はじめに――なぜ今「パパ育休」が注目されているのか
「パパ 育休」というキーワードで検索される方の多くは、これから第一子・第二子の出産を控え、「自分は育休を取れるのか」「会社にどう相談すればよいのか」「収入はどのくらい減るのか」といった不安や疑問を抱えていることでしょう。
2022年10月の改正育児・介護休業法の施行により、男性が子の出生直後に取得しやすい「産後パパ育休(出生時育児休業)」が新設されました。さらに2025年には育児・介護休業法が段階的に改正され、企業側の対応も大きく変わっています。
本記事では、社会保険労務士の立場から、制度の法的根拠、給付金の仕組み、直近の統計データ、2025年の法改正のポイントまでを、厚生労働省の公表資料等の一次情報に基づき、公平かつ中立的な観点から解説します。特定の制度利用を過度に推奨するものではなく、あくまで制度理解の一助となることを目的としています。
産後パパ育休(出生時育児休業)とは何か
制度の法的根拠
産後パパ育休の正式名称は「出生時育児休業」といい、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」)第9条の2から第9条の5に規定されています。2021年の法改正により新設され、2022年10月1日から施行されました。
法律の条文上、出生時育児休業とは「子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間以内の期間を定めてする休業」と定義されています(育児・介護休業法第9条の2第1項)。出産予定日と実際の出生日にずれが生じた場合の期間の考え方についても、同項に規定があります。
対象となる労働者
産後パパ育休は、性別を問わず利用できる制度ですが、法律上「産後休業をしていない労働者」が対象とされているため、実務上は主に男性労働者の利用が想定されています。女性であっても、養子縁組など産後休業の対象とならないケースでは取得が可能です。
有期雇用労働者については、子の出生日(出産予定日前に子が出生した場合は出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、労働契約の期間が満了することが明らかでない者に限り、申出をすることができます。
取得できる期間・回数
産後パパ育休で取得できる休業は、子の出生後8週間以内に、通算4週間(28日間)を上限とし、2回まで分割して取得することができます。ただし、分割取得を希望する場合は、最初にまとめて申し出ることが必要とされている点に注意が必要です(厚生労働省「育児休業制度特設サイト」参照)。
「育児休業」と「産後パパ育休」の違い
産後パパ育休は、原則として子が1歳になるまで取得できる従来の「育児休業」とは別枠の制度です。両者は併用が可能であり、たとえば出生直後の4週間を産後パパ育休で取得し、その後あらためて通常の育児休業を取得するという設計もできます。
また、2022年10月の改正により、1歳までの育児休業についても、原則1回とされていた取得回数が、男女とも分割して2回まで取得できるようになりました。これにより、出生直後・復職後の状況変化などに応じて、育休を柔軟に分けて利用することが可能になっています(厚生労働省「育児休業制度特設サイト」)。
産後パパ育休と通常の育児休業の主な違いを整理すると、次のとおりです。
- 取得可能時期:産後パパ育休は子の出生後8週間以内に限定されるのに対し、育児休業は原則として子が1歳(一定の要件を満たす場合は最長2歳)になるまで取得できます。
- 休業中の就業:産後パパ育休は労使協定の締結を前提に、労働者と事業主の合意のもとで休業中に一定の就業をすることが認められています。通常の育児休業では、原則として就業は認められません。
- 申出期限:産後パパ育休は原則休業の2週間前まで、通常の育児休業は原則1か月前までとされています。事業主が労使協定で一定の雇用環境整備等を行っている場合、産後パパ育休の申出期限を1か月前までとすることも可能です。
産後パパ育休の申出方法・期限
産後パパ育休を取得するには、原則として休業を開始しようとする日の2週間前までに、事業主に対して申し出る必要があります。申出の方法は、書面のほか、事業主が認める場合にはFAXや電子メール、社内LANなどによる方法も可能とされています(東京都「育児・介護休業法のあらまし」等の解説資料参照)。
2回に分割して取得する場合は、最初の申出の際にまとめて申し出ることが必要です。後から追加で分割取得を申し出ることは、原則として認められていない点に留意してください。
なお、労働者から産後パパ育休の申出があった場合、事業主はこれを拒むことができません(一定の要件を満たす場合の労使協定による除外を除く)。また、産後パパ育休の申出等をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いは禁止されています(育児・介護休業法第10条等)。
産後パパ育休中の就業は可能か
通常の育児休業中は原則として就業ができませんが、産後パパ育休には特例があります。労使協定が締結されている事業所に限り、労働者本人が合意した範囲内で、休業中に就業することが認められています。
就業を希望する場合、労働者は産後パパ育休の開始予定日の前日までに、就業可能な日や時間帯を事業主に申し出ます。これに対して事業主が就業させたい日時を提示し、労働者の同意を得たうえで就業日が確定するという流れになります。就業可能日数には上限があり、休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分までかつ最大10日(10日を超える場合は80時間)までとされています(厚生労働省リーフレット「育児休業、出生時育児休業(産後パパ育休)には、給付の支給や社会保険料免除があります」参照)。
この仕組みは、完全に業務を離れることへの不安がある労働者にとって、部分的に業務対応をしながら育児にも関わるという柔軟な選択肢になり得るものです。一方で、就業日数・時間によっては、後述する給付金や社会保険料免除の要件に影響する場合があるため、事前に会社の担当部署に確認することが重要です。
パパ・ママ育休プラスで育休期間を延長する
父母がともに育児休業を取得する場合に利用できる制度として「パパ・ママ育休プラス」があります。この制度を利用すると、原則子が1歳になるまでとされている育児休業の取得可能期間を、子が1歳2か月になるまで延長することができます(厚生労働省「パパ・ママ育休プラス」参照)。
利用にあたっては、配偶者が子の1歳到達日以前に育児休業(産後パパ育休を含む)を取得していること、本人の育児休業開始予定日が配偶者の育休初日以降であることなどの要件があります。育休を延長できるのはあくまで2か月分であり、休業「取得可能期間」の総日数そのものが増えるわけではない点には注意が必要です。
産後パパ育休中の経済的な支援制度
出生時育児休業給付金
産後パパ育休を取得し、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者には、雇用保険から「出生時育児休業給付金」が支給されます。支給額は、休業開始時賃金日額に休業日数を乗じた額の67%相当額です(厚生労働省リーフレット「育児休業、出生時育児休業(産後パパ育休)には、給付の支給や社会保険料免除があります」参照)。給付金には上限額が設けられており、休業開始時賃金日額には雇用保険法に基づく上限・下限があります。具体的な支給見込額は、勤務先を通じてハローワークに確認することをお勧めします。
出生後休業支援給付金(2025年4月創設)
2025年4月から、新たに「出生後休業支援給付金」が創設されました。これは、子の出生直後の一定期間内に、原則として父母がともに14日以上の育児休業(産後パパ育休を含む)を取得した場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を上乗せ支給する制度です。出生時育児休業給付金(67%)とあわせると給付率は80%相当となります(厚生労働省「出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツール」参照)。
ひとり親家庭など一定の要件に該当する場合は、配偶者が育児休業を取得していなくても支給対象となるケースがあります。自身が対象となるかどうかは、要件が細かく定められているため、厚生労働省の公式サイトや勤務先の担当部署、ハローワークで個別に確認することが確実です。
社会保険料の免除
産後パパ育休の期間中は、一定の要件を満たすことで、健康保険・厚生年金保険の保険料が被保険者本人負担分・事業主負担分ともに免除されます。免除の要件は、その月の末日が育児休業期間中であること、または同一月内で14日以上の育児休業を取得していることなどです(産後パパ育休中に就業した日は、この14日のカウントに含まれません)。賞与にかかる保険料については、賞与支給月の末日を含んで連続して1か月を超える育児休業を取得している場合に免除の対象となります(2022年10月改正)。
給付金の支給率に加えてこうした社会保険料の免除効果もあるため、休業中の手取り額は給付率の数字以上に維持されやすい仕組みになっていますが、具体的な手取り額は個々の給与体系や賞与の有無によって異なりますので、一律の金額を断定することはできません。
データで見る男性の育休取得の現状
厚生労働省が2025年7月30日に公表した「令和6年度雇用均等基本調査」によれば、2022年10月1日から2023年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性労働者のうち、2024年10月1日までに育児休業(産後パパ育休を含む)を開始した者の割合、すなわち男性の育児休業取得率は40.5%でした。これは前年度の調査結果(30.1%)から10.4ポイントの上昇であり、比較可能な調査開始以降で過去最高の水準となっています(厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」)。
同調査では、男性で育児休業を取得した者のうち、82.6%が産後パパ育休を利用していたことも示されており、2022年に創設された産後パパ育休が男性の育休取得を後押ししている実態がうかがえます。
一方で、女性の育児休業取得率は86.6%であり、男女差は依然として大きい状況です。また、同調査では、女性の9割以上が6か月以上の育休を取得しているのに対し、男性は約4割が取得期間2週間未満にとどまっているという結果も示されています(厚生労働省雇用環境・均等局「令和6年度育児休業取得率の調査結果(雇用均等基本調査)のポイントについて」)。取得率だけでなく、取得期間の長さという観点からも、男女間にはなお差がある点は客観的な事実として押さえておく必要があります。
なお、政府は「こども未来戦略方針」(令和5年6月閣議決定)において、男性の育児休業取得率について2025年までに50%、2030年までに85%に引き上げるという目標を掲げています。今回の調査結果は、この目標に向けた進捗の一つの指標として位置づけられます。
2025年の育児・介護休業法改正のポイント
柔軟な働き方を実現するための措置(2025年10月施行)
2025年10月1日からは、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者を対象に、事業主に対して「柔軟な働き方を実現するための措置」の整備が義務付けられました。事業主は、次の5つの選択肢のうち2つ以上を選んで制度化する必要があります。
- 始業時刻等の変更(フレックスタイム制、時差出勤等)
- テレワーク等(原則として時間単位で利用可能、月10日以上)
- 保育施設の設置運営等(ベビーシッターの手配・費用補助を含む)
- 養育両立支援休暇の付与(原則として時間単位で取得可能、年10日以上)
- 短時間勤務制度(原則1日6時間)
対象となる労働者に対しては、制度の利用対象となる前の個別周知および意向確認を行うことも求められています(厚生労働省「2025年4月から、改正育児・介護休業法等が施行!」参照)。
育児休業取得状況の公表義務の対象拡大(2025年4月施行)
男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表する義務は、これまで常時雇用する労働者が1,000人を超える企業に課されていました。2025年4月1日からは、この公表義務の対象が、常時雇用する労働者数が300人を超える企業にまで拡大されています。
公表する内容は、「男性の育児休業等の取得率」または「男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率」のいずれかであり、公表前事業年度終了後おおむね3か月以内に、インターネット等の方法で公表することとされています。公表先としては、厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」の利用が推奨されています(厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」)。
こうした情報公表の広がりは、求職者が企業選びの際に男性育休の取得実績を確認しやすくなるという側面もあり、パパ育休を検討する労働者にとっても有用な情報源となり得ます。
パパ育休取得までの実務の流れ
制度を実際に利用する際の一般的な流れを整理すると、次のようになります。
- 出産予定日の把握と社内での早期相談:出産予定日が分かった段階で、直属の上司や人事労務担当部署に育休取得の意向を伝えます。法律上の申出期限は原則2週間前(通常の育休は1か月前)ですが、業務の引き継ぎ等を考えると、早めの相談が望まれます。
- 取得パターンの検討:産後パパ育休のみとするか、通常の育児休業と組み合わせるか、分割取得を利用するかなど、家庭の状況に合わせて検討します。
- 休業中の就業希望の有無の確認:休業中に一部就業を希望する場合は、労使協定の有無を確認したうえで、就業可能日・時間帯を会社に申し出ます。
- 正式な申出書の提出:会社所定の様式、または書面・電子メール等で正式に申出を行います。
- 給付金の手続き:出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金の受給を希望する場合、通常は会社を通じてハローワークに必要書類を提出します。必要書類や手続きの詳細は、勤務先の担当部署にご確認ください。
- 復職後の対応:育休終了後の勤務条件について、必要に応じて短時間勤務制度など「柔軟な働き方を実現するための措置」の利用も検討します。
よくある質問(Q&A)
Q1.産後パパ育休は必ず取得できますか。 育児・介護休業法上の要件を満たす労働者からの申出があった場合、事業主は原則としてこれを拒むことができません。ただし、労使協定により、入社1年未満の労働者など一定の労働者を対象から除外できる場合があります。自身が対象となるかは、就業規則や労使協定の内容をご確認ください。
Q2.産後パパ育休と通常の育児休業、どちらを選べばよいですか。 どちらが望ましいかは各家庭の状況や働き方の希望によって異なり、一律の正解はありません。出生直後の短期間に集中して関わりたい場合は産後パパ育休、より長期間にわたって育児に関わりたい場合は通常の育児休業(あるいは両者の組み合わせ)が選択肢となります。
Q3.育休中に会社から連絡があった場合、対応する義務はありますか。 産後パパ育休中に就業する場合を除き、育児休業中は労務提供義務が消滅しているのが原則です。緊急連絡等への対応の要否については、事前に会社と取り決めておくことが望ましいでしょう。
まとめ――社労士からのアドバイス
産後パパ育休をはじめとする男性の育児休業制度は、2022年の法改正以降、法律面・給付面の両方で整備が進んできました。厚生労働省の調査でも、男性の育児休業取得率は着実に上昇しており、制度そのものは以前よりも利用しやすいものになっています。
一方で、給付金の支給要件、社会保険料免除の条件、休業中の就業の可否など、制度の詳細は個々の状況によって当てはめが異なります。本記事は一般的な制度概要をまとめたものであり、個別の事案における取得可否や給付額を保証するものではありません。実際の取得を検討される際は、就業規則や労使協定の内容を確認のうえ、勤務先の人事労務担当部署、所轄のハローワーク、またはお近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
参考・引用文献
- 厚生労働省「育児休業制度特設サイト(令和3年法改正のポイント)」https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/point.html
- 厚生労働省「産後パパ育休(出生時育児休業)が10月1日から施行されます」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27491.html
- 厚生労働省「出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツール」https://www.mhlw.go.jp/stf/syussyougo_kanishindan_00001.html
- 厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課「令和6年度育児休業取得率の調査結果(雇用均等基本調査)のポイントについて」https://tomoiku.mhlw.go.jp/assets/pdf/activity/document_R6.pdf
- 厚生労働省「2025年4月から、改正育児・介護休業法等が施行!」(コラム「いま注目!厚労省のススメ」)https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/column/20251001.html
- 厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)第9条の2~第9条の5、第10条
本記事は2026年8月時点で公表されている厚生労働省の資料等に基づき作成した一般的な情報提供であり、個別の労働契約や就業規則の内容によって取扱いが異なる場合があります。個別の相談は、顧問社会保険労務士等の専門家にお問い合わせください。
