「パパも育休を取りたいけれど、収入がどれくらい減るのか不安…」
そう感じている方は少なくないはずです。実際には、育児・介護休業法および雇用保険法の改正により、パパが育休を取得した場合の給付制度はここ数年で大きく拡充されています。特に2025年4月に創設された「出生後休業支援給付金」により、条件を満たせば休業前賃金の80%相当の給付を受けられる仕組みが整いました。
本記事では、社会保険労務士の立場から、パパが利用できる育休給付金の種類・支給要件・支給額の計算方法・申請の流れを、厚生労働省の公表資料や制度の根拠となる条文に基づいて整理します。数字や要件は変更されることがあるため、実際の申請にあたっては必ず勤務先の人事担当者やハローワークにご確認ください。
1. パパが対象となる育休給付金は3種類ある
雇用保険の「育児休業等給付」には、次の4つの給付金があります(出典:厚生労働省「育児休業給付について」)1。
- 出生時育児休業給付金(産後パパ育休給付金)
- 育児休業給付金(通常の育休給付金)
- 出生後休業支援給付金(2025年4月創設)
- 育児時短就業給付金(2025年4月創設・時短勤務者向け)
このうちパパの育休取得時に関係が深いのが、上位3つです。それぞれの制度は独立しているのではなく、「産後パパ育休を取ると出生時育児休業給付金が出る」「育休を取ると育児休業給付金が出る」「その上に条件を満たすと出生後休業支援給付金が上乗せされる」という重層的な構造になっています。まずは全体像を押さえましょう。
2. そもそも「産後パパ育休」とは何か(制度の法的根拠)
「産後パパ育休」の正式名称は「出生時育児休業」で、育児・介護休業法第9条の2に規定されている制度です2。要件を満たす労働者は、子の出生後8週間以内に、通算4週間(28日)を上限として、2回に分けて休業を取得できます2。従来の育児休業よりも申出期限が短く(原則休業の2週間前まで)、柔軟に取得できるよう2022年10月の法改正で新設された枠組みです。
なお、産後パパ育休とは別に「育児休業」そのものは育児・介護休業法第5条から第9条の6にかけて規定されており、原則として子が1歳(一定の要件を満たす場合は最長2歳)に達するまで取得できます。夫婦がともに育休を取得する場合には「パパ・ママ育休プラス」により、子が1歳2か月に達するまで対象期間が延長される特例もあります。
3. ①出生時育児休業給付金(産後パパ育休の給付金)
3-1. 支給要件
出生時育児休業給付金は、産後パパ育休を取得した雇用保険の被保険者に対して支給されます。主な要件は次のとおりです(出典:ハローワークインターネットサービス)3。
- 育児休業開始前2年間に、賃金支払の基礎となった日数が11日以上(または就業時間数80時間以上)ある月が12か月以上あること
- 出生時育児休業期間中の就業日数が10日以下(10日を超える場合は就業時間が80時間以下)であること
- 休業期間中に事業主から支払われた賃金が、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じた額の80%未満であること
期間を定めて雇用される方(有期雇用労働者)についても、一定の要件を満たせば対象となります。
3-2. 支給額の計算方法
支給額は、次の計算式で算出されます(出典:厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」)4。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数(28日が上限)× 67%
厚生労働省が公表している例では、休業開始時賃金日額が10,000円の方が産後パパ育休を28日取得し、その間の賃金支払がない場合、支給額は「10,000円×28日×67%=187,600円」となります4。休業開始時賃金日額は、原則として育休開始前6か月間の総支給額(賞与を除く)を180で割った額です4。
この給付には上限額が設けられており、毎年8月1日に厚生労働省が公表する「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減をもとに改定されます。2026年8月1日以降の支給対象期間においては、出生時育児休業給付金の支給上限額(支給率67%)は310,290円です(出典:厚生労働省リーフレット「支給限度額が変更になります」)5。
3-3. 申請のタイミングと窓口
出生時育児休業給付金の申請は、事業主を経由してハローワークに提出するのが原則です。産後パパ育休を分割して2回取得した場合でも、申請はまとめて1回で行います。育児休業に振り替える合意をした場合を除き、28日を超える休業や3回目以降の休業は給付の対象外となる点に注意が必要です。
4. ②育児休業給付金(通常の育休給付金)
産後パパ育休のあとに引き続き、あるいは単独で育児休業を取得した場合には、育児休業給付金が支給されます。支給率は次のとおりです(出典:厚生労働省Q&A)4。
- 休業開始日から180日目まで:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
- 休業開始から181日目以降:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
支給上限額も毎年8月1日に改定され、2026年8月1日以降は支給率67%の場合で332,454円、支給率50%の場合で241,650円から248,100円に引き上げられています5。パパが「パパ・ママ育休プラス」を活用して配偶者と時期をずらして育休を取得した場合、対象期間が子が1歳2か月になるまで延長されるため、その分給付を受けられる期間も長くなります。
5. ③出生後休業支援給付金(2025年4月創設・実質手取り10割相当)
5-1. 制度の趣旨
出生後休業支援給付金は、2025年4月1日に創設された比較的新しい給付金です。厚生労働省は、この制度について「夫婦ともに14日以上の育児休業を取得すると、最大28日間、出生後休業支援給付金(給付率13%)が受け取れます。通常の育児休業給付(給付率67%)と合わせて、手取り10割相当(給付率80%)となります」と説明しています(出典:厚生労働省「育児・介護休業法について」)6。
出産直後の8週間は母親の心身の回復にとって重要な時期であることから、この時期に父親が育休を取得しやすくするための経済的な後押しとして設けられた制度です。
5-2. 支給要件
出生後休業支援給付金の主な支給要件は次のとおりです(出典:厚生労働省・都道府県労働局リーフレット)7。
- 対象期間内に、同一の子について、出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休、または育児休業給付金が支給される育児休業を、通算14日以上取得したこと
- 配偶者も、子の出生日(または出産予定日のうち早い日)以後に、通算14日以上の育児休業を取得していること(一定の場合はこの要件が不要)
「対象期間」は、労働基準法上の産後休業を取得しない場合は子の出生日から8週間を経過する日の翌日まで、産後休業をした場合は出生日から16週間を経過する日の翌日までとされています3。
配偶者の育休取得を要件としない例外もあります。具体的には、配偶者がいない場合、配偶者が被保険者と法律上の親子関係にない場合、配偶者から暴力を受けて別居している場合、配偶者が無業者である場合、配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない場合、配偶者が産後休業中である場合などが該当します(出典:都道府県労働局リーフレット)7。このため、配偶者が専業主婦(夫)や自営業者であっても、本人が要件を満たせば出生後休業支援給付金の対象となり得ます。
5-3. 支給額
支給額は「休業開始時賃金日額 × 支給日数(上限28日)× 13%」で計算され、既存の出生時育児休業給付金・育児休業給付金(67%)に上乗せされます67。2026年8月1日以降の支給上限額(支給率13%)は60,205円です5。
なお、休業期間中に会社から賃金が支払われている場合、その賃金と給付の合計額が休業開始時賃金の一定割合を超えると、出生後休業支援給付金が減額または不支給となることがあります。高い賃金水準の方や短時間勤務者は、支給額が上限・下限の影響を受けやすい点にも留意してください。
6. いくらもらえる?支給額のイメージ
厚生労働省の例をもとに、産後パパ育休を28日取得し、出生後休業支援給付金もあわせて受給するケースの給付額(総額の目安)を整理します。休業開始時賃金日額が10,000円(28日換算で28万円相当)の方の場合、
- 出生時育児休業給付金:10,000円×28日×67%=187,600円4
- 出生後休業支援給付金:10,000円×28日×13%=36,400円
を合わせると、給付額は合計224,000円(賃金日額換算で80%相当)となります。実際の支給額は、休業開始前の賃金水準や休業期間中に会社から賃金の支払いがあるかどうかによって変動しますので、あくまで目安としてご覧ください。
7. 申請の流れと必要書類
育児休業給付は、労働者本人ではなく事業主がハローワークに書類を提出するのが原則的な手続きです。大まかな流れは次のとおりです。
- 労働者が事業主に産後パパ育休・育児休業の取得を申し出る(原則、産後パパ育休は休業開始の2週間前まで、育児休業は1か月前まで)
- 事業主が「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」等を作成し、受給資格確認の手続きを行う
- 事業主が「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」等をハローワークに提出する
- 出生後休業支援給付金を申請する場合は、配偶者の育休取得状況等を確認できる書類(母子健康手帳の写しなど)をあわせて提出する
- 育児休業給付金は、原則2か月に一度、支給単位期間ごとに追加の支給申請を行う
出生後休業支援給付金は、出生時育児休業給付金や育児休業給付金の支給決定後にあらためて申請することも可能です(同時提出でない場合は、支給決定後に提出)(出典:都道府県労働局リーフレット)7。書類の様式や添付書類の要否は個々の事情により異なるため、詳細は勤務先の担当部署や管轄のハローワークにご確認ください。
8. 社会保険料の取り扱いについても確認を
育児休業・産後パパ育休の期間中は、届出により健康保険料・厚生年金保険料が労使双方について免除される仕組みがあります(健康保険法第159条、厚生年金保険法第81条の2)。この免除は、育児休業給付とは別の手続きが必要になるため、事業主による届出の要否や条件についても、あわせて確認しておくとよいでしょう。本記事では税務上の取り扱いには触れていませんので、その点についてはご自身の状況に応じて専門家にご相談ください。
9. 社労士の視点:制度を利用する際に気をつけたいポイント
最後に、実務でよくご相談いただく注意点を整理します。
分割取得のルールを事前に確認する 産後パパ育休は2回まで分割できますが、分割する場合はまとめて申し出る必要があります。3回目の休業や28日を超えた休業部分は、そのままでは給付の対象外となるため、取得計画は早めに固めておくことをおすすめします。
配偶者の育休取得状況の把握が前提になる 出生後休業支援給付金は、配偶者側の育休取得日数や状況によって要件充足の可否が変わります。夫婦で取得時期・日数をすり合わせておくことが、給付を受け損なわないための第一歩です。
上限額・下限額は毎年8月1日に改定される 本記事で紹介した支給上限額は2026年8月1日以降の数値です。給付額には毎月勤労統計をもとにした上限・下限があり、年によって変動しますので、実際の申請時には最新の金額をハローワークまたは厚生労働省の公表資料で確認してください5。
男性の育休取得率の公表義務が拡大している 2025年4月から、常時雇用する労働者数が300人超1,000人以下の事業主にも、男性の育児休業等の取得状況の公表が義務付けられています(育児・介護休業法関連。出典:厚生労働省「育児・介護休業法について」)6。企業側の環境整備も進んでいるタイミングですので、社内制度や取得実績についても人事担当者に相談してみるとよいでしょう。
10. まとめ
パパの育休給付金は、産後パパ育休に対応する「出生時育児休業給付金」、通常の育休に対応する「育児休業給付金」、そして2025年4月に創設された上乗せ制度「出生後休業支援給付金」の3つを組み合わせることで、要件を満たせば休業前賃金の80%相当の給付を受けられる制度設計になっています。制度の詳細や支給要件は法改正により変更されることがあるため、実際に育休取得を検討する際は、厚生労働省やハローワークの最新情報を確認しつつ、必要に応じて社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
参考文献・出典
※本記事の内容は執筆時点(2026年8月)の情報に基づいています。制度の詳細や最新の支給要件・金額については、厚生労働省の公表資料または管轄のハローワークにて必ずご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の受給資格を保証するものではありません。
- 厚生労働省「育児休業給付について」(職業安定分科会雇用保険部会資料) https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001334939.pdf ↩
- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(育児・介護休業法第9条の2ほか) https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf ↩ ↩2
- ハローワークインターネットサービス「利用上の注意」(出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金の要件) https://hoken.hellowork.mhlw.go.jp/static/ikuji_shussho.html ↩ ↩2
- 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- 厚生労働省「令和8年8月1日から支給限度額が変更になります」 https://www.mhlw.go.jp/content/001728499.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」(出生後休業支援給付、男性育休取得率公表の拡大等) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html ↩ ↩2 ↩3
- 厚生労働省・都道府県労働局リーフレット「出生後休業支援給付金の創設について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001599643.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4
