【社労士が解説】在職老齢年金の早見表とは?令和8年度(2026年度)最新の基準額でわかりやすく解説

目次

はじめに

「在職老齢年金 早見表」で検索される方の多くは、「働きながら年金を受け取ると、年金がいくら支給停止されるのか」を具体的に知りたいという方だと思います。

在職老齢年金制度は、令和7年に成立した年金制度改正法(令和7年法律第74号)により、令和8年(2026年)4月から支給停止の基準額が大きく引き上げられました。この改正により、年金が全額支給される高齢者が新たに約20万人増えると見込まれています。

本記事では、社会保険労務士の立場から、厚生年金保険法の条文、厚生労働省・日本年金機構の公表資料など、根拠が明確な情報のみに基づいて、在職老齢年金の仕組みと早見表の見方、具体的な計算例を解説します。制度の性質上、税金に関する内容は含みません。

在職老齢年金とは何か(制度の概要と法的根拠)

在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受給しながら厚生年金保険の被保険者として働く方(または70歳以上で厚生年金適用事業所に勤務する方)を対象に、老齢厚生年金の基本月額と賃金(総報酬月額相当額)の合計が一定の基準額を超える場合に、老齢厚生年金の一部または全部の支給を停止する仕組みです。

この制度の法的根拠は、厚生年金保険法第46条第3項に定められています。同項では、老齢厚生年金の受給権者が被保険者である月において、総報酬月額相当額と基本月額の合計額が「支給停止調整額」を超えるときは、その超過額の2分の1に相当する額について老齢厚生年金の支給を停止する旨が規定されています。

在職老齢年金の対象となる年金

在職老齢年金による調整の対象となるのは、老齢厚生年金(報酬比例部分)のみです。老齢基礎年金や経過的加算額は、在職老齢年金による調整の対象とならず、全額支給されます。この点は日本年金機構の公式ページでも明記されている重要なポイントです。

在職老齢年金と老齢基礎年金の違い

老齢基礎年金は国民年金から支給される定額の年金であり、就労による収入の多寡にかかわらず全額が支給されます。一方、老齢厚生年金(報酬比例部分)は、厚生年金保険の被保険者として働き続ける場合、賃金水準に応じて支給停止の対象となる可能性があります。この違いを理解しておくことが、早見表を正しく読み解くための前提となります。

在職老齢年金の基準額(支給停止調整額)とは

在職老齢年金の計算で最も重要な数値が「支給停止調整額」、いわゆる基準額です。この基準額は毎年度、名目賃金変動率に応じて改定されます。

令和8年度(2026年度)の基準額は65万円

日本年金機構の発表によれば、令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に大幅に引き上げられました。

この65万円という金額は、令和7年の年金制度改正において法定の基準額を「62万円(令和6年度価格)」と定めたうえで、その後の名目賃金変動率(令和8年度は2.1%)に応じて1万円単位で改定された結果です。厚生労働省も令和8年1月23日公表の「令和8年度の年金額改定について」において、在職老齢年金の支給停止調整額が65万円になることを公表しています。

なお、支給停止調整額の法的根拠となる厚生年金保険法第46条第3項では、基準額の基礎を平成16年度価格で48万円と定め、平成17年度以降は各年度の名目賃金変動率に応じて改定する仕組みが規定されています。令和7年の法改正では、この法定基準額そのものが48万円から62万円へと引き上げられ、その結果として令和8年度は65万円という基準額になっています。

基準額の推移(令和4年度~令和8年度)

在職老齢年金の基準額(支給停止調整額)は、次のように推移してきました。

年度支給停止調整額
令和4年度(2022年度)47万円
令和5年度(2023年度)48万円
令和6年度(2024年度)50万円
令和7年度(2025年度)51万円
令和8年度(2026年度)65万円

令和4年度から令和7年度までは、名目賃金変動率に応じた小幅な改定が続いていましたが、令和8年度は法改正による基準額そのものの引き上げが重なったため、前年度から一気に14万円上昇するという大きな変化になりました。

在職老齢年金の計算式

早見表は、この計算式をもとにあらかじめ金額の組み合わせを一覧化したものです。計算式そのものを理解しておくと、早見表に載っていない金額でも自分で試算できるようになります。

支給停止額の計算式

日本年金機構が公表している計算方法は次のとおりです。

  • 基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円(令和8年度の基準額)以下の場合 → 老齢厚生年金は全額支給
  • 基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超える場合 → 支給停止後の年金月額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2

なお、この計算式は65歳以上の方だけでなく、令和4年4月以降は60歳から64歳の方(特別支給の老齢厚生年金の受給者)にも共通して適用されます。かつては60歳台前半の方には28万円という別基準の計算式が用いられていましたが、在職老齢年金制度の見直しにより、令和4年4月分の年金から65歳以上の方と同じ基準額・計算式に統一されています。

用語の説明(基本月額・総報酬月額相当額)

早見表を正しく読むためには、次の2つの用語の定義を押さえておく必要があります。

基本月額とは、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額を12で割った月額換算額のことです。厚生年金基金に加入していた期間がある場合は、厚生年金基金に加入しなかったと仮定して計算した年金額をもとに算出します。

総報酬月額相当額とは、その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を加えたものです。毎月の給与だけでなく、賞与(ボーナス)も年額換算して合算される点に注意が必要です。70歳以上の方については、それぞれ「標準報酬月額に相当する額」「標準賞与額に相当する額」に読み替えられます。

在職老齢年金 早見表の見方・活用法

早見表とは、基本月額と総報酬月額相当額の組み合わせごとに、実際に支給される年金月額(または支給停止額)をあらかじめ一覧表にまとめたものです。毎回計算式に数字を当てはめる手間を省けるため、多くの方が検索されています。

日本年金機構公式「在職老齢年金早見表」の入手方法

在職老齢年金の早見表は、日本年金機構の公式サイト「在職老齢年金の計算方法」ページから、PDF形式で公表されています。基準額(65万円)を前提とした、基本月額・総報酬月額相当額の組み合わせごとの支給停止後の年金額が一覧で確認できます。正確な数値を確認したい場合は、必ず日本年金機構が公表している最新の早見表(令和8年度版)を参照することをおすすめします。民間サイトが独自に作成した早見表を利用する場合は、その基準額が最新の年度(令和8年度=65万円)に対応しているかを必ず確認してください。

早見表を使う際の注意点

早見表はあくまで基本月額と総報酬月額相当額の代表的な組み合わせを示したものであり、ご自身の基本月額・総報酬月額相当額が早見表に掲載された数値と完全に一致しない場合は、計算式に当てはめて個別に試算する必要があります。また、加給年金額や経過的加算額は在職老齢年金による調整の対象外であり、早見表の金額に別途加算される点にも注意してください。

具体的な計算シミュレーション(早見表の実例)

ここでは、令和8年度の基準額65万円を前提に、実際の計算例を確認してみましょう。

ケース1:基本月額15万円+総報酬月額相当額30万円

合計額は45万円となり、基準額65万円以下のため、老齢厚生年金は全額支給されます。支給停止は発生しません。

ケース2:基本月額18万円+総報酬月額相当額48万円

合計額は66万円となり、基準額65万円を1万円超えます。支給停止額は(18万円+48万円-65万円)÷2=0.5万円となり、実際に支給される年金月額は18万円-0.5万円=17.5万円です。

ケース3:基本月額20万円+総報酬月額相当額50万円

合計額は70万円となり、基準額65万円を5万円超えます。支給停止額は(20万円+50万円-65万円)÷2=2.5万円となり、実際に支給される年金月額は20万円-2.5万円=17.5万円です。

ケース4:役員報酬が高いケース(基本月額25万円+総報酬月額相当額80万円)

合計額は105万円となり、基準額65万円を40万円超えます。支給停止額は(25万円+80万円-65万円)÷2=20万円となり、支給される年金月額は25万円-20万円=5万円です。このように、高額な役員報酬を得ている経営者層では、基準額の引き上げ後も老齢厚生年金の全額を受給できないケースが少なくありません。

いずれのケースも、支給停止となるのは基準額を超えた部分の「2分の1」にとどまります。合計額が基準額を超えたからといって、超過額全体が支給停止になるわけではない点は、多くの方が誤解しやすいポイントです。

令和7年年金制度改正法による基準額引き上げの背景

改正の趣旨・目的

日本年金機構は、今回の見直しの趣旨について、平均寿命・健康寿命が延びるなかで、働き続けることを希望する高齢者の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みとすることを目的としていると説明しています。従来の制度では、年金と賃金の合計が基準額を超えると年金が減額されることから、就労時間や日数を調整する高齢者が一定数存在するという課題が指摘されていました。基準額の引き上げによって、こうした就業調整の必要性を減らし、高齢者がより長く、より柔軟に働ける環境を整備することが今回の改正の狙いです。

改正前後の比較

改正前(令和7年度まで)の基準額は51万円でしたが、改正後(令和8年度以降)は65万円となりました。同じ年金額・給与水準であっても、基準額の引き上げにより支給停止額は縮小し、結果として毎月受け取れる年金額が増える方が多く生じています。厚生労働省の試算によれば、この改正により在職老齢年金の支給停止対象者数は大きく減少する見込みとされています。

60歳台前半の方の取扱い(令和4年3月以前との違い)

現在60歳から64歳で特別支給の老齢厚生年金を受給しながら働いている方についても、令和4年4月分の年金から、65歳以上の方と同じ基準額・計算式が適用されています。それ以前(令和4年3月以前)は、60歳台前半の方に限り28万円という別の基準額が用いられ、計算式も異なっていました。過去の情報を参照する際は、この制度改正のタイミングにご注意ください。

在職定時改定との関係

令和4年4月からは、「在職定時改定」という制度もあわせて導入されています。これは、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給している65歳以上70歳未満の方が、毎年9月1日時点で厚生年金の被保険者であるときに、前年9月から当年8月までの被保険者期間を年金額の計算に反映し、翌月(10月分)の年金額から改定するという仕組みです。

在職老齢年金による支給停止の判定と、在職定時改定による年金額の増額は別々の仕組みですが、在職定時改定によって基本月額が変わることで、在職老齢年金の支給停止額にも影響が及ぶ場合があります。長く働き続けるほど将来の年金額の計算基礎となる被保険者期間が積み上がっていく点は、早見表を見る際にもあわせて理解しておきたいポイントです。

社労士としての実務上のアドバイス

企業の人事労務担当者が押さえるべきポイント

今回の基準額引き上げは、給与計算や社会保険手続そのものに直接の変更を及ぼすものではありませんが、シニア人材の就労意欲や処遇制度の設計に大きな影響を与える可能性があります。人事労務担当者としては、対象となる従業員を把握したうえで、正確な制度情報を提供し、個別の相談に応じられる体制を整えておくことが望まれます。定年後再雇用の賃金水準や継続雇用の条件を検討する際にも、最新の基準額を前提とした情報提供が重要です。

就業調整をめぐる誤解に注意

「年金が減額されるくらいなら働かない方が得」という考え方は、多くの場合、正確ではありません。支給停止となるのはあくまで基準額を超えた部分の2分の1に限られるため、就労によって得られる収入の増加分が、年金の支給停止額を上回るケースがほとんどです。社会保険労務士としては、こうした制度の正確な理解を促し、従業員が誤解に基づいて不必要な就業調整を行うことのないよう、客観的な情報提供を心がけることが大切だと考えています。

在職老齢年金と繰下げ受給の関係

老齢厚生年金の受給開始を66歳以降に遅らせる「繰下げ受給」を選択した場合でも、繰下げ待機期間中に厚生年金保険の被保険者として働いていれば、在職老齢年金の計算そのものは行われます。ただし、在職老齢年金の仕組みにより支給停止の対象となっていた部分については、繰下げによる増額の対象から除かれる点に注意が必要です。つまり、繰下げ待機中に高額な報酬を得ていた期間がある場合、繰下げによる増額効果が期待したほど大きくならないケースがあります。繰下げ受給を検討する際は、在職老齢年金による支給停止の見込みもあわせて確認しておくことをおすすめします。

加給年金額・振替加算との関係

老齢厚生年金の受給権者に生計を維持されている65歳未満の配偶者や、一定要件を満たす子がいる場合には、加給年金額が加算されることがあります。在職老齢年金の計算式における「基本月額」は、この加給年金額を除いた金額をもとに算出されます。一方で、支給停止基準額が老齢厚生年金の額(加算額を除く)以上となる場合には、老齢厚生年金は加給年金額を含めて全部支給停止となる点は、早見表を確認する際に見落としやすいポイントです。配偶者への振替加算についても、老齢基礎年金に加算されるものであるため、在職老齢年金による調整の直接の対象にはなりません。

よくある質問

Q1.早見表に自分の金額がぴったり載っていない場合はどうすればよいですか。

早見表は代表的な金額の組み合わせを一覧化したものにすぎないため、ご自身の基本月額・総報酬月額相当額が早見表の刻み幅と一致しない場合は、本記事で紹介した計算式に実際の金額を当てはめて試算する必要があります。正確な年金見込額を知りたい場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」や年金事務所での相談を活用するとよいでしょう。

Q2.パートやアルバイトとして働く場合も在職老齢年金の対象になりますか。

在職老齢年金による調整の対象となるのは、厚生年金保険の被保険者として働く方です。勤務時間や勤務日数が短く、厚生年金保険の被保険者とならない働き方をしている場合は、そもそも在職老齢年金による支給停止の対象になりません。ご自身が厚生年金保険の被保険者に該当するかどうかは、勤務先の労働時間・所定労働日数などの要件によって決まります。

Q3.令和8年度の基準額は今後も変わりますか。

支給停止調整額は、厚生年金保険法第46条第3項の規定により、毎年度、名目賃金変動率に応じて改定される仕組みになっています。したがって、令和9年度以降も基準額が変動する可能性があります。最新の基準額は、必ず日本年金機構の公式サイトで確認するようにしてください。

まとめ

在職老齢年金は、老齢厚生年金を受給しながら働く方の年金額に直接関わる重要な制度です。令和8年度(2026年度)は、支給停止調整額(基準額)が51万円から65万円へと大幅に引き上げられ、多くの方にとって年金と就労収入を両立しやすい環境になりました。

早見表を活用する際は、必ず日本年金機構が公表している最新版(令和8年度基準)を参照し、基本月額・総報酬月額相当額の定義や、支給停止額の計算式を正しく理解したうえで確認することが重要です。ご自身の年金見込額や具体的な支給停止額について詳しく知りたい場合は、日本年金機構の窓口や「ねんきんネット」でのシミュレーション、または社会保険労務士への相談をご検討ください。


参考文献・出典

本記事は、以下の公的機関が公表する情報を根拠として作成しています。

※本記事の内容は記事作成時点(2026年8月)の法令・公表情報に基づいています。支給停止調整額は毎年度改定される可能性がありますので、最新の金額は必ず日本年金機構の公式サイトでご確認ください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の年金額や支給停止額を保証するものではありません。個別のご相談は、日本年金機構または顧問社会保険労務士までお問い合わせください。

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