【2026年最新】東京都の最低賃金はいくら?1,226円から1,280円への引き上げを社会保険労務士が解説

最低賃金は毎年見直される制度であり、特に全国最高水準にある東京都の動向は、都内で働く方にとっても、都内に事業場を置く企業にとっても影響の大きいテーマです。本稿では、東京都の最低賃金について、厚生労働省・東京労働局が公表している一次情報(法令、通達、公示資料等)のみを根拠として、社会保険労務士の立場から正確な情報を整理してお伝えします。制度の趣旨を正しく理解し、日々の賃金管理に役立てていただければ幸いです。

なお、本稿は最低賃金制度・労働関係法令に関する一般的な解説であり、税務に関する内容は含みません。個別の事案については、所轄の労働基準監督署または東京労働局、あるいは社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

目次

1. 結論:東京都の最低賃金は現在1,226円、2026年10月から1,280円へ

東京都の最低賃金(地域別最低賃金)は、令和7年(2025年)10月3日から時間額1,226円です。これは前年の1,163円から63円(引上げ率5.42%)の引き上げで、東京労働局が令和7年9月3日に官報公示し、10月3日に効力が発生したものです(東京労働局「東京都最低賃金は10月3日から時間額1,226円になります」)。

さらに直近の動きとして、令和8年(2026年)8月5日、東京地方最低賃金審議会が東京労働局長に対し、現行の1,226円から54円(引上げ率4.4%)引き上げて時間額1,280円に改正することが適当であるとの答申を行いました(東京労働局「東京都最低賃金の54円引上げを答申」)。この答申を受け、東京労働局において改正手続き(官報公示等)が進められ、例年の運用どおりであれば10月1日前後に効力が発生する見込みです。ただし、本稿執筆時点ではあくまで審議会の「答申」段階であり、東京労働局長による正式決定・官報公示をもって法的効力が確定します。実務対応にあたっては、必ず東京労働局の公式発表で最終的な金額・発効日をご確認ください。

2. 最低賃金制度とは何か(法的根拠)

最低賃金制度は、最低賃金法(昭和34年法律第137号)に基づく制度です。同法第1条は、その目的を次のように定めています。

最低賃金法は、賃金の低い労働者について賃金の最低額を保障することで労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定や労働力の質的向上、事業の公正な競争の確保に資し、あわせて国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(最低賃金法第1条)。

最低賃金額は時間額で定めることとされており(同法第3条)、使用者は最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません(同法第4条第1項)。仮に労働契約でこれを下回る賃金を定めた場合、その部分は無効となり、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます(同法第4条第2項)。

最低賃金には、都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」と、特定の産業について別途定められる「特定最低賃金(産業別最低賃金)」の2種類があります(同法第9条、第15条・第16条)。東京都の場合、地域別最低賃金(現行1,226円)が原則としてすべての労働者に適用されます。

3. 東京都最低賃金の推移

東京労働局の報道発表資料等によると、東京都の地域別最低賃金は近年、次のように推移しています。

発効年月日時間額引上げ額
令和4年(2022年)10月1日1,072円
令和5年(2023年)10月1日1,113円41円
令和6年(2024年)10月1日1,163円50円
令和7年(2025年)10月3日1,226円63円
令和8年(2026年)10月頃(答申段階)1,280円(見込み)54円

厚生労働省が公表している「令和7年度地域別最低賃金の全国一覧」によれば、令和7年度の全国加重平均は1,121円であり、東京都の1,226円はこれを105円上回る全国第1位の水準です(厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」)。

4. 最低賃金はどのように決まるのか(目安制度と決定プロセス)

東京都最低賃金がどのように決定されるかについても、正しく理解しておく必要があります。決定プロセスは概ね次の流れをたどります。

  1. 中央最低賃金審議会での目安審議:厚生労働大臣の諮問を受け、中央最低賃金審議会が全国の都道府県をA〜Cのランクに分け、引上げ額の目安を答申します。令和8年度の目安は、Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円でした(厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」)。
  2. 地方最低賃金審議会での審議:東京労働局長からの諮問を受け、東京地方最低賃金審議会(公益代表・労働者代表・使用者代表の各同数で構成)が、中央審議会の目安を参考にしつつ、地域の賃金実態調査結果等を踏まえて審議し、答申を行います。
  3. 決定・公示:東京労働局長が答申内容を踏まえて金額を決定し、官報で公示します。
  4. 効力発生:公示後、一定期間を経て効力が発生します。

この一連の手続きは最低賃金法第10条から第14条にかけて規定されています。実際に令和7年度の改定では、令和7年6月30日に東京労働局長から東京地方最低賃金審議会へ諮問がなされ、同年8月7日に1,226円とする答申が行われ、9月3日に官報公示、10月3日に効力発生という流れをたどりました(東京労働局報道発表資料)。令和8年度についても、6月30日の諮問を経て8月5日に1,280円への引上げが答申されており、同様の手続きで正式決定・公示が行われる見込みです。

5. 東京都最低賃金は誰に適用されるのか

東京都最低賃金は、東京都内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。正社員・契約社員・パートタイマー・アルバイト・学生アルバイトといった雇用形態の違いや、性別・国籍・年齢による区別はありません(東京労働局報道発表資料)。

派遣労働者への適用

派遣労働者については、派遣元事業場の所在地ではなく、派遣先の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金が適用されます(最低賃金法第13条)。したがって、派遣元が東京都以外に所在していても、派遣先が東京都内であれば東京都最低賃金(1,226円)が適用されます。

2つ以上の最低賃金が適用される場合

労働者が地域別最低賃金と特定最低賃金など、2つ以上の最低賃金の適用を受ける場合は、それらのうち最も高い金額が適用されます(最低賃金法第6条第1項)。

6. 特定最低賃金(産業別最低賃金)との関係

最低賃金法第15条・第16条に基づき、特定の産業については、地域別最低賃金より金額水準の高い「特定最低賃金」が別途定められることがあります。もっとも、東京都の特定最低賃金は現時点で地域別最低賃金(1,226円)を下回る水準にとどまっており、実務上は多くの業種で地域別最低賃金が基準となります。自社の業種に特定最低賃金が適用されるかどうか、また金額水準がどうなっているかは、必ず東京労働局の公示情報で個別に確認してください。

7. 最低賃金の対象となる賃金・ならない賃金

最低賃金額と実際の賃金を比較する際、支払われている賃金のすべてを対象とするわけではない点に注意が必要です。厚生労働省の公表資料によれば、最低賃金の対象となる賃金は「毎月支払われる基本的な賃金」であり、次の賃金は比較対象から除外されます(最低賃金法第4条第3項、最低賃金法施行規則第1条、厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」)。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

この点は実務上のトラブルが多い部分です。たとえば「精皆勤手当」や「家族手当」という名称の手当を計算に含めてしまい、監督署の調査で是正指導を受けるケースが見受けられます。手当の名称にかかわらず、実際の支給目的・内容に基づいて判断する必要がある点に留意してください。

8. 最低賃金法に違反した場合の罰則

使用者が最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合(最低賃金法第4条第1項違反)のうち、地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものについては、50万円以下の罰金に処せられます(最低賃金法第40条)。地域別最低賃金である東京都最低賃金は、この罰則の対象に含まれます。単なる行政指導にとどまらず、刑事罰の対象となり得る制度であることを、企業として正しく認識しておく必要があります。

9. 発効日をまたぐ賃金計算の実務上の注意点

最低賃金の発効日(例年10月上旬)は、多くの企業の賃金締め日の途中に来ることが多く、実務上の注意が必要です。発効日前の労働分には従前の最低賃金額、発効日以降の労働分には新しい最低賃金額を適用するのが原則ですが、計算の便宜上、発行日を含む賃金計算期間の初日から新しい最低賃金額で計算・支給しても差し支えないとされています(東京労働局リーフレット等)。給与計算システムや就業規則における賃金改定のタイミングを、発効日にあわせて事前に整備しておくことをお勧めします。

10. 特に注意したい「固定残業代」制度における最低賃金割れ

固定残業代(みなし残業代)制度を導入している事業場では、基本給部分のみで最低賃金と比較した際に、最低賃金を下回ってしまうケースが特に生じやすいとされています。ハローワークの求人票に関する案内でも、固定残業代を採用している場合の最低賃金割れについて繰り返し注意喚起がなされています(東京労働局管内ハローワーク公表資料)。基本給と固定残業代を明確に区分したうえで、基本給部分のみで時間額を計算し、最低賃金額を上回っているかを必ず確認してください。

11. 企業が今から取り組むべきこと

最低賃金の引き上げは、都内で人を雇用するすべての企業に影響します。社会保険労務士の立場から、企業の皆さまに次のような対応をお勧めします。

  • 現在の全従業員の時間額換算賃金を確認する:パート・アルバイトだけでなく、月給制の正社員についても、所定労働時間で除して時間額を算出し、最低賃金額を上回っているか確認しましょう。
  • 求人票・雇用契約書の見直し:発効日以降に募集・更新する求人票や雇用契約書の賃金額が、新しい最低賃金額を下回っていないか確認しましょう。
  • 助成金の活用検討:厚生労働省は、生産性向上を通じて事業場内最低賃金の引上げを図る中小企業・小規模事業者向けに「業務改善助成金」を、また非正規雇用労働者の処遇改善を図る「キャリアアップ助成金」等を用意しています。制度の詳細・要件は厚生労働省の公式ページで必ずご確認ください(厚生労働省「業務改善助成金」)。
  • 試用期間・研修期間中の賃金にも注意:試用期間や研修期間であっても、地域別最低賃金を下回ることは認められません。

12. まとめ

東京都の最低賃金は、令和7年(2025年)10月3日から時間額1,226円が適用されており、全国で最も高い水準にあります。さらに令和8年(2026年)8月5日には、東京地方最低賃金審議会から1,280円への引き上げが答申されており、例年どおりであれば秋頃に正式決定・官報公示を経て効力が発生する見込みです。

最低賃金制度は、労働者の生活の安定を図るとともに、事業の公正な競争を確保するための重要な社会的インフラです。制度の対象となる賃金の範囲や、派遣労働者・固定残業代などの実務上の注意点を正しく理解し、法令違反のない適正な賃金管理を行うことが、企業の信頼確保にもつながります。最新の金額・発効日は必ず東京労働局・厚生労働省の公式発表でご確認いただくとともに、疑問点があれば所轄の労働基準監督署や顧問社会保険労務士等の専門家にご相談ください。


参考・出典(一次情報)

※本稿は執筆時点(2026年8月)で公表されている一次情報に基づいています。2026年度の東京都最低賃金額・発効日は、東京労働局長による正式決定・官報公示前の答申段階の情報であるため、確定情報は必ず東京労働局の公式発表でご確認ください。

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