. 被保険者の資格を喪失した際に「傷病手当金の支給を受けている
  3. 同一の傷病の療養の為「退職後も労務不能状態が継続している事

喪失した日というのは退職日ではないので、より詳しく解説していきましょう。

①被保険者の資格を喪失した日の前日まで、引き続き1年以上被保険者であった事

「喪失した日の前日」「引き続き1年以上被保険者」という部分を特に解説していきます。

健康保険法において、被保険者資格の喪失した日というのは、退職した日の翌日となっています。

退職した日も働いていたので、その日は被保険者という事です。

つまり喪失した日は、退職した日の翌日なので、「喪失した日の前日」というのは、「退職した日」という事です。

次に「引き続き1年以上被保険者」の被保険者というのは、健康保険の被保険者であればよく、退職する会社で1年間働いていないといけないわけではありません。

また「引き続き1年以上被保険者」の引き続きというのは、被保険者期間が12ヶ月以上継続している必要があります。途中で1ヶ月でも空白の期間があると引き続きに該当しませんので注意してください。

つまり、転職していても大丈夫ですが、1ヶ月でも間が空いていると傷病手当金の退職後の継続給付をもらう事は出来ないという事ですね。

少し細かい話になりますが、1年以上の被保険者期間に含まれない期間として「日雇特例被保険者期間」「任意継続被保険者期間」「共済組合の組合員」である期間は含まれず、あくまで一般の被保険者期間のみが対象となります。

②被保険者の資格を喪失した際に、傷病手当金の支給を受けている事

「傷病手当金の支給を受けている事」という部分も注意が必要です。

傷病手当金の支給要件は以下の通りです。

傷病手当金の支給要件

  1. 療養の為である事
  2. 労務に服する事が出来ない
  3. 労務不能となった日から起算して、3日間を経過した事(連続3日間の待機期間を経過)

傷病手当金は、健康保険の保険の対象となる疾病、負傷のために療養をしている事、そして連続3日間以上、労務に服していない人に対して4日目から傷病手当金が支給されます。

傷病手当金の退職後の継続給付は、傷病手当金を支給されている事が要件になります。

つまり、退職日以前に疾病、負傷をしたが会社に出勤していて労務に服していて、まだ傷病手当金の支給を受けていない人は、傷病手当金の退職後の継続給付の対象となりません。

補足

  • 「療養の為」…健康保険の保険事故とならないような美容整形手術などの療養は除外となります。
  • 「労務に服する事が出来ない」…今まで行っていた労務と比較して、代替的性格を持たない労務に従事する場合も、労務に服する事に該当しません。会社は休んでいるけど、内職は出来るなども場合も傷病手当金の対象となります。
  • 「連続3日間の待機期間」…労務不能となった日を1日目としてカウントします。ただし業務終了後に傷病が発生した場合は翌日が1日目となります。

③同一の傷病の療養の為、退職後も労務不能状態が継続している事

退職時に傷病手当金の支給要件を満たしているだけではなく、当然ですが退職後も同じ傷病による、労務不能状態が継続していないといけません。

違う傷病によって労務不能になったり、新しい会社で働いている場合は傷病手当金の退職後の継続給付をもらう事は出来なくなりますのでご注意ください。

【法改正】健康保険法の退職後の傷病手当金の支給期間はどれくらい?

「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)」によって、健康保険法等が改正されました。

今回の改正によって、令和4年4月1日から傷病手当金の支給期間が変更になります。

具体的な傷病手当金の支給期間と改正内容を確認していきます。

  • 改正前:傷病手当金の支給を開始した日から「起算して1年6ヶ月間」
  • 改正後:傷病手当金の支給を開始した日から「通算して1年6ヶ月分

改正前は、支給開始した日から起算して1年6ヶ月が経過してしまえば、実際の支給が1ヶ月だけだったとしても傷病手当金はそこで支給終了という制度でした。

改正後は、支給開始した日以降の期間、途中で労務に服するなど傷病手当金は支給されない期間がある場合、支給開始した日から起算して1年6ヶ月を経過してしまっても、通算して1年6ヶ月分の傷病手当金を受け取るまでは支給を受ける事が可能になります。

改正は令和4年4月1日から施行されます。

令和3年12月31日の時点で、支給開始した日から起算して1年6ヶ月を経過していない傷病手当金の支給対象者に適用されます。ご自身が対象かどうかを確認してみてください。
(令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金が対象)

参考:厚生労働省ホームページ「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」

健康保険法の退職後の傷病手当金の支給額はいくら?

健康保険法の傷病手当金の支給額を解説します。

傷病手当金の1日あたりに支給額

傷病手当金の支給を開始する日の属する月以前の直近の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均額 ÷ 1/30 × 2/3

標準報酬月額というのは月の収入額なので、1/30というのは日割りする為の計算式になります。

その2/3が支給額となりますので、要は普通に働いていた時の2/3に金額を日割りで支給されるという事になります。

まとめ:傷病手当金をもらって退職する継続給付の支給要件を解説

今回は、傷病手当金をもらって退職する事が出来る、傷病手当金の継続給付の支給要件を解説した記事でした。

健康保険法の退職後の傷病手当金の継続給付を支給されるには、退職日において12ヶ月間被保険者である必要がある為、少しの期間働いて、傷病により労務不能になり退職しても、退職後の傷病手当金は支給されないという事をご注意下さい。

法改正も令和4年4月1日から施行され、健康保険法の退職後の継続給付の支給期間も、支給開始日から起算して1年6ヶ月ではなく、通算で1年6ヶ月分の支給を受ける事が出来るようになりました。

傷病になり、労務不能状態にある方は、健康保険法の退職後の傷病手当金の支給申請を検討してみては如何でしょうか。

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