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「企業型確定拠出年金」(企業DC)とは60歳以降の老後に向けた資産を作るため「国民年金や厚生年金の上乗せとなる3階部分」として毎月掛金を拠出を行い選択できる投資商品で運用する事で「60歳以降に年金や一時金で受け取ることのできる制度」です。
老後に向けての企業型確定拠出年金ですがインターネットで検索すると「ひどい」という情報が出てきます。
今回の記事では企業型確定拠出年金が「ひどい」と感じる3つの理由について解説します。
企業型確定拠出年金が「ひどい」と感じる「3つの理由」は次のとおりです。
そして、結論から言うと「これらの3つは全てがデメリットというわけではなく、本来の確定拠出年金の目的とメリットを正しく理解できていない事が最大の問題」だと感じています。
今回の記事では「ひどい」と感じる3つの理由をもとに、本来の確定拠出年金の目的とメリットも整理した記事になっていますので、一緒に正しい知識を持てればと思います。
「企業型確定拠出年金」とは拠出額と呼ばれる「掛け金を確定」させて運用することで将来「運用結果に応じた年金をもらえる制度」となっています。
この反対に位置するのは「確定給付企業年金」という制度で確定給付企業年金は「将来給付される年金額を確定」させてそれに合わせて毎月掛け金を企業が支払っていく制度となっています。
確定給付企業年金と企業型確定拠出年金の概要 | ||
制度の種類 | 確定給付企業年金 | 企業型確定拠出年金 |
毎月の掛け金の支払い | 「企業」が支払う | 「企業」が支払う |
将来の給付額 | 確定 | 未確定(運用結果次第) |
運用 | 「企業」が運用 | 「個人」が運用 |
資産管理 | 「企業」が管理 | 「外部の運営管理機関」が管理 |
投資商品の変更 | できない | できる |
もともとは確定給付企業年金の方がメリットがあると感じる方が多く、一般的に普及していたのですが運用も資産管理も全て企業責任となり、運用成績や企業業績が良くない場合に、資産が足りず追加で企業が負担するなど、企業側の負担が大きくなり、リスクも含めて企業への依存度が非常に高くになります。
制度の種類 | 確定給付企業年金 | 企業型確定拠出年金 |
企業へのリスク依存度 | 依存度が「高い」 | 依存度が「低い」 |
掛け金の負担 | 「企業」が負担 | 「企業」が負担 |
運用の責任 | 「企業」が責任 | 「個人」が責任 |
目的 | 60歳以降の所得確保 | 60歳以降の所得確保 |
それに対して企業型確定拠出年金は原則として拠出金と呼ばれる「掛け金は企業が負担」「運用は従業員が行う」制度となります。
運用の責任は自己責任ですが、その分企業へのリスク依存度が低いため、ご自身が運用の知識を正しく持てば、自己責任という事がメリットになります。
また確定拠出年金の法律上も自己責任で行う事を支援する事で、老後の所得確保を実現するという目的になっています。
第一章 総則(目的)第一条 この法律は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、個人又は事業主が拠出した資金を「個人が自己の責任において運用」の指図を行い、「高齢期においてその結果に基づいた給付を受ける」ことができるようにするため、確定拠出年金について必要な事項を定め、「国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援」し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。
引用:e-Gov「確定拠出年金法」
つまり運用を従業員が行うため運用成績によっては将来受け取る年金が元本よりも少なくなってしまう場合がありますが、企業へのリスク依存度を高めることがリスクだと捉え、自己責任で運用を行う事を支援する目的でつくられた制度が企業型確定拠出年金という制度です。
改めて企業型確定拠出年金の目的は次の2点ということを踏まえて、「ひどい」のかを確認していきましょう。
企業型確定拠出年金が「ひどい」と感じてしまう理由として「60歳まで引き出すことができない事」があげられます。
企業型確定拠出年金の目的をおさらいすると、次の2つとなります。
老後の所得保障ということを考えた場合に、60歳まで引き出すことができないのはメリットと捉えられます。
また企業型確定拠出年金は、掛け金は企業は払いますので従業員にとってはそれを60歳まで引き出せない事はデメリットにはならないように感じます。
また退職などをした場合、一定の要件を満たすと中途脱退をして「脱退一時金」をもらえる制度もあります。
脱退一時金に関しては別の記事で解説していますのでそちらを参考にしてください。
企業型確定拠出年金が「ひどい」と感じてしまう次の理由は従業員に「投資商品や運用する知識が少ない事」があげられます。
企業型確定拠出年金でよくあるのが「仕組みややり方がよく分からないので管理画面にログインすらしないでずっと放置」という方も多いようです。
また知識もないことであらかじめ用意された「株式・投資信託・定期預金など運用商品」の中から、好きな運用商品を選択するのですが、「定期預金」を選択されている方が多く、この低金利時代に定期預金だと利息は非常に少額になります。
企業型確定拠出年金は「運用益が非課税」となりますので「定期預金を選択してしまうとメリットがほとんどなくなってしまいます」。
運用する従業員の方が正しい投資商品や運用する知識は必要となりますので、企業型確定拠出年金を実施する企業は継続投資教育をおこなう事が努力義務化されています。
従業員の方々が運用や制度に関する知識が少ないため、企業側としては「従業員に継続的に資料の提供や必要な措置をする事が努力義務」になっています。
第四節 運用(事業主の責務) 第二十二条 事業主は、その実施する企業型年金の企業型年金加入者等に対し、これらの者が行う第二十五条第一項の運用の指図に資するため、資産の運用に関する基礎的な資料の提供その他の必要な措置を継続的に講ずるよう努めなければならない。 2 事業主は、前項の措置を講ずるに当たっては、企業型年金加入者等の資産の運用に関する知識を向上させ、かつ、これを第二十五条第一項の運用の指図に有効に活用することができるよう配慮するものとする。
引用:e-Gov「確定拠出年金法」
実際の継続投資教育の実施はどのようになっているのでしょうか。 2020年決算の確定拠出年金実態調査結果では「継続投資教育」の実施率は次のとおりになっています。
実施率は年々あがっていますが、未実施かつ計画していない企業が16%となっていますので、まだ不十分のように感じます。また継続投資教育を実施したことがある企業のうち1年以内に実施しているのは56.7%となっていますが、1年に1回は継続投資教育をおこなう方が、従業員の方々は不安に感じず「ひどい」という考えは少なくなるのではないでしょうか。
ここは改善の余地はありそうですね。
企業型確定拠出年金の「ひどい」と感じる3つの理由をあげてきましたがそれぞれを整理していきます。
3つの理由 | 「60歳まで引き出せない」 | 従業員に 「投資商品・運用する知識が少ない」 |
企業からの 「継続投資教育が不十分」 |
整理後 | 老後の所得確保が目的の為 メリットにもなりえる |
改善の余地あり | 改善の余地あり |
企業からの継続投資教育が不十分のため、従業員に投資商品・運用する知識が少なく、それによって運用利率の低い「定期預金」「運用成績が良くない投資信託」などを選択してしまっている事で、60歳まで引き出せないという長期投資がデメリットになってしまっている事が「ひどい」と感じてしまう理由になっています。
本来であれば60歳まで引き出せないという「長期投資をメリットに変える」為の「運用利率の高く、成績が良い投資信託」や、「安定したリターンが確保できる国債」を「選択できる知識を従業員に企業が継続投資教育によって与えていく事が重要」です。
企業が継続投資教育をしてくれていない場合でも、運営管理機関や、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどに相談をしてみるのもありかもしれません。
企業型確定拠出年金は、企業が選択した運営管理機関が保有している投資商品の中から、ご自身で投資商品を選択する制度となっています。
その為企業が選択した運営管理機関が保有している投資商品ラインナップが、企業ごとに違う為、ここで紹介する投資商品の銘柄が必ず選択できるというわけではありませんが、投資商品の選択に参考になればと思います。
信託報酬 | 0.0968% |
---|---|
トータルリターン(1年) | 44.52% |
トータルリターン(3年) | 27.66% |
S&P500はご存知の方も多いと思いますが、アメリカの約500社の代表的な株式を集めた投資信託となります。構成銘柄としてはアップル、マイクロソフト、アマゾンなど主要銘柄が含まれていますのでトータルリターンも十分期待できる投資信託となっています。
信託報酬 | 0.1102% |
---|---|
トータルリターン(1年) | 31.32% |
トータルリターン(3年) | 21.45% |
日本を含む、全世界の株式へ投資を行う投資信託となります。S&P500はアメリカだけの株式を集めた投資信託なのに対して、「SBI・全世界株式インデックスファンド」は全世界の株式を対象としていますので、中国やインドなどの株式価格上昇でリターンも期待できます。
信託報酬 | 0.1144% |
---|---|
トータルリターン(1年) | 34.10% |
トータルリターン(3年) | 23.06% |
日本を除く、先進国および新興国など全世界の株式への投資信託となります。日本の経済成長を期待していない方でアメリカ含む全世界への経済成長を期待している方はこちらの投資信託もおすすめです。
ご自身の加入している企業型確定拠出年金の投資商品ラインナップを改めて企業もしくは運営管理機関に確認をしてみてください。また投資は自己責任となりますのであくまで参考にするだけで、投資判断はご自身の判断でお願いします。
おすすめ銘柄に関しては別の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
企業型確定拠出年金にはデメリットではなく3つのメリットがあります。
企業型確定拠出年金は、会社の福利厚生の制度です。
会社に確定拠出年金制度がない人は、自分で個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入して、加入者手数料を払いながら資産形成をしています。一方、企業型確定拠出年金は、従業員が手数料を負担することはありません。それを考えると、会社がすべて「お膳立て」をしてくれるこの制度は、非常にありがたい制度なのです。
投資して運用益を得た場合に「通常の投資の場合は運用益の20%(所得税15%・住民税5%)課税」されます。 確定拠出年金の場合この「運用益に課税がされません」ので非常にメリットがあります。
確定拠出年金には60歳以降の受け取り時にもさらに税制優遇があります。
60歳以降に受給する際「一時金」「年金」もしくは「一時金+年金」の受給方法を選択します。
その際に受け取り方法が「一時金の場合は退職所得控除」、「年金なら公的年金控除」の対象となります。
課税の対象となる課税所得は「退職所得控除」「公的年金控除」後の所得が対象となりますので受け取り時にも税制優遇があります。
今回の記事では企業型確定拠出年金が「ひどい」と感じてしまう3つの理由について解説しました。
60歳まで引き出す事ができないことが最大のデメリットですが、従業員に十分な投資運用知識がない中で、企業側の投資継続教育の実施率が不十分で、その結果運用結果も高くはないことが「ひどい」と感じてしまう部分のようですね。
企業型確定拠出年金はメリットも大きい制度ですので企業側は投資継続教育を実施し、従業員の投資運用知識を持ち、不安な部分が減っていくと「ひどい」と感じずにご利用いただけると思います。
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