うつ病による就職困難者の失業保険について解説します。

うつ病_就職困難者_失業保険_解説

届出書類の書き方・労働問題」社労士に無料相談

CONTACT

社会保険労務士事務所 NEUTRALへのご相談はお問合せフォームよりお気軽にお問合せください。

新型コロナウイルス感染症によって増加傾向にあるうつ病。

うつ病になってしまうと働く事はもちろんですが、退職して就職活動を行う事も非常に困難になります。

退職後の失業中の生活保障のために、一定の要件を満たすと失業保険が支給されます。

この失業保険、うつ病の場合に要件を満たすと「就職困難者」という受給資格が認められます。

「就職困難者」の場合、受給要件が緩和されたり、所定給付日数が多くなり、うつ病により就職活動が困難になり失業状態の長期化した際の生活保障を手厚くしてくれます。

今回の記事では、うつ病による就職困難者の失業保険について解説していきます。

目次

うつ病による就職困難者の失業保険の対象者

うつ病による就職困難者の失業保険の対象者はこちらの①と②の両方に該当する方が対象となります。

  1. 退職の日以前1年間で、6ヶ月以上雇用保険の被保険者である人
  2. 次のどちらかに該当する人
    ・「精神障害者保健福祉手帳」の所持者

    ・「主治医意見書」を管轄ハローワークへ提出した人
    ※ローカルルールや症状によって違う場合もある為、管轄のハローワークに相談してください。

失業保険を受給する為には、「一般受給資格者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」「就職困難者」の4つに区分されています。

一般受給資格者よりも、就職困難者の方ほど、失業保険の支給額が増えたり、受給要件が緩和されます。

退職の日以前1年間で、6ヶ月以上雇用保険の被保険者である人とは

失業保険を受給する為には、受給要件を満たす必要があります。

就職困難者の失業保険の受給要件

原則として離職の日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上」
※被保険者期間とは「賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上である期間」又は「賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上である期間」

被保険者期間を計算する際に、4月・5月というカレンダー上の暦月で計算するのではなく、退職日から遡って1ヶ月ごとに区切って計算をします。

仮に退職日が6月10日だとすると5月11日〜6月10日、4月11日〜5月10日と区切っていきます。

就職困難者の場合、失業保険の受給要件が緩和されていて、一般の受給要件は原則として離職の日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上必要です。

うつ病による就職困難者に必要な「精神障害者保健福祉手帳」とは

うつ病による就職困難者の失業保険の受給資格者になる為に必要な、精神障害者保健福祉手帳とは、一定程度の精神障害の状態にあるという事を認定する手帳です。

うつ病の方だけが対象ではなく、以下のような精神障害も対象となっています。

  • 統合失調症
  • うつ病、そううつ病などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物依存症
  • 高次脳機能障害
  • 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
  • そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)

精神障害者保健福祉手帳を受ける為には、精神障害による初診日から6ヶ月以上経過している事が必要です。

精神障害者保健福祉手帳の申請方法は、市町村の窓口で行なう事が出来ます。

「精神障害者保健福祉手帳」申請に必要なもの

  • 申請書
  • 診断書又は、精神障害による障害年金を受給している場合は、その証書等の写し
    ※診断書は、精神障害の初診日から6か月以上経ってから、精神保健指定医(又は精神障害の診断又は治療に従事する医師)が記載したもの。(てんかん、発達障害、高次脳機能障害等について、精神科以外の科で診療を受けている場合は、それぞれの専門の医師が記載したもの。)
  • 本人の写真(宗教上又は医療上の理由により頭部を布などで覆うことは認められる場合があります)
    ※マイナンバーにより年金受給が確認できる場合には、2の書類の添付が不要となることがあります。

引用元:厚生労働省ホームページ「精神障害者保健福祉手帳

申請すると、精神保健福祉センターで審査が行われ認定される事で精神障害者保健福祉手帳がもらえます。

精神障害者保健福祉手帳の等級

精神障害者保健福祉手帳の等級は、次のように1級から3級に分かれています。

1級  精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度の者
2級  精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか
又は、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度の者
3級  精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか
又は、日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度の者

精神障害者保健福祉手帳の有効期間は交付した日から2年間が経過する日の属する日の末日です。

うつ病による就職困難者の失業保険の申請をする必要がある方はご自身の市町村へお問合せください。

うつ病による就職困難者の失業保険の支給額

うつ病のよる就職困難者の失業保険の支給額を見ていきましょう。

失業保険の支給額の計算式

失業保険の支給額  = 「基本手当日額(賃金日額 × 45%〜80%)」 × 「所定給付日数」

基本手当日額は簡単にいうと、退職日以前の直近6ヶ月間の賃金の日額を出して、それに一定の条件で45%〜80%の率をかけた金額になります。

つまりご自身の過去6ヶ月の賃金によって変動します。

その基本手当日額に、一定の要件で定められた所定給付日数を掛ける事で、失業保険の支給総額が決まります。

この所定給付日数というのは、「一般受給資格者」「特定受給資格者」「就職困難者」の区分や、年齢、雇用保険の加入期間によって大きく異なります。

「一般受給資格者」と「就職困難者」の所定給付日数を比較

  • 「一般受給資格者」の所定給付日数:90日〜150日
  • 就職困難者」の所定給付日数:150日〜360日

一般受給資格者か就職困難者かによって所定給付日数が大きく異なるので、同じ基本手当日額の方でも失業保険の支給総額は大きく変わってしまいます。

ご自身が就職困難者に該当する方、就職困難者に該当する可能性が高い方は管轄ハローワークへご相談ください。

厚生労働省ホームページ「全国のハローワークの所在案内

うつ病以外の就職困難者に関して

うつ病の就職困難者は失業保険を一般受給資格者よりも多く支給されますが、うつ病以外でも就職困難者になり得ます。

失業保険における就職困難者の定義は以下になります。

  1. 身体障害者(身体障害者手帳を持っている者)
  2. 知的障害者(療育手帳を持っている者)
  3. 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳を持っている物、その他例外あり)
  4. 保護観察中の者(保護観察所長から安定所長に連絡があった者)
  5. 社会的事情により就職が著しく阻害されている者 ※1
    ※1 アイヌ地区住民、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第20 条の規定に基づく中高年齢失業者等求職手帳を所持する者、その他教育・就労環境等により安定所長が就職が著しく困難であると認める者であって35歳以上の者

うつ病の就職困難者の失業保険に必要な退職する前に必要な手続き

  1. 「雇用保険被保険者証」の有無(雇用保険に加入しているのか)
  2. 会社がハローワークへ提出する「離職証明書」に記名・押印又は自筆による署名
  3. 「離職理由」の記載内容の確認(自己都合か会社都合かで給付制限期間が変わります)

上記を行なって離職をすると、離職後に「雇用保険被保険者離職票」を会社から貰う事が出来ます。

ご自宅に郵送で届くか、会社へ受け取りに行くかは会社に相談や確認をして下さい。

うつ病の就職困難者の失業保険に必要な退職した後に必要な手続き

離職後「雇用保険被保険者離職票」を会社からもらった後、管轄のハローワークへ行き「受給資格の決定と求職の申込」「雇用保険受給者初回説明会」「失業認定」と3ステップが必要です。

退職後のステップ1:「受給資格の決定」と「求職の申込」

離職後「雇用保険被保険者離職票」を会社からもらった後、管轄のハローワークへ行き「受給資格の決定」と「求職の申込」を行います。

  1. 雇用保険被保険者離職票(-1、2)
  2. 個人番号確認書類(いずれか1種類)
    マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
  3. 身元(実在)確認書類
    ((1)のうちいずれか1種類  ((1)の書類をお持ちでない方は、(2)のうち異なる2種類(コピー不可))

    (1)運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
    (2)公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など
  4. 写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.4cm)2枚
  5. 印鑑
  6. 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード
    (一部指定できない金融機関があります。ゆうちょ銀行は可能です。)
  7. 精神障害者保健福祉手帳」もしくは「主治医意見書 引用元:ハローワークホームページ「雇用保険の具体的な手続き

この時に必ずうつ病の就職困難者である証明をする為に「精神障害者保健福祉手帳」もしくは「主治医意見書」もハローワークへ提出して下さい。

退職後のステップ2:雇用保険受給者初回説明会

指定の日時に雇用保険受給者初回説明会が開催されます。

雇用保険受給者初回説明会に必要な物

  1. 雇用保険受給資格者のしおり
  2. 印鑑、筆記用具等

雇用保険受給者初回説明会で渡される物

  1. 雇用保険受給資格者証
  2. 失業認定申告書雇用保険受給者初回説明会で1回目の失業認定日が決定します。

退職後のステップ3:失業認定日

  1. 最後に原則として4週間に1度ハローワークへ行き、失業状態にあるかどうか「失業の認定」を行います。
  2. 失業の認定に必要な物
  3. 雇用保険受給資格者証
  4. 印鑑、筆記用具等
  5. 失業の認定を行い、4週間の中で失業している日と認定された日数分だけ基本手当日額が支給されるという流れになります。

まとめ:うつ病による就職困難者の失業保険について解説

今回は、うつ病による就職困難者の失業保険について解説しました。

うつ病による就職困難者の定義は精神障害者保険福祉手帳を持っている方(もしくは主治医意見書をハローワークへ提出)で、退職の日以前12ヶ月で被保険者期間が6ヶ月以上の場合に受給要件を満たし失業保険を受給する事が出来ます。

就職困難者の場合は、失業保険が支給される総日数である所定給付日数が、一般の受給資格者と大きく違う為、うつ病による就職困難者だけではなくその他就職困難者に該当する方はハローワークへ相談をして下さい。

人事労務は社会保険労務士に無料相談

  • 従業員が増えてきて「人事労務の届出書類や手続きが増えてきた
  • 法改正は毎年あるのに「就業規則変更を数年していない
  • もっと「助成金制度提案」が欲しい
  • 管理職人事部に「労働基準法や社会保険の研修」をしてもらいたい
うつ病_就職困難者_失業保険_解説

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次