【社労士が解説】埼玉県の最低賃金はいくら?2025年(令和7年)最新の1,141円への引き上げと企業対応のポイント

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【社労士が解説】埼玉県の最低賃金はいくら?2025年(令和7年)最新の1,141円への引き上げと企業対応のポイント

はじめに

「埼玉県の最低賃金は今いくらなのか」「うちの会社は最低賃金を守れているのか」——埼玉県内で人を雇う事業主の方や、埼玉県内で働く方から、こうしたご質問をいただく機会が増えています。特に近年は最低賃金の引き上げ幅が大きく、パート・アルバイトの時給設定や社会保険の適用にも影響が及ぶため、正確な情報を押さえておくことが欠かせません。

本記事では、社会保険労務士の立場から、埼玉労働局が公表している情報や厚生労働省の公表資料、最低賃金法の条文といった一次情報のみを根拠として、埼玉県の最低賃金の最新状況、制度の仕組み、企業が注意すべきポイントを整理して解説します。なお、本記事は税務に関する内容には触れておりません。税務上の取扱いについては税理士等の専門家にご確認ください。

埼玉県の最低賃金(地域別最低賃金)はいくら?

結論からお伝えすると、令和7年11月1日から、埼玉県の地域別最低賃金は時間額1,141円(引き上げ額63円)となっています。これは、さいたま市や川越市、行田市、志木市、入間市、神川町、嵐山町など埼玉県内の各自治体が公表している情報でも共通して案内されている内容です。

この最低賃金は、埼玉地方最低賃金審議会での審議・答申を経て、埼玉労働局長が決定したものです。同審議会の記録によれば、令和7年7月14日に埼玉労働局長から埼玉地方最低賃金審議会に対して埼玉県最低賃金の改正について諮問がなされ、約1か月間の調査・審議を経て、令和7年8月8日に答申が取りまとめられました。答申は、埼玉県立大学名誉教授である福田素生会長から、当時の埼玉労働局長である片淵仁文氏に提出されています。

改定前の埼玉県最低賃金は時間額1,078円でしたので、63円という引き上げ幅は、令和3年度以降で最大となりました。参考までに、埼玉県における過去数年間の引き上げ額は、令和3年度が28円、令和4年度が31円、令和5年度が41円、令和6年度が50円と、年々拡大する傾向にあります。

最低賃金はいつから適用される?

令和7年度の改定分は、令和7年11月1日から効力を生じています。最低賃金法第14条は、厚生労働大臣または都道府県労働局長が地域別最低賃金に関する決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、決定した事項を公示しなければならないと定めています。この公示を経て正式に発効する仕組みになっており、埼玉県では発効日が11月1日とされました。

なお、令和7年度は全国的に引き上げ幅が大きかったことを踏まえ、都道府県によっては例年の10月ではなく、より遅い時期に発効日を設定したところもあります。自社の給与体系を確認する際は、必ず発効日以降の適用となっているかをあわせて確認する必要があります。

全国の状況と比較すると

厚生労働省が公表した「令和7年度地域別最低賃金額改定状況」によれば、令和7年度の改定額の全国加重平均は1,121円(令和6年度は1,055円)となり、引き上げ額は66円でした。この66円という引き上げ幅は、目安制度が始まった昭和53年度以降で最も大きい値とされています。また、今回の改定によって、初めて全都道府県で最低賃金が1,000円を超えることになりました。

埼玉県の1,141円は、全国加重平均の1,121円を上回る水準です。近隣の都県では、東京都が1,226円(引き上げ額63円)、千葉県が1,140円(引き上げ額64円)とされており、首都圏の中では東京都に次ぐ水準で埼玉県が推移しています。

埼玉県特定(産業別)最低賃金について

埼玉県では、地域別最低賃金のほかに、特定の産業に属する事業と基幹的な業務に従事する労働者に適用される「特定(産業別)最低賃金」が定められています。埼玉県内の各自治体の広報によれば、令和7年12月1日から、以下の5業種について特定最低賃金が改定されています。

  • 非鉄金属製造業:時間額1,161円
  • 光学機械器具等製造業:時間額1,177円
  • 電子部品等製造業:時間額1,168円
  • 輸送用機械器具製造業:時間額1,165円
  • 自動車小売業:時間額1,152円

これらはいずれも地域別最低賃金(1,141円)より高い水準に設定されています。自社が該当する業種に当てはまるかどうか不明な場合は、埼玉労働局労働基準部賃金室(電話:048-600-6205)または最寄りの労働基準監督署に確認することをおすすめします。

地域別最低賃金と特定最低賃金、どちらが優先されるのか

同一の労働者について地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合、どちらの金額を基準にすればよいか迷う方も多いのではないでしょうか。この点について、最低賃金法第6条は、労働者が二以上の最低賃金の適用を受ける場合には、これらのうち最高の金額により賃金支払義務を履行しなければならない旨を定めています。つまり、金額の高い方が優先して適用されるということです。

埼玉県の場合、特定最低賃金はいずれも地域別最低賃金の1,141円を上回っていますので、該当する業種・職種の労働者に対しては、特定最低賃金の額以上の賃金を支払う必要があります。

最低賃金はすべての労働者に適用される

最低賃金は、正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイト、契約社員、嘱託社員など、雇用形態や呼び名にかかわらず、県内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。さいたま市の案内でも、パートタイマー・アルバイト・臨時・嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用される旨が明記されています。

年齢による適用除外もありません。18歳未満の年少者や65歳以上の高齢者であっても、原則として地域別最低賃金が適用されます。また、日本国内の事業場で働く外国人労働者(技能実習生を含む)にも、国籍にかかわらず最低賃金法が適用されます。

最低賃金の対象となる賃金・ならない賃金

最低賃金額と実際に支払われている賃金を比較する際、すべての賃金項目を単純に合計して比較すればよいわけではない点に注意が必要です。厚生労働省の案内によれば、実際に支払われる賃金のうち、次の賃金は最低賃金の対象から除外されます。

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  4. 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  5. 午後10時から午前5時までの深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  6. 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

これらの根拠は最低賃金法第4条にあります。同条第1項は、使用者は最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないと定め、第2項では、最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約についてはその部分を無効とし、無効となった部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみなす、とされています。基本給や職務手当など、通常の労働の対価として支払われる賃金が主な比較対象になるとイメージしていただくとよいでしょう。

最低賃金の決定基準(最低賃金法第9条)

そもそも地域別最低賃金はどのような基準で決められているのでしょうか。最低賃金法第9条第2項は、地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならないと規定しています。さらに同条第3項では、労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとされています。

実際の決定プロセスとしては、まず中央最低賃金審議会が全国の都道府県を複数のランクに分けたうえで引き上げ額の目安を示し、これを受けて各都道府県労働局に設置される地方最低賃金審議会(埼玉県の場合は埼玉地方最低賃金審議会)が、公益委員・労働者委員・使用者委員による審議を経て、地域の実情を踏まえた答申を行うという流れになっています(最低賃金法第10条)。答申された金額は、その後、関係労使からの異議申出の手続を経たうえで、都道府県労働局長の決定により発効します。

最低賃金の減額特例(適用除外ではない点に注意)

「試用期間中だから」「障害があるから」といった理由で、最低賃金額を下回る賃金を支払ってよいと誤解されているケースがありますが、これは正しくありません。かつては個別の許可により最低賃金の適用そのものを除外する制度がありましたが、平成20年7月の法改正でこの適用除外は廃止され、代わって「最低賃金の減額の特例」制度が新設されています。

最低賃金法第7条は、使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときに限り、次に掲げる労働者について、最低賃金額から一定の率を減額した額により賃金を支払うことができると定めています。

  1. 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
  2. 試の使用期間中の者
  3. 認定職業訓練を受けている者のうち厚生労働省令で定める者
  4. 軽易な業務に従事する者、及び断続的労働に従事する者

いずれも都道府県労働局長の事前の許可が必要であり、使用者が独自の判断で減額してよいわけではない点に注意が必要です。無許可のまま最低賃金を下回る賃金を支払った場合は、通常の最低賃金法違反として扱われます。

使用者の周知義務

最低賃金法第8条は、最低賃金の適用を受ける使用者に対し、最低賃金の概要について、常時各作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法により、労働者に周知させるための措置を講じなければならないと定めています。改定のたびに、社内掲示や就業規則の確認など、周知のための対応を忘れずに行うことが求められます。

最低賃金に違反した場合の罰則

最低賃金を下回る賃金しか支払わなかった場合、使用者にはどのような罰則が科されるのでしょうか。最低賃金法第40条は、第4条第1項の規定(最低賃金の効力)に違反した者について、地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限り、50万円以下の罰金に処すると定めています。

一方、船員に関するものを除く特定(産業別)最低賃金については、最低賃金法上の罰則は適用されず、賃金の全額払の原則を定める労働基準法第24条第1項の違反として扱われ、同法第120条第1号に基づき30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、最低賃金法違反の行為をした従業員本人だけでなく、その使用者である法人にも同様に罰金刑が科され得る両罰規定が置かれています(最低賃金法第42条)。

罰則の適用の有無にかかわらず、最低賃金を下回る賃金しか支払っていなかった場合には、労働者から未払い賃金の差額を請求される可能性がある点にも留意が必要です。

中小企業・小規模事業者向けの支援策:業務改善助成金

急激な最低賃金の引き上げは、特に中小企業・小規模事業者にとって大きな経営課題となります。こうした事業者を支援する制度として、厚生労働省は「業務改善助成金」を実施しています。

厚生労働省の案内によれば、業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げるとともに、生産性向上に資する設備投資等(機械設備の導入、POSシステムの導入、コンサルティングの活用など)を行った中小企業・小規模事業者に対して、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。助成される金額は、設備投資等にかかった費用に一定の助成率を乗じた金額と、あらかじめ定められた助成上限額とを比較し、いずれか低い方の金額となる仕組みです。

制度の詳細な要件や助成率、上限額、申請時期は年度によって改定されるため、実際に活用を検討する際は、必ず厚生労働省の業務改善助成金のページで最新の交付要綱・要領を確認するか、業務改善助成金コールセンターにお問い合わせいただくことをおすすめします。

まとめ

本記事では、埼玉県の最低賃金について、令和7年11月1日から時間額1,141円(引き上げ額63円)に改定されたことを中心に、特定(産業別)最低賃金の状況、最低賃金の対象となる賃金の範囲、決定基準、減額特例、違反時の罰則、中小企業向けの支援策までを整理しました。

最低賃金は毎年見直される制度であり、経営者・人事労務担当者にとっては、年に一度必ず確認すべき重要な労務管理事項です。特に、時給がわずかでも最低賃金額を下回った瞬間に法違反となる点、そして最低賃金の対象となる賃金の範囲を正しく理解していないと、意図せず違反状態になってしまう可能性がある点には、十分な注意が必要です。

自社の賃金体系が最低賃金の要件を満たしているか不安がある場合や、特定最低賃金の適用の有無について判断に迷う場合は、埼玉労働局労働基準部賃金室や最寄りの労働基準監督署、または顧問社会保険労務士などの専門家にご相談いただくことをおすすめします。


参考文献・出典(一次情報)

本記事は、以下の法令および行政機関が公表する一次情報に基づいて作成しています。最新の情報は、必ず各リンク先の公式ページでご確認ください。


本記事は、公開されている一次情報に基づき、社会保険労務士の立場から一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。最低賃金額は毎年改定されるため、実際の適用にあたっては、必ず最新の公式情報をご確認いただくか、顧問社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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