パパの育休、手取りは本当に「10割」になる?社労士がやさしく解説

目次

はじめに

「パパも育休を取りたいけれど、収入が減るのが不安…」

そんな声に応えるように、2025年(令和7年)4月から、育児休業中の給付金の仕組みが大きく変わりました。キーワードとして目にすることが増えた「パパ 育休 10割」という言葉は、正確には「出生後休業支援給付金」という新しい給付金の創設によって、一定の要件を満たせば休業前の手取り額とほぼ同水準の給付が受けられるようになったことを指しています。

本記事では、社会保険労務士の立場から、厚生労働省が公表している資料や法令の条文といった公的な根拠に基づき、「パパ育休の手取り10割」がどのような制度で、どのような要件を満たせば実現するのかを整理します。なお、本記事では税務(所得税・住民税の取扱い等)には触れません。税務上の判断が必要な場合は、税理士や所轄の税務署にご確認ください。

この記事の結論

  • 2025年4月に創設された「出生後休業支援給付金」により、要件を満たすパパ・ママは最大28日間、賃金の額面80%相当の給付を受けられるようになりました。
  • 育休中は社会保険料が免除されるため、給付率80%は「手取りベースでほぼ10割相当」になるとされています。
  • ただし、この給付を受けるには「両親そろって一定期間内に14日以上の育児休業を取得すること」など、明確な要件があります。

以下、順を追って解説します。

1. そもそも「パパ育休」には2種類ある

「パパ育休」とひとくくりに言われますが、法律上は次の2つの制度が組み合わさっています。

(1)出生時育児休業(産後パパ育休)

子の出生後8週間以内に、最大4週間(28日)まで、分割して2回取得できる休業制度です。育児・介護休業法第9条の2第1項に基づき、2022年(令和4年)10月1日から施行されています。男性の育児参加を後押しする目的で新設された、比較的柔軟に取得できる仕組みです。

(2)(通常の)育児休業

原則として子が1歳(保育所に入れない等の事情がある場合は最長2歳)に達するまで取得できる、従来からの育児休業制度です(育児・介護休業法第5条〜第9条)。2022年10月の改正により、分割して2回まで取得できるようになりました。

パパは、この2つの制度を組み合わせることで、出生直後の産後パパ育休(最大2回)と、その後の育児休業(最大2回)をあわせて、最大4回に分けて休業を取得することが可能です。

2. 育児休業中の収入を支える「育児休業給付」の基本

育児休業中は、労務を提供していないため、原則として給与は支給されません。そこで収入を補うのが、雇用保険から支給される「育児休業給付」です。

出生時育児休業を取得した場合は「出生時育児休業給付金」、通常の育児休業を取得した場合は「育児休業給付金」が支給されます。いずれも、休業開始時の賃金日額をもとに算定した金額の67%相当額(休業開始から181日目以降は50%)が支給されるというのが、これまでの基本ルールでした。この給付率は雇用保険法に定められています。

つまり、2025年3月まで(および要件を満たさない場合)は、育休中の給付は「額面のおよそ67%」が基本であり、これが「育休中は収入が2〜3割減る」と言われてきた理由です。

3. 2025年4月創設「出生後休業支援給付金」が最大のポイント

ここからが本題です。2025年(令和7年)4月1日、雇用保険法の改正により「出生後休業支援給付金」が新設されました。厚生労働省は、この給付金について「共働き・共育てを推進するため、子の出生直後の一定期間に、両親ともに(配偶者が就労していない場合などは本人が)14日以上の育児休業を取得した場合に、出生時育児休業給付金または育児休業給付金とあわせて最大28日間支給する」制度として案内しています。

具体的な給付率は次のとおりです。

  • 従来の育児休業給付(出生時育児休業給付金・育児休業給付金):賃金日額相当額の67%
  • 出生後休業支援給付金(上乗せ分):13%
  • 合計:80%(最大28日間)

厚生労働省の育児休業等給付の紹介ページでも、この制度は「こども未来戦略」に基づく支援策であり、財源には全世代・全企業が拠出する子ども・子育て支援金が充てられるとされています。

4. なぜ「給付率80%」が「手取り10割相当」になるのか

給付率が80%なのに、なぜ「手取り10割」と言われるのでしょうか。ここは誤解が生じやすいポイントなので、社労士の視点から仕組みを整理します。

鍵となるのは、育児休業中の社会保険料免除です。

育児休業を取得している被保険者については、事業主が「育児休業等取得者申出書」を提出することにより、健康保険料・厚生年金保険料の被保険者負担分・事業主負担分の両方が免除されます。この免除は健康保険法第159条および厚生年金保険法第81条の2に基づく制度で、令和4年10月からは、賞与に係る保険料も含め、同一月内に通算14日以上の育児休業等を取得した場合などに免除される仕組みに改正されています。

さらに、厚生年金保険法第81条の2第2項の規定により、保険料が免除されている期間も「保険料を納付したもの」として将来の年金額の計算に算入されるため、免除を受けても将来受け取る老齢厚生年金が減ることはありません。

通常の給与からは、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などが天引きされますが、育休中はこれらの社会保険料負担がなくなります。そのため、給付率80%の給付金を受け取ると、休業前の給与の手取り額とほぼ同水準になる、というのが「手取り10割相当」と言われる仕組みの中心部分です。

※なお、育児休業給付金の税務上の取扱い(課税・非課税の別など)については、本記事では取り扱いません。個別の税務相談は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

5. 出生後休業支援給付金を受け取るための要件

出生後休業支援給付金は、「休業を取っただけ」では受給できません。厚生労働省のリーフレット「2025年4月から出生後休業支援給付金を創設します」等によれば、要件は父親(配偶者が育休を取得しない場合を含む)と母親とで整理されています。

父親の要件(配偶者が産後休業をしない場合など)

子の出生日(または出産予定日のうち早い日)から、出生日・出産予定日のうち遅い日を起算日として8週間を経過する日の翌日までの期間に、通算して14日以上の育児休業(産後パパ育休を含む)を取得していること。

母親の要件(産後休業をした場合)

産後休業後の育児休業について、上記と同様の起算方法で計算した16週間を経過する日の翌日までの期間に、通算して14日以上の育児休業を取得していること。

配偶者の育休取得が不要とされるケース

配偶者がいない場合や、配偶者が無業である場合など、一定の事情があるときは、配偶者の育児休業取得を要件としない特例も設けられています。詳細な要件や必要な添付書類は、個々の家庭の状況によって異なるため、厚生労働省が公開している「出生後休業支援給付金の簡易診断(要件確認)ツール」で確認することができます。

6. 申請方法・手続きの流れ

出生後休業支援給付金は、単独では申請できません。原則として、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の初回申請手続きとあわせて、事業主を経由してハローワークに申請することとされています。

必要に応じて、配偶者が出生後休業を取得したことを証明する書類(母子健康手帳の写しなど)や、配偶者が対象となる育児休業を取得できないことの申告書といった様式の提出が求められる場合があります。様式は厚生労働省の「育児休業等給付について」のページで公開されています。

7. 【最新情報】令和8年8月からの手続き見直し

厚生労働省は、育児休業等給付の申請手続きをより行いやすくするため、令和8年(2026年)8月1日から事務取扱いを一部見直すことを公表しています。主な内容は、出生時育児休業給付金の申請時に申告する賃金の範囲の明確化、出生後休業支援給付金における配偶者の確認書類の簡素化(母子健康手帳の写し等での代替)、育児時短就業給付における週所定労働時間の計算方法の見直しなどです。制度は今後も改正が続く分野であるため、申請時点での最新情報を必ずハローワークまたは厚生労働省のウェブサイトで確認することをおすすめします。

8. データで見る「男性の育休」の今

制度が整っても、実際にどれだけ利用されているのかは気になるところです。厚生労働省が公表した「令和6年度雇用均等基本調査」によれば、令和4年10月1日から1年間に配偶者が出産した男性のうち、令和6年10月1日までに育児休業(産後パパ育休を含む)を開始した人の割合、いわゆる男性の育児休業取得率は40.5%となり、前年度の30.1%から10.4ポイント上昇して過去最高を更新しました。あわせて、育児休業を取得した男性のうち82.6%が産後パパ育休を利用していることも明らかになっており、2022年に創設された産後パパ育休制度の効果がうかがえます。

政府は「こども未来戦略方針」(令和5年6月閣議決定)において、男性の育児休業取得率を2025年までに50%、2030年までに85%に引き上げるという目標を掲げています。出生後休業支援給付金の創設は、この目標達成に向けた経済的な後押しの一つと位置づけられています。

9. 制度を活用するうえでの留意点

最後に、実務上おさえておきたいポイントを整理します。

  • 賃金には上限・下限がある:育児休業給付の算定基礎となる休業開始時賃金日額には上限額・下限額が設定されており、毎年8月1日に見直されます。高収入の方は、給付率80%がそのまま額面賃金の80%にならない場合があります。
  • 対象期間は「暦日」で計算される:8週間・16週間という期間は、出産予定日と実際の出生日のいずれか早い日・遅い日を基準に計算されるため、個々のケースで具体的な期間が異なります。
  • 企業側の体制整備も課題:中小企業など、育児休業取得者の代替要員の確保が難しい職場では、制度が整っても取得しづらいという実務上の課題が残ります。事業主による雇用環境整備や、両立支援等助成金の活用も検討に値します。
  • 個別の状況は専門家に相談を:休業の分割取得のタイミングや、社会保険料免除の適用月の判定など、実際の適用にあたっては個々の雇用契約や賃金形態によって扱いが異なることがあります。具体的な手続きについては、社会保険労務士やハローワークにご相談ください。

まとめ

2025年4月に創設された出生後休業支援給付金により、両親がそろって子の出生直後に14日以上の育児休業を取得するなど一定の要件を満たせば、最大28日間、育児休業給付とあわせて賃金の80%相当が支給されるようになりました。育休中は社会保険料が免除される仕組みとあいまって、この80%給付は「手取りベースでほぼ10割相当」になるとされています。

一方で、この給付を受けるには配偶者側の育休取得状況を含めた要件があり、対象期間の考え方も個々のケースで異なります。「パパ育休を取りたいが手続きが不安」という方は、勤務先の人事担当者や、お近くの社会保険労務士、所轄のハローワークに、ご自身の状況にあわせた確認をされることをおすすめします。


参考文献・出典

本記事は、以下の公的機関が公表している資料・法令に基づいて作成しています。

※本記事の内容は、記事公開時点で確認できた公的資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の労働契約・賃金形態等における適用を保証するものではありません。制度は改正される場合がありますので、最新情報は厚生労働省ウェブサイト等でご確認いただくとともに、個別のご相談は顧問社会保険労務士等の専門家へお問い合わせください。

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