「休業補償給付」と「傷病手当金」の違いを解説|支給要件・支給額・支給期間など

休業補償給付と傷病手当金の違いを解説

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疾病や負傷によって、仕事をする事が出来なくなった場合に支給される「労働者災害補償保険法の休業補償給付」と「健康保険法の傷病手当金」。

どちらも、仕事をする事が出来なくなった場合の所得保障が目的です。

休業補償給付と傷病手当金は目的が同じなので、実際にご自身や従業員が疾病や負傷をした場合に、「労働者災害補償保険法の休業補償給付」と「健康保険法の傷病手当金」のどちらが支給されるのか混乱される方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では休業補償給付と傷病手当金はような場合に支給されるのか、違いも含めて解説していきます。

目次

「休業補償給付」と「傷病手当金」の違いは「業務上か・業務外か」の違い

「労働者災害補償保険法の休業補償給付」と「健康保険法の傷病手当金」は、疾病や負傷が「業務に起因する業務上」に該当するか、「業務に起因しない業務外」かの違いで判断されます。

  • 「労働者災害補償保険法の休業補償給付」…業務上の疾病、負傷が対象
  • 「健康保険法の傷病手当金」…業務外の疾病、負傷が対象

休業補償給付と傷病手当金の比較まとめ

原則労働者災害補償保険法の休業補償給付健康保険法の傷病手当金
主な目的業務上の負傷、疾病による所得保障業務外の負傷、疾病による所得保障
支給要件業務上の疾病、負傷
・労務不能
通算3日の対期間
・賃金を支払われていない
業務外の疾病、負傷
・労務不能
連続3日の対期間
※報酬の支払いの有無はなし
支給額以前3ヶ月間の賃金の日額の2/3以前12ヶ月の報酬の日額の2/3
支給期間完治するまで支払い開始から1年6ヶ月

休業補償給付と傷病手当金の法律

休業補償給付は労働者災害補償保険法で、傷病手当金は健康保険法で設けられた制度です。

「労働者災害補償保険法」業務上の事由に関して保険給付を行う為の法律

第一条 労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」という。)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

引用元:e-Gov 労働者災害補償保険法

「健康保険法」業務外の事由に関して保険給付を行う為の法律

第一条 この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害(労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第七条第一項第一号に規定する業務災害をいう。)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

引用元:e-Gov 健康保険法

労働者災害補償保険法は業務上だけではなく、通勤に起因する疾病、負傷も対象となります。

また健康保険法は、業務上ですが労働者災害補償保険法で認定されなかった場合、健康保険法が適用され、労働者災害補償保険法を補完する役割もあります。

休業補償給付の支給要件

  1. 業務上の事由により疾病、負傷にかかる事
  2. 上記の疾病、負傷により労働する事が出来ない事
  3. 賃金を受けない事(平均賃金の60%未満の場合も含む)
  4. 通算3日間の待機期間を経過する事

ちなみに「賃金を受けない事」とは、全く賃金を受けていないという事ではなく、平均賃金の60%未満の金額しか受けていない日も含まれます。

労働基準法では、業務に起因する休業の場合、使用者は労働者に対して平均賃金の60%を生活保障として支払う義務があり、労働者災害補償保険法はその使用者が支払う生活保障を補完する為の法律です。

本来支払うべき平均賃金の60%未満しか支払っていない場合は、「賃金を受けていない」に該当するという事です。

労働基準法

第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない

第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない

引用元:e-Gov 労働基準法

また、通算3日間の待機期間とは要件を満たしても3日間は給付をするかどうかの様子見期間として設けられています。

その3日間は労働者災害補償保険法から休業補償給付は支給されないので、使用者は前述した休業補償を自己負担で支払う必要があります。

休業補償給付の支給額・支給期間

  1. 支給額:1日につき、給付基礎日額の60/100に相当する額
    ※給付基礎日額とは労働基準法における平均賃金と同様です。(平均賃金=以前3ヶ月間に支払われた賃金の総額/3ヶ月の総日数)
  2. 支給期間:要件を満たしている限り、支給される
    ※ただし途中で傷病補償年金に切り替かわった場合は傷病補償年金に変更されます。

つまり労働者災害補償保険法の休業補償給付は、以前3ヶ月間に支払われた賃金の日額換算した金額が支給され、疾病、負傷が治るまでは原則支給され続けるという事です。

※で記載した傷病補償年金というのは、簡単に言うと休業補償給付のグレードアップ版です。

休業補償給付をもらってから1年6ヶ月経過した時に、一定の傷病状態に該当すると休業補償給付よりも多くの金額がもらう事ができるように切り替わります。

休業補償給付は日額ですが、傷病補償年金は年額でまとめてもらう事ができるので年金として受け取る事が出来ます。

1年6ヶ月経過してもまだ治らず、一定の傷病等級に該当する場合、仕事が出来ない状態が今後も長期化する事が予測される為、傷病補償年金に切り替わるという目的になります。

傷病手当金の支給要件

  1. 業務外の疾病、負傷による療養である事
  2. 労務不能である事
  3. 連続3日間の待機期間がある事

休業補償給付との違いとしては、「業務外である事」「通算ではなく、連続3日間の待機期間である事」「報酬の支払いの有無がない事」の3点です。

業務上の場合と違い、業務外の疾病、負傷は労働者の自己責任です。

その為、様子見期間である待機期間が通算ではなく連続3日間と少し厳しい要件に変わっています。

報酬の支払いが要件にはありません。これは実際には報酬が支払われている時は傷病手当金は不支給もしくは減額になります。

傷病手当金の支給額・支給期間

  1. 支給額(原則):1日につき、直近の継続した12ヶ月の各月の標準報酬月額の平均額の1/30 × 2/3
  2. 支給期間:支給を開始した日から起算して1年6ヶ月間

傷病手当金の支給額は簡単に言うと、過去12ヶ月の平均の給料を日額にした金額の2/3という事です。

支給期間は、支給開始した日から起算して1年6ヶ月となっています。

健康保険法の法改正があり、令和4年4月1日からは、支給開始した日から起算して1年6ヶ月ではなく、支給開始した日から通算して1年6ヶ月に変更になりますのでご注意下さい。

まとめ:休業補償給付と傷病手当金の比較

休業補償給付と傷病手当金の比較表をもう一度掲載しておきます。

原則労働者災害補償保険法の休業補償給付健康保険法の傷病手当金
主な目的業務上の負傷、疾病による所得保障業務外の負傷、疾病による所得保障
支給要件業務上の疾病、負傷
・労務不能
通算3日の対期間
・賃金を支払われていない
業務外の疾病、負傷
・労務不能
連続3日の対期間
※報酬の支払いの有無はなし
支給額以前3ヶ月間の賃金の日額の2/3以前12ヶ月の報酬の日額の2/3
支給期間完治するまで支払い開始から1年6ヶ月

今回は同じ所得保障を目的とする、労働者災害補償保険法の休業補償給付と、健康保険法の傷病手当金の違いを解説した記事でした。

業務上か業務外かという違いだけではなく、対期間や支給額を算出する際の対象期間、支給期間にも違いがありました。

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