【社会保険労務士が解説】ハローワークの「採用証明書」とは?提出理由・書き方・提出期限を徹底解説

失業等給付(基本手当)を受給しながら求職活動をしていた方が、無事に再就職先を決めたとき、ハローワークから「採用証明書(採用(内定)証明書)を提出してください」と案内されることがあります。

初めて目にする書類のため、「誰が書くのか」「いつまでに出せばよいのか」「書き方を間違えたらどうなるのか」といった不安を持つ方は少なくありません。

本記事では、社会保険労務士の立場から、雇用保険法および同法施行規則、厚生労働省・都道府県労働局が公表している資料に基づき、採用証明書の役割と実務上の注意点を整理します。制度の解釈にあたっては、個別の事情により取扱いが異なる場合がありますので、最終的な判断や手続きの詳細は、必ずご自身の管轄のハローワークにご確認ください。

なお、本記事は雇用保険制度に関する解説であり、税務(所得税・住民税等の取扱い)については取り扱っておりません。税務上の取扱いについては税理士等の専門家にご相談ください。


目次

1. 採用証明書とは何か

採用証明書(正式には「採用(内定)証明書」等の名称で、様式は労働局ごとに若干異なります)は、雇用保険の基本手当の受給手続き中の方が就職した場合に、就職先の事業主が雇用(予定)年月日や労働条件等を証明し、ハローワーク(公共職業安定所)または運輸局に提出する書類です。北海道労働局が公開している様式の説明書きには、次のように記載されています。

この「採用(内定)証明書」は、雇用保険の基本手当の受給手続きをされている方が就職された場合に、ハローワーク又は運輸(支)局に提出していただくものです。この証明書は、雇用契約書となるものではなく、採用予定の年月日または採用年月日を証明していただくことにより、本人に対して、いつまで雇用保険の基本手当の支給をすればよいかを確認するためのものです(北海道労働局公表様式より要旨)。

出典:北海道労働局「採用(内定)証明書」 https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-hellowork/content/contents/002029364.pdf

つまり採用証明書は、労働契約そのものを成立させる書類ではなく、ハローワークが基本手当の支給を適正に打ち切るため、また再就職手当等の給付要件を確認するために、就職の事実を客観的に確認する行政手続上の証明書類という位置づけです。

様式は全国共通のひな形をベースに、各都道府県労働局のウェブサイトや、受給資格決定時に交付される「雇用保険受給資格者のしおり」に同封されている用紙を使用します。様式が労働局によって多少異なる場合があるため、可能な限り、自分の受給資格を管轄するハローワークが指定する様式を使用することをおすすめします。


2. なぜ採用証明書の提出が必要なのか

採用証明書の提出が求められる理由は、大きく分けて2つあります。

2-1. 基本手当の受給を適正に終了させるため

雇用保険の基本手当は、離職者が「失業の状態」にあることを前提に支給される給付です。雇用保険法第4条第3項では、失業について「被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること」と定義されています(雇用保険法第4条第3項)。

出典:e-Gov法令検索「雇用保険法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116

したがって、就職が決まった時点でこの「失業の状態」ではなくなるため、基本手当の支給は終了します。ハローワークは、失業の認定(雇用保険法第15条)の際に、就職の事実と就職日を正確に把握する必要があり、その確認資料の一つとして採用証明書が用いられます。

2-2. 再就職手当の支給申請に必要なため

基本手当の支給日数を一定以上残して早期に安定した職業に就いた場合、「再就職手当」(雇用保険法上は就業促進手当の一種)が支給されることがあります。この再就職手当の支給要件や手続きは、雇用保険法第56条の3および同法施行規則第82条以下に規定されています。

厚生労働省が公表している「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」では、再就職手当の支給要件について、次のように整理されています。

雇用保険(基本手当)の所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して、安定した職業に就き、支給要件を全て満たした場合に、再就職手当が支給されます。

出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html

同資料によれば、再就職手当の主な支給要件は次のとおりです。

  1. 就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
  2. 1年を超えて勤務することが確実であると認められること
  3. 待期満了後の就職であること
  4. 離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間についてはハローワーク等の紹介により就職したものであること
  5. 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと(密接な関係にある事業主を含む)
  6. 就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと
  7. 受給資格決定前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
  8. 原則として、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用であること

(出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」上記URLより)

この支給残日数の割合に応じて、再就職手当の給付率(支給残日数の3分の2以上残っている場合は70%、3分の1以上3分の2未満の場合は60%)が定まる仕組みは、雇用保険法第56条の3第3項に規定されています。採用証明書は、この判定の前提となる「就職日」を確定させるための重要な証拠資料となります。

なお、再就職手当の支給申請そのものは「再就職手当支給申請書」(雇用保険法施行規則様式第29号の2)によって行い、採用証明書は主にその添付書類、あるいは失業認定の場面で用いられる書類です。両者の提出時期や様式は労働局の運用によって異なる場合があるため、実際の手続きの流れは必ず窓口で確認してください。


3. 採用証明書は誰が記入するのか

採用証明書には、大きく分けて「本人記入欄」と「事業主記入欄」があります。

3-1. 本人が記入する項目

多くの様式では、氏名・フリガナ・生年月日・住所に加え、**「支給番号」**を本人が記入することになっています。支給番号は、雇用保険受給資格者証に記載されている番号で、就職先の企業側では把握できない情報のため、本人が記入する必要があります。

3-2. 事業主が記入・証明する項目

採用(雇入れ)年月日、週の所定労働時間、賃金形態、採用経路などは、就職先の事業主が、雇用契約書や雇入通知書、労働者名簿、出勤簿、タイムカードなどの関係書類を確認したうえで記入・証明します。東京ハローワークが公表している事業主向けの記入マニュアルでも、次のように説明されています。

採用証明書は、採用日や週の所定労働時間などの労働条件を証明する書類です。

出典:東京ハローワーク「再就職手当関係書類の記入方法(事業主・証明担当者用)」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/002225440.pdf

事業主にとって重要なのは、この証明が単なる事務作業ではなく、法的な責任を伴う証明行為であるという点です。高知労働局公表の様式の注意書きには、次のような記載があります。

万一、雇用年月日を事実に相違して記載し、それが不正受給につながる場合は、雇用保険法第10条の4第2項により失業等給付を受けた者と連帯して返還及び納付していただくことがあります。

出典:高知労働局「採用証明書」 https://jsite.mhlw.go.jp/kochi-hellowork/content/contents/saiyo_syomei.pdf

雇用保険法第10条の4第2項は、偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者だけでなく、その行為に加担した事業主等に対しても、受給者と連帯して返還等を命ずることができる旨を定めています(雇用保険法第10条の4)。事業主の証明担当者としては、実際の雇入れ日と齟齬のない、出勤簿等の客観的な記録に基づいた正確な記載が不可欠です。

社会保険労務士としての立場から申し添えると、採用証明書の記載内容に関する事業主の責任は決して軽いものではありません。特に「雇入れ日」については、雇用保険制度上、週の所定労働時間が一定時間以上に及ぶ実際の稼働開始日を基準とする考え方が示されており、試用期間や研修期間も「在籍」に含める取扱いがなされる場合があります。記載に迷う場合は、自己判断で進めず、必ず管轄のハローワークに確認したうえで証明することをおすすめします。


4. 採用証明書の入手方法

採用証明書は、次のいずれかの方法で入手できます。

  • 受給資格決定時にハローワークから交付される「雇用保険受給資格者のしおり」の巻末に同封されている
  • 各都道府県労働局のウェブサイトから様式(PDF)をダウンロードする
  • 紛失した場合は、管轄のハローワークの窓口で再交付を受ける

たとえば大阪労働局のウェブサイムでは、雇用保険給付関係の各種証明書の一つとして採用証明書のPDFが公開されており、「使用される際は、必ず2ページを両面印刷してください」といった注意書きが付されています。

出典:大阪労働局「雇用保険給付関係各種証明書等」 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/youshikishu/koyou_hoken/yosiki4_2.html

様式は労働局ごとに微妙に異なる場合があるため、可能であれば、しおりに同封されているものか、自分の管轄労働局が公表している最新版を使用するのが確実です。


5. 提出先・提出期限・提出方法

5-1. 提出先

原則として、雇用保険の受給資格を管轄するハローワーク(公共職業安定所)です。船員等の場合は運輸局が窓口となることもあります。

5-2. 提出期限の考え方

採用証明書自体は、就職の事実確認のために失業認定の際などに提出を求められるほか、再就職手当の支給申請と合わせて提出するケースもあります。再就職手当の支給申請書については、雇用保険法施行規則第82条の5において、次のように定められています。

受給資格者は、(中略)安定した職業に就いた日の翌日から起算して1箇月以内に、(中略)再就職手当支給申請書(様式第29号の2)を管轄公共職業安定所の長に提出しなければならない。

出典:雇用保険法施行規則第82条の5(e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」参照) https://laws.e-gov.go.jp/law/350M50002000003/

つまり、再就職手当を申請する場合は、就職日の翌日から起算して1か月以内に、採用証明書を含む必要書類とあわせて申請を行う必要があります。この期間を過ぎると再就職手当の支給を受けられなくなるおそれがあるため、早めの準備が重要です。

5-3. 郵送での提出について

平日の日中にハローワークへ出向く時間が取れない方向けに、必要書類を郵送で提出できる運用を案内している労働局もあります。ただし、郵送の可否や必要な添付書類(本人確認書類の写し等)は労働局・案件によって異なりますので、事前に管轄のハローワークへ電話等で確認することをおすすめします。

なお、雇用保険の各種手続きにおいては、個人番号(マイナンバー)カードの提示等が求められる場合があります。前述の雇用保険法施行規則第82条の5にも、「受給資格通知の交付を受けた場合にあつては、(中略)個人番号カードを提示して」申請書を提出する旨の定めがあり、対象となる方は持参・提示書類にも注意が必要です。


6. 採用証明書と再就職手当・就業促進定着手当の関係

採用証明書によって確認された「就職日」は、再就職手当の給付率だけでなく、その後の「就業促進定着手当」の対象期間の算定にも影響します。就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受けた方が、再就職先での賃金が離職前の賃金よりも低下した場合に、一定の要件のもとで追加的に支給される手当であり、雇用保険法施行規則第83条の4等に規定があります。制度の詳細な支給要件・計算方法は個別性が高いため、対象となりうる方は管轄のハローワークで直接ご確認ください。

いずれの手当も、採用証明書に記載された雇入れ年月日や労働条件が起点となって支給の可否・金額が判断される仕組みになっています。そのため、就職先の担当者に採用証明書の記入を依頼する際は、余裕をもったスケジュールで依頼し、記載内容に誤りがないか、本人としても支給番号等の記載漏れがないかを確認したうえで提出することが望ましいでしょう。


7. 虚偽記載・不正受給に関する注意

採用証明書は公的給付の支給可否を左右する重要書類であるため、事実と異なる内容を記載することは重大な問題につながります。前述のとおり、雇用保険法第10条の4第2項は、偽りその他不正の行為によって失業等給付を受けた者だけでなく、事業主等がその不正受給に加担した場合には、受給者と連帯して返還・納付を命じられる可能性があることを定めています。

また、受給者本人についても、雇用保険法上、偽りの申告等によって不正に給付を受けた場合には、給付の全部または一部が支給されないこととなるほか、不正受給額の返還に加え、追加で納付を命じられる場合があります。ハローワークの各種申請書の様式にも、この点についての注意書きが明記されています。

社会保険労務士としては、採用証明書はあくまで「事実をありのままに証明する書類」であるという原則を、事業主・労働者双方に強くお伝えしたいと思います。仮に記載内容に誤りがあった場合は、隠すのではなく速やかにハローワークへ相談し、訂正の手続きを取ることが、結果的に双方にとって最も安全な対応です。


8. よくある質問(Q&A)

Q1. 採用証明書は内定段階でも発行してもらえますか?

様式の名称が「採用(内定)証明書」となっている地域もあるとおり、内定段階での証明にも対応した運用がなされている場合があります。ただし、実際に発行可能な時期や取扱いは事業主の判断や労働局の運用によって異なりますので、まずは就職先の担当者とハローワークの双方に確認してください。

Q2. 採用証明書の様式は全国共通ですか?

基本的な記載項目(支給番号、氏名、雇入れ年月日、労働条件等)は共通していますが、様式のレイアウトや細かい注記は労働局によって異なる場合があります。自分の受給資格を管轄するハローワークの様式を使用するのが確実です。

Q3. 提出が遅れた場合、再就職手当はもらえませんか?

再就職手当の支給申請書は、雇用保険法施行規則第82条の5により、就職日の翌日から起算して1か月以内に提出することが求められています。この期間を徒過すると、原則として申請自体が受け付けられなくなるおそれがあります。就職が決まったら、できるだけ早く採用証明書の準備に着手することをおすすめします。

Q4. 採用証明書を書いてもらえない場合はどうすればよいですか?

就職先が多忙で対応が遅れる、あるいは書類の趣旨を理解していないといったケースもあり得ます。その場合は、本人からハローワークへ状況を説明し、指示を仰ぐことが望ましい対応です。前述のとおり事業主には証明にあたっての法的な責任が生じるため、企業の労務担当者側も、出勤簿等の記録に基づき慎重に記入する必要があります。


9. まとめ

採用証明書は、雇用保険の基本手当を受給しながら求職活動を行っていた方が、就職の事実と就職日をハローワークに証明するための書類であり、基本手当の適正な支給終了と、再就職手当等の給付要件確認のために用いられます。

  • 採用証明書は、雇用契約書に代わるものではなく、雇用保険の給付を適正に行うための証明書類である
  • 本人記入欄(支給番号等)と事業主記入欄(雇入れ年月日・労働条件等)に分かれている
  • 再就職手当の申請には、就職日の翌日から起算して1か月以内という期限がある(雇用保険法施行規則第82条の5)
  • 記載内容に誤りがあり不正受給につながった場合、事業主にも連帯返還等の責任が生じ得る(雇用保険法第10条の4第2項)

制度の詳細な運用や個別の判断は、受給者の状況やお住まいの地域によって異なる場合があります。本記事の内容は一般的な解説であり、個別のケースにおける最終的な取扱いについては、必ず管轄のハローワークまたは社会保険労務士等の専門家にご相談ください。


参考文献・出典一覧

  1. 厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html
  2. 北海道労働局「採用(内定)証明書」 https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-hellowork/content/contents/002029364.pdf
  3. 高知労働局「採用証明書」 https://jsite.mhlw.go.jp/kochi-hellowork/content/contents/saiyo_syomei.pdf
  4. 東京ハローワーク「再就職手当関係書類の記入方法(事業主・証明担当者用)」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/002225440.pdf
  5. 大阪労働局「雇用保険給付関係各種証明書等」 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/youshikishu/koyou_hoken/yosiki4_2.html
  6. 埼玉労働局「雇用保険の給付(失業等給付)を受けている皆様へ」 https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/youshikishu/antei/koyouhoken.html
  7. e-Gov法令検索「雇用保険法」(昭和49年法律第116号) https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
  8. e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」(昭和50年労働省令第3号) https://laws.e-gov.go.jp/law/350M50002000003/

本記事は、上記の法令・行政資料をもとに一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別具体的な事案への助言(法律相談・社会保険労務士業務としての個別コンサルティング)を行うものではありません。実際の手続きにあたっては、必ず管轄のハローワークにご確認ください。また、本記事は雇用保険制度に関する解説にとどまり、税務上の取扱いには言及していません。税務に関するご質問は税理士等にご相談ください。

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