はじめに
「パパ 育休 制度」と検索してこの記事にたどり着いた方の多くは、これからお子さんが生まれる、あるいはすでに生まれたばかりで、「自分は育休を取れるのか」「取ったらお給料はどうなるのか」「会社にどう伝えればよいのか」といった具体的な疑問をお持ちのことと思います。
近年、男性の育児休業取得率は着実に上昇しています。厚生労働省が2025年7月30日に公表した「令和6年度雇用均等基本調査」によれば、令和6年度(調査対象期間:令和4年10月1日〜令和5年9月30日に配偶者が出産した男性)の育児休業取得率は40.5%となり、前年度の30.1%から10.4ポイントという大きな伸びを示し、過去最高を更新しました。育児休業を取得した男性のうち82.6%が「産後パパ育休」を利用しているというデータも示されており、この制度が男性の育休取得を後押しする大きな柱となっていることがうかがえます(出典:厚生労働省「令和6年度育児休業取得率の調査結果(雇用均等基本調査)のポイントについて」)。
本記事では、社会保険労務士の立場から、法令・行政通達・厚生労働省の公表資料等の公的な根拠に基づき、「パパ育休」と呼ばれる制度の全体像を、できるだけ平易に、かつ正確に解説します。特定の立場に偏ることなく、労働者・事業主のいずれにとっても参考になる内容を心がけています。
1. 「パパ育休」とは何を指すのか
「パパ育休」という言葉は法律上の正式名称ではなく、一般に以下の2つの制度を指す言葉として使われています。
- 通常の育児休業(育児・介護休業法第5条〜第9条)を父親が取得する場合
- 出生時育児休業(産後パパ育休)(育児・介護休業法第9条の2〜第9条の5)
このうち、2022年10月1日の法改正で新設された「出生時育児休業(産後パパ育休)」は、男性の育児参加を後押しする目的で創設された制度であり、「パパ育休」という呼称は主にこちらを指すことが多いのが実情です(出典:厚生労働省「育児・介護休業法について」)。以下では、まず産後パパ育休を中心に解説し、その後、通常の育児休業との関係を整理します。
2. 産後パパ育休(出生時育児休業)の基本
2-1 対象となる労働者
産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に、原則としてその子を養育するために取得できる休業です(育児・介護休業法第9条の2第1項)。制度上は「産後休業をしていない労働者」が対象とされているため、主として男性が取得する制度ですが、養子を養育する場合などは女性も対象となり得ます。配偶者が専業主婦(夫)であっても、あるいは共働きであっても取得可能です。
有期雇用労働者については、子の出生日(または出産予定日のいずれか遅い方)から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、労働契約が満了することが明らかでない者であることが要件とされています(育児・介護休業法第9条の2第1項)。
なお、労使協定を締結することで、雇用期間が1年未満の労働者や、申出の日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者など、一定の労働者を対象から除外することが認められています(育児・介護休業法第9条の3第2項、同法施行規則第21条の3)。自社が適用除外の労使協定を締結しているかどうかは、就業規則や労使協定の内容を確認する必要があります。
2-2 取得できる期間と回数
産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に、通算4週間(28日)まで取得することができます(育児・介護休業法第9条の2第1項)。
大きな特徴は、2回まで分割して取得できる点です。ただし、分割取得を希望する場合は、最初の産後パパ育休の申出の際に、まとめて申し出ることが必要とされています(育児・介護休業法第9条の2第1項、第9条の3第3項)。出産予定日と実際の出生日にはずれが生じることもあるため、「出産直後に1回、育児が落ち着いてきた頃にもう1回」というように、家庭の状況に合わせて柔軟に休業時期を計画できる仕組みになっています。
2-3 休業中の就業について
通常の育児休業は原則として就業が認められませんが、産後パパ育休は労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主の合意のもとで、休業中に一部就業することが認められています。この点が通常の育児休業との大きな違いの一つです。
就業を行う場合には、以下のような上限が設けられています(厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」)。
- 就業日数の合計は、産後パパ育休期間における所定労働日数の半分以下であること
- 就業日の労働時間の合計は、産後パパ育休期間における所定労働時間の合計の半分以下であること
- 休業開始予定日または終了予定日を就業日とする場合、その日の労働時間は所定労働時間に満たない時間であること
就業可能日等の申出・調整の手続きは施行規則で細かく定められているため、実務上は就業規則や労使協定の規定に沿って、休業前に会社と労働者の間で就業日・時間を調整しておくことが重要です。
2-4 申出の期限と撤回
産後パパ育休の申出は、原則として休業開始予定日の2週間前までに行うこととされています(育児・介護休業法第9条の3第3項)。通常の育児休業の申出期限(原則1か月前)よりも短く設定されており、出産という予測しづらい出来事に対応しやすい制度設計になっています。
なお、後述する2025年(令和7年)4月の改正により、2回目の分割取得の申出期限や申出撤回の取扱いについても運用の柔軟化が図られています(厚生労働省「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」)。
3. 通常の育児休業との関係・違い
産後パパ育休は、通常の育児休業とは別枠の制度として設計されています。つまり、産後パパ育休を4週間取得したうえで、子が1歳(延長要件を満たす場合は最長2歳)に達するまでの通常の育児休業を、原則2回まで分割してさらに取得することも可能です(育児・介護休業法第5条第2項)。
両制度の主な違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 産後パパ育休 | 通常の育児休業 |
|---|---|---|
| 取得可能期間 | 出生後8週間以内に4週間まで | 原則1歳まで(延長要件により最長2歳まで) |
| 分割取得 | 2回まで | 2回まで(1歳以降の延長時は別途要件あり) |
| 申出期限 | 原則2週間前まで | 原則1か月前まで |
| 休業中の就業 | 労使協定により一部可能 | 原則不可 |
このように、産後パパ育休は「出生直後の慌ただしい時期に、柔軟に、かつ短い予告期間で取得できる休業」として位置づけられており、通常の育児休業と組み合わせることで、より長期間・柔軟に育児に関わることができる制度体系になっています。
4. 「パパ・ママ育休プラス」で育休期間を延長する
夫婦がともに育児休業を取得する場合に利用できる制度として「パパ・ママ育休プラス」があります。両親がともに育児休業を取得する一定の要件を満たすと、原則として子が1歳になるまでの育児休業の対象期間が、子が1歳2か月に達するまでに延長されます(育児・介護休業法第9条の6)。ただし、一人あたりの育児休業取得可能日数の上限(産前産後休業期間等を除き最大1年間)が延びるわけではない点に注意が必要です。
5. パパ育休を経済的に支える給付・免除制度
育児休業中は給与の支払いがない、または減額されるのが一般的であるため、経済的な不安から取得をためらう方も少なくありません。これを補うのが、雇用保険からの給付金と社会保険料の免除です。
5-1 育児休業給付金・出生時育児休業給付金
雇用保険の被保険者が育児休業を取得した場合、一定の要件(休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12か月以上あることなど)を満たせば、育児休業給付金または出生時育児休業給付金を受給できます。
給付率は、休業開始から180日目までは休業開始時賃金の67%相当額、181日目以降は50%相当額です(厚生労働省職業安定局雇用保険課「財政運営(育児休業給付)について」)。産後パパ育休を取得した場合に支給される出生時育児休業給付金についても、支給率は同じく67%であり、この67%の給付を受けた日数は、育児休業給付金における180日のカウントに通算されます。
給付は非課税として扱われるうえ、育休中は社会保険料が免除されるため、休業前の手取り賃金と比較した実質的な給付率はおおむね8割程度になるとされています(同資料)。
5-2 出生後休業支援給付金(2025年4月新設)
2025年(令和7年)4月から、新たに出生後休業支援給付金が創設されました。これは、子の出生後の一定期間内に、被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業(産後パパ育休を含む)を取得した場合に、最大28日間、休業開始時賃金の13%相当額を、育児休業給付金・出生時育児休業給付金に上乗せして支給する制度です(厚生労働省「育児・介護休業法について」)。
これにより、通常の給付率67%に13%が加わり、**手取りベースでおおむね10割相当(給付率としては80%)**になる設計とされています(厚生労働省リーフレット「2025年4月から『出生後休業支援給付金』を創設しました」)。夫婦がともに一定期間の育休を取得することを支給要件としている点が特徴で、共働き世帯における夫婦での育児分担を後押しする制度といえます。
支給要件の詳細(配偶者の育休取得期間、ひとり親家庭における特例の有無等)は個々の事情によって異なるため、実際の受給にあたっては、管轄のハローワークまたは顧問の社会保険労務士に確認することをお勧めします。
5-3 社会保険料の免除
育児休業(産後パパ育休を含む)を取得している期間は、要件を満たせば健康保険・厚生年金保険の保険料が労働者・事業主ともに免除されます。産後パパ育休を利用することで、通常の育児休業とは別に、最大2か月分の保険料免除を受けられるケースもあります。保険料免除の適用には、休業日数や取得月における就業日数などの細かい要件があるため、正確な取扱いは年金事務所または顧問社会保険労務士への確認が必要です。
6. 2025年(令和7年)法改正のポイント
育児・介護休業法は2024年(令和6年)5月に改正され、2025年に段階的に施行されています。パパ育休に関連する主な改正内容は以下のとおりです(厚生労働省「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」)。
6-1 令和7年4月1日施行分
- 出生後休業支援給付金の創設(前述)
- 子の看護休暇の対象拡大(対象となる子の年齢を「小学校3年生修了まで」に拡大するなど)
- 3歳未満の子を養育する労働者を対象とした、テレワークの選択的措置の努力義務化
- 育児休業取得状況の公表義務の対象拡大(常時雇用する労働者数が300人超の事業主に拡大)
6-2 令和7年10月1日施行分
- 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者を対象に、柔軟な働き方を実現するための措置(始業時刻の変更、テレワーク、短時間勤務、保育施設の手配、養育両立支援休暇の付与など5つの選択肢のうち2つ以上)を事業主に講じることの義務化
- 3歳未満の子を養育する労働者への仕事と育児の両立に関する個別の周知・意向確認の義務化
- 妊娠・出産の申出があった際等における、個別の意向聴取と、その意向への配慮の義務化
特に300人超企業に対する育休取得率等の公表義務の拡大は、企業の人事労務担当者にとって実務上の対応が急がれる項目です。自社が対象となるかどうか、また公表内容(育児休業等の取得割合、または取得割合と育児目的休暇の取得割合を合わせたもの等)の算定方法については、厚生労働省の解説資料を確認したうえで準備を進めることが望まれます。
7. 産後パパ育休の取得手続きの流れ
産後パパ育休を取得する際の一般的な流れは以下のとおりです。
- 会社(人事労務担当者)へ、休業開始予定日の原則2週間前までに書面・メール・社内LAN等により申出を行う
- 分割取得を希望する場合は、初回申出時にまとめて申し出る
- 会社は、申出を受けたら育児休業開始予定日・終了予定日等を労働者に通知する
- 休業中に一部就業を予定する場合は、労使協定の範囲内で会社と就業日・時間を調整する
- 出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金の申請は、事業所を管轄するハローワークを通じて行う(会社経由での手続きが一般的)
- 社会保険料免除の手続きは、事業主が年金事務所に届け出る
給付金の申請窓口はハローワーク、社会保険料免除の届出窓口は年金事務所、就業規則の整備・相談窓口は労働基準監督署や都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)となります。制度の詳細な確認や自社の就業規則・労使協定の整備については、社会保険労務士に相談することも有効な選択肢です。
8. 企業側に求められる対応
パパ育休制度を実効性のあるものにするためには、労働者本人の申出だけでなく、企業側の体制整備が欠かせません。育児・介護休業法では、事業主に対して以下のような義務が課されています。
- 育児休業に関する研修の実施、相談体制の整備等、雇用環境の整備(育児・介護休業法第22条)
- 本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があった労働者に対する、制度の個別周知および休業取得意向の確認(同法第21条)
- 就業規則等への育児休業・産後パパ育休に関する規定の整備
これらの義務を怠った場合、行政指導の対象となる可能性があるほか、制度が形骸化し、男性従業員の育休取得が進まない要因にもなりかねません。人材の採用・定着の観点からも、制度の周知と取得しやすい職場風土づくりは、企業にとって重要な経営課題の一つといえるでしょう。
9. データで見る男性の育休取得の現状と課題
前述のとおり、令和6年度雇用均等基本調査では、男性の育児休業取得率は40.5%と過去最高を更新しました。一方で、女性の取得率は86.6%であり、男女差はなお大きい状況です(厚生労働省「令和6年度育児休業取得率の調査結果(雇用均等基本調査)のポイントについて」)。
また、取得期間についても課題が指摘されています。同調査によれば、女性は9割以上が6か月以上の育児休業を取得している一方、男性は取得期間が短い傾向にあり、取得率の向上とあわせて、取得期間の充実や職場復帰後の両立支援が今後の課題とされています。
政府は「こども未来戦略方針」(令和5年6月閣議決定)において、男性の育児休業取得率について2025年度に50%、2030年度に85%という目標を掲げています。産後パパ育休や出生後休業支援給付金の創設は、この目標達成に向けた経済的・制度的な後押しとして位置づけられています。
10. パパ育休取得にあたっての注意点
最後に、パパ育休の取得を検討する際に押さえておきたいポイントを整理します。
- 申出のタイミング:産後パパ育休は原則2週間前まで、通常の育児休業は原則1か月前までに申出が必要です。出産予定日から逆算して、早めに社内で相談しておくと安心です。
- 分割取得の申出方法:産後パパ育休を2回に分けて取得したい場合は、最初の申出時にまとめて意思表示をする必要があります。
- 休業中の就業:労使協定がある場合に限り、上限の範囲内で一部就業が可能です。就業を希望する場合は、事前に会社と条件を確認しましょう。
- 給付金・保険料免除の要件:雇用保険の被保険者期間などの要件を満たしているか、事前にハローワークや社会保険労務士に確認しておくと、手続きがスムーズです。
- 配偶者の状況との連動:出生後休業支援給付金は夫婦それぞれの育休取得日数が要件に関わるため、夫婦間でのスケジュール調整が重要になります。
制度の詳細や自社での取扱いについて不明な点がある場合は、最寄りの都道府県労働局雇用環境・均等部(室)、ハローワーク、または社会保険労務士にご相談ください。
まとめ
産後パパ育休(出生時育児休業)は、子の出生後8週間以内に最大4週間、2回に分割して取得できる、通常の育児休業とは別枠の休業制度です。2025年4月に創設された出生後休業支援給付金や、社会保険料免除の仕組みと組み合わせることで、経済的な負担を抑えながら育児に参加しやすい環境が整いつつあります。あわせて、2025年10月までに段階的に施行される改正育児・介護休業法により、企業に求められる対応も拡充されています。
制度は年々改正が重ねられており、要件や給付額も変わり得るため、実際に取得を検討する際は、必ず厚生労働省の最新の公表資料や、勤務先の就業規則・労使協定、あるいは社会保険労務士等の専門家の助言をもとに、ご自身の状況に即した確認を行うことをお勧めします。
参考文献・出典
本記事は、以下の法令および行政機関の公表資料に基づいて作成しています。
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)第5条〜第9条の7、第21条、第22条:e-Gov法令検索
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
- 厚生労働省「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001407488.pdf
- 厚生労働省職業安定局雇用保険課「財政運営(育児休業給付)について」(令和7年10月28日 職業安定分科会雇用保険部会資料):https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001586568.pdf
- 厚生労働省 雇用環境・均等局職業生活両立課「令和6年度育児休業取得率の調査結果(雇用均等基本調査)のポイントについて」:https://tomoiku.mhlw.go.jp/assets/pdf/activity/document_R6.pdf
※本記事は一般的な制度解説を目的としたものであり、個別の事案における適用可否や具体的な手続きについては、必ず最新の法令・行政発表をご確認いただくか、顧問社会保険労務士等の専門家にご相談ください。また、本記事では税務に関する内容は取り扱っておりませんので、税務上の取扱いについては税理士等にご確認ください。
