【社会保険労務士が解説】採用証明書とは?提出理由・書き方・記入例から不正受給のリスクまで徹底解説

「ハローワークから採用証明書を提出するように言われたけれど、何のための書類かわからない」「会社側として、どこまで正確に書けばよいのか不安」——採用証明書は、雇用保険(失業等給付)の手続きにおいて非常に重要な役割を持つ書類でありながら、その法的な位置づけまで理解している方は多くありません。

本記事では、社会保険労務士の立場から、採用証明書の意味・提出が必要になる場面・書き方・提出方法に加え、根拠となる法令(雇用保険法・雇用保険法施行規則)や厚生労働省の公表資料に基づいて、公平かつ正確に解説します。求職者の方だけでなく、証明欄への記入を求められる事業主の方にもご参考いただける内容です。

なお、本記事は税務上の取扱いには触れておりません。税に関するご相談は税理士等の専門家にご確認ください。


目次

1. 採用証明書とは何か

採用証明書とは、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)を受給中の方が新たに就職(採用)した事実を、就職先の事業主が証明するための書類です。ハローワーク(公共職業安定所)が失業等給付の支給事務を適正に行うために用いる様式であり、東京労働局(東京ハローワーク)をはじめ各都道府県労働局が「雇用保険の給付を受けている皆様へ」提出書類の一つとして案内しています。

採用証明書には、大きく分けて次の2つの役割があります。

  • 受給資格者(求職者)が就職したことをハローワークに届け出て、基本手当の支給を適正に停止するための証拠書類としての役割
  • 早期に再就職した場合に支給される「再就職手当」の支給要件を確認するための証明書類としての役割

青森労働局が公開している採用証明書の様式解説では、この書類が「日にハローワーク等へ提出する証明書」であり、事業主は締結した雇用契約書や雇入れ通知書、労働者名簿、出勤簿等の関係書類を確認したうえで、正確に記入・押印してご本人に速やかに交付するよう求められています。単なる事務書類ではなく、給付の適正化という公的な目的をもった証明書であることがポイントです。

2. なぜ採用証明書の提出が必要なのか

2-1. 基本手当の受給を止めるため

雇用保険の基本手当は、雇用保険法上「失業」の状態、すなわち離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることを前提に支給されるものです。就職が決まれば、この「失業の状態」ではなくなるため、受給を継続することはできません。採用証明書は、就職の事実をハローワークに明確に示し、基本手当の支給を適正に停止するために欠かせない書類です。

2-2. 再就職手当を申請するため

再就職手当は、雇用保険受給資格者が基本手当の受給資格決定を受けたのち、早期に安定した職業に就いた場合等に支給される給付で、より早期の再就職を促進することを目的とした制度です。この再就職手当の支給を受けるためには、採用証明書のほか「再就職手当支給申請書」「雇用保険受給資格者証」をハローワークへ提出する必要があります。採用証明書は、この申請の前提となる「実際に就職した事実」「雇入年月日」「労働条件」等を証明する重要な資料として使われます。

3. 採用証明書の提出期限と提出方法

採用証明書は、原則として採用が決定してから入社日(雇入れの前日まで)に提出することが案内されています。また、再就職手当の申請との関係では、就職日(採用日)の翌日から起算して1か月以内に、採用証明書・再就職手当支給申請書・雇用保険受給資格者証の3点をハローワークへ提出することが必要とされています。

提出方法は、本人がハローワークの窓口に持参するほか、平日の日中に来所が難しい場合には郵送での提出も可能とされています。なお、失業保険(基本手当)を受給していなかった方については、そもそも採用証明書の提出自体が不要です。ご自身が受給資格者に該当するかどうかは、お持ちの「雇用保険受給資格者証」の有無で確認できます。

4. 採用証明書の記載内容と書き方

採用証明書の様式は自治体(労働局)によって多少の違いがありますが、共通して次のような項目が設けられています。

4-1. 受給資格者(本人)が記載する項目

  • 支給番号:雇用保険受給資格者証に記載された番号で、本人しか把握できない情報のため、本人が記入する必要があります
  • 氏名・生年月日・住所・電話番号

4-2. 事業主が記載する項目

  • 雇入年月日(雇用契約上の在籍初日)
  • 雇用形態、雇用期間の定めの有無、1週間の所定労働時間
  • 採用経路(ハローワークの紹介、職業紹介事業者の紹介、知人紹介、求人広告等の区分)
  • 事業所の所在地・名称・代表者氏名・電話番号・雇用保険適用事業所番号

雇用保険適用事業所番号は、ハローワークから交付される「雇用保険適用事業所設置届 事業主控」や「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」に記載されているため、これらの控えを保管しておくと記入がスムーズです。

4-3. 押印に関する留意点

行政手続きにおける押印の見直しに伴い、多くの様式で事業主の押印は必須ではなくなっています。もっとも、ハローワークや様式によって取扱いが異なる場合もあるため、実際に使用する様式の指示に従って記入することが確実です。

4-4. 「雇入年月日」の考え方

雇入年月日は、内定日や単なる初出勤日ではなく、雇用契約上の効力発生日(雇用契約の開始日)を記載することが基本です。所定労働時間が週20時間以上であることなど、雇用保険の被保険者資格取得の要件と整合しているかどうかも、証明担当者が確認すべきポイントとして案内されています。休日や暦の関係で初出勤日と契約開始日がずれるケースもあるため、雇用契約書・労働条件通知書の記載と齟齬がないよう注意が必要です。

5. 再就職手当の支給要件(採用証明書と密接に関わる制度)

採用証明書の記載内容は、そのまま再就職手当の支給可否の判断材料になります。厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所が公表している案内資料によれば、再就職手当の支給を受けるには、次のすべての要件を満たす必要があるとされています。

  1. 受給手続き後、7日間の待期期間満了後に就職、又は事業を開始したこと
  2. 就職日の前日までの失業の認定を受けた上で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
  3. 離職前の事業主に再び就職したものでないこと。また、離職前の事業主と資本・資金・人事・取引面で密接な関わり合いがない事業主に就職したこと
  4. 給付制限がある方は、待期期間満了後1か月の期間内はハローワーク又は職業紹介事業者の紹介によって就職したものであること
  5. 1年を超えて勤務することが確実であること
  6. 原則として雇用保険の被保険者になっていること
  7. 過去3年以内の就職について、再就職手当又は常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと
  8. 受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと

再就職手当の額は、就職前日までの基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上残っている場合は支給残日数の70%、3分の1以上残っている場合は60%を、基本手当日額に乗じて算定されます。早期に再就職するほど支給率が高くなる設計であり、採用証明書に記載される雇入年月日の正確性が、この給付率の算定に直結する点は特に留意すべきでしょう。

なお、再就職手当に係る基本手当日額には上限額が設けられており、毎年8月1日に「毎月勤労統計」の平均給与額に基づき改定されます。具体的な上限額は改定時期によって変動するため、最新の額はハローワークまたは厚生労働省の公表資料でご確認ください。

再就職手当を受給した後、再就職先に6か月以上雇用され、再就職先での賃金が離職前の賃金よりも低い場合には、別途「就業促進定着手当」の対象となる場合もあります。

6. 採用経路(ハローワーク紹介か否か)が問われる理由

再就職手当の要件④にあるとおり、離職理由によって基本手当の給付制限がかかっている方(自己都合退職等)については、待期期間満了後1か月間は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であることが必要です。この1か月間を過ぎれば、知人の紹介や求人広告への応募等、就職経路を問わず対象となります。

採用証明書の「採用経路」欄は、この要件を確認するために設けられている項目です。事業主は、実際の採用に至った経路(ハローワークの紹介、職業紹介事業者の紹介、その他)を、社内の採用記録に基づき正確に記載する必要があります。

7. 虚偽記載・不正受給に関する法的リスク

採用証明書は、単なる社内書類ではなく、公的給付の適正な支給を左右する証明書類です。そのため、記載内容に誤りや虚偽があった場合には、法律上の重い責任が生じる可能性があります。

雇用保険法第10条の4第1項では、偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がいる場合、政府はその者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部の返還を命ずることができるほか、不正受給額の2倍に相当する額以下の金額の納付を命ずることができると定められています。

さらに同条第2項では、事業主が偽りの届出、報告又は証明をしたためにその失業等給付が支給されたものであるときは、政府はその事業主に対し、失業等給付の支給を受けた者と連帯して、返還又は納付を命ぜられた金額の納付を命ずることができるとされています。青森労働局の採用証明書様式においても、「万一、雇用年月日等、不正確な内容を証明し、それに基づき本人が雇用保険を受給した場合、事実に相違し、それが不正受給につながる場合にあっては、事業主証明の責任を問われる場合があり」、雇用保険法第10条の4第2項により失業等給付を受けた者と連帯して返還及び納付を求められる場合がある旨が明記されています。

つまり、採用証明書に事実と異なる雇入年月日や採用経路を記載してしまうと、たとえ悪意がなくても、本人だけでなく証明を行った事業主自身が連帯して返還責任を負うリスクがあるということです。社会保険労務士としては、採用証明書の作成にあたっては、雇用契約書・労働条件通知書・出勤簿等の一次資料と整合性を取ったうえで、正確に記載することを強くお勧めします。

8. 事業主側が採用証明書に対応する際の実務ポイント

事業主の立場から見た採用証明書対応では、次の点を押さえておくとスムーズです。

  • 提出を求められたら、雇用契約書・労働条件通知書に基づき、雇入年月日・所定労働時間・雇用形態を正確に転記する
  • 採用経路は、応募媒体や紹介の実態と齟齬がないよう、採用記録(求人票・紹介状等)を確認して記載する
  • 記入後は控え(写し)を保管し、後日の照会に備える
  • 記載内容に不明点がある場合は、自己判断で推測記入せず、所轄のハローワークに確認する

複数の候補者に対応する場合は、候補者情報・採用経路・雇用条件・関連書類を一覧で管理しておくと、記載の齟齬や差し戻しを防ぎやすくなります。

9. まとめ:採用証明書は「小さいけれど重い」書類

採用証明書は、A4一枚程度の書式でありながら、雇用保険の基本手当の停止や再就職手当の支給可否を左右する、行政手続き上重要な証明書です。求職者にとっては受給していた失業等給付の精算に直結し、事業主にとっては証明内容について雇用保険法上の連帯責任を負う可能性がある書類でもあります。

記載にあたっては、

  • 雇用契約書・労働条件通知書等の一次資料との整合性を確認すること
  • 提出期限(採用決定日から入社日前日まで、再就職手当関連は就職日翌日から1か月以内)を守ること
  • 不明点は自己判断せず、所轄のハローワークに確認すること

の3点を徹底することが、求職者・事業主双方にとってのトラブル防止につながります。手続きに不安がある場合は、社会保険労務士など専門家へのご相談もご検討ください。


出典・参考資料

  1. 東京ハローワーク「雇用保険の給付を受けている皆様へ(申請書・届出書)」東京労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/kakushu_jouhou/sinsei_todokede/kyufu.html
  2. 青森労働局「採用(内定)証明書」様式・記載要領 https://jsite.mhlw.go.jp/aomori-roudoukyoku/content/contents/saiyosyomeisyo.pdf
  3. 厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)「再就職手当のご案内」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/saishuushokuteate.pdf
  4. ハローワークインターネットサービス(各種案内・様式ダウンロードページ) https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
  5. 東京ハローワーク「再就職手当関係書類の記入方法(事業主・証明担当者用)」東京労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/002225440.pdf
  6. 前掲5と同じ
  7. 雇用保険法(昭和49年法律第116号)第10条の4第1項・第2項 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116

本記事は執筆時点で公表されている法令・行政資料に基づき作成しています。制度内容や給付額の上限等は改定される場合がありますので、最新の情報は必ずハローワークまたは厚生労働省の公式情報でご確認ください。また、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての助言(法律相談・社会保険労務士業務としての具体的判断)に代わるものではありません。個別の手続きについては、所轄のハローワークまたは顧問社会保険労務士等の専門家にご相談ください。なお、本記事では税務に関する内容は取り扱っておりません。

目次