「パパ育休14日以上」で何が変わる?社会保険料免除と給付金10割相当のしくみを社労士が解説

「パパ育休 14日以上」と検索してこの記事にたどり着いた方の多くは、次のどちらか、あるいは両方に関心をお持ちではないでしょうか。

  • 育休を取得すると社会保険料が免除されると聞いたが、何日休めば免除になるのか
  • 育休中の手取りが「ほぼ10割」になるという話を聞いたが、14日という数字が関係しているらしい

結論からお伝えすると、「パパ育休の14日以上」という条件は、性質の異なる2つの制度に登場します。ひとつは社会保険料免除の要件、もうひとつは出生後休業支援給付金(手取り10割相当を実現する給付金)の要件です。この2つを混同してしまうと、「思っていたより保険料が免除されなかった」「給付金の申請ができなかった」といったトラブルにつながりかねません。

本記事では、社会保険労務士の立場から、厚生労働省・日本年金機構が公表している資料や、育児・介護休業法の条文に基づき、この2つの「14日以上」ルールを整理して解説します。特定の制度利用を推奨する内容ではなく、制度を正しく理解していただくための客観的な情報提供を目的としています。実際の手続きにあたっては、必ず勤務先の人事労務担当者や、事業所を管轄する年金事務所・ハローワークにご確認ください。

目次

1. そもそも「産後パパ育休(出生時育児休業)」とは

「パパ育休」という通称で呼ばれることが多いのが、正式名称「出生時育児休業」です。これは令和4年(2022年)10月1日に施行された改正育児・介護休業法により創設された制度で、厚生労働省は「産後パパ育休」という愛称を用いて周知を行っています。

厚生労働省の育児休業制度特設サイトでは、この制度について次のように説明されています。産後パパ育休とは、子の出生後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休業で、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度です。男性の育児休業取得促進のため、取得ニーズが高い子の出生直後の時期(子の出生後8週間以内)に、これまでよりも柔軟で取得しやすい休業として設けられました。

1-1. 取得可能日数と回数

  • 取得できる期間:子の出生後8週間以内に、通算して4週間(28日)まで
  • 分割取得:最大2回まで分割して取得可能
  • 通常の育児休業(1歳まで、原則1回)とは別枠で取得できるため、産後パパ育休と通常の育休を組み合わせることも可能です

1-2. 申出期限

原則として、休業の2週間前までに申し出る必要があります。なお、事業主が雇用環境の整備等について法定を上回る取り組みを労使協定で定めている場合は、申出期限を1か月前までとすることができるとされています。

1-3. 休業中の就業

産後パパ育休は、原則として就業しないことが前提の休業ですが、労使協定を締結している事業所に限り、労働者が合意した範囲内で休業中に就業することが認められています。ただし、この「就業した日」は、後述する社会保険料免除や給付金の「14日」のカウントからは除外される点に注意が必要です。

2. 「14日以上」が登場する2つの場面

ここからが本題です。「パパ育休 14日以上」というキーワードで検索される背景には、主に次の2つの制度が関係しています。それぞれ管轄も根拠法令も異なるため、混同しないよう整理していきます。

制度根拠管轄「14日」の意味
社会保険料の免除健康保険法・厚生年金保険法等日本年金機構(年金事務所)同一月内の育休日数が14日以上あれば、その月の保険料を免除
出生後休業支援給付金雇用保険法ハローワーク両親(原則)が通算14日以上の育休を取得すれば、給付率が上乗せされる

3. 社会保険料免除における「同一月内14日以上」ルール

3-1. 原則ルール(月末在籍要件)

育児休業等の期間中は、事業主が申出をすることで、被保険者・事業主双方の健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。この免除の原則的な範囲について、社会保険労務士向けの解説記事では、月額保険料の免除の原則は、育児休業等を開始した日の属する月から終了する日の翌日が属する月の前月までと説明されています。社会保険は月単位で考えるため、月の末日に育児休業しているかどうかで、その月の保険料が免除されるかどうかが決まります。

つまり、原則ルールだけを見ると、「月末に育休を取っていない月」は、たとえその月にまとまった日数の育休を取っていても保険料は免除されない、ということになります。産後パパ育休のように短期間・分割型で取得するケースでは、月末をまたがない休業も多く発生するため、このままでは短期の育休が保険料免除の恩恵を受けにくいという課題がありました。

3-2. 令和4年10月改正で新設された「14日以上」要件

そこで、産後パパ育休の創設と同時に、社会保険料免除の要件が見直されました。日本年金機構が事業主向けに公表しているリーフレットのタイトルは「育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます。令和4年10月から 事業主の皆さまへ 同月内に14日以上育児休業等を取得した場合も免除されます」というものです。

日本年金機構の解説資料によれば、育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直しにより、令和4年10月から、育児休業等を開始した日の属する月内に、14日以上の育児休業等を取得した場合に当該月の月額保険料が免除されることとなりました。

具体的な計算例を挙げると、社労士向け実務資料では次のように整理されています。短期の育児休業等の取得に対応して、同月内に14日以上の育児休業等を取得した場合に月額保険料が免除される一方、連続した育児休業等を取得している場合には、二つの育児休業等を一つの育児休業等とみなして保険料免除の規定を適用</cite>することとされています。

3-3. 「14日」のカウント方法(土日・就業日の扱い)

実務上、特に注意したいのが「14日」の数え方です。

  • 暦日でカウント:社会保険料免除の実務解説では、育児休業等を開始した日の属する月内に、14日以上の育児休業等を取得すると、その月の月額保険料が免除されます(土日等の休日も期間に含む)とされており、土曜・日曜・祝日といった本来の休日も休業日数に含めてカウントします。
  • 休業中に就業した日は除外:労使協定に基づき休業中に就業した場合、その就業日数は14日のカウントから差し引く必要があります。社会保険労務士事務所の解説では、就業した日数の算定方法について、休業期間中に就業した総時間数 ÷ 1日あたり所定労働時間数(分未満切捨て)= 就業した日数として計算し、この日数を休業日数から差し引いて、14日あるか否かを判定しますと説明されています。例として、総就業時間が30時間、1日の所定労働時間が8時間の場合、30時間÷8時間=3日(3.75日:1未満切捨て)を休業日数から差し引くという計算方法が示されています。

3-4. 賞与にかかる保険料は別ルール(1か月超要件)

給与(月額)保険料と、賞与にかかる保険料とでは、免除の要件が異なります。賞与保険料の免除について、給与計算ソフト提供会社の解説では、賞与に関する保険料免除は、賞与支給月の末日を含む連続1ヶ月超えの育児休業取得が条件とされています。つまり、賞与月については「14日以上」ではなく「1か月を超える連続した育休取得」が条件となるため、短期間の産後パパ育休だけでは賞与にかかる保険料は免除されないケースが多い点に注意が必要です。

3-5. 開始月以外の月には14日ルールは適用されない

もう一点、誤解しやすいポイントとして、14日要件はあくまで「育休を開始した月」に適用されるルールであるという点が挙げられます。人事担当者向けの解説記事では、具体例として、育休開始月が7月で、8月にも14日間の休業期間があるケースについて、社会保険料免除の「14日以上」の条件は育休を開始した月にのみ適用されます。育休の開始月は7月であるため、8月分の社会保険料は免除対象にはなりませんと説明されています。開始月以外の月について保険料免除を受けるには、原則ルールどおり「月末在籍」が必要になる、あるいは月をまたいで新たな育休として開始する必要がある、という整理になります。

3-6. 分割取得と14日要件の関係

産後パパ育休は最大2回まで分割取得できますが、分割の仕方によっては複数月にわたって14日要件を満たし、それぞれの月で保険料が免除されるケースもあります。人事担当者向けの解説では、月をまたいで出勤日を挟みながら2回に分けて取得した場合の例として、4月:14日間→開始月14日要件を満たす、5月:14日間→開始月14日要件を満たす、となり、4月・5月ともに社会保険料が免除されますという取得パターンが紹介されています。休業取得日を月内でどう配置するかによって、免除される月数が変わり得るということです。

3-7. 免除を受けるための手続き

社会保険料免除は自動的に適用されるものではなく、事業主から日本年金機構への申出が必要です。社労士事務所の解説では、この社会保険料免除措置を受けるためには、別途、日本年金機構(=事業所所在地を管轄する年金事務所)へ「健康保険 厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」の申請が必要であるとされています。この申出は被保険者本人が直接行うものではなく、事業主を通じて行う手続きである点も押さえておきましょう。

4. 出生後休業支援給付金における「通算14日以上」ルール

社会保険料免除とは別に、令和7年(2025年)4月から新設された給付金でも「14日以上」という条件が登場します。それが出生後休業支援給付金です。

4-1. 制度の概要

出生後休業支援給付金は、既存の育児休業給付金・出生時育児休業給付金に上乗せして支給される給付金です。厚生労働省の周知資料では、共働き・共育てを推進するため、子の出生直後の一定期間に、両親ともに(配偶者が就労していない場合などは本人が)、14日以上の育児休業を取得した場合に、出生時育児休業給付金または育児休業給付金と併せて「出生後休業支援給付金」を最大28日間支給しますと説明されています。

給付率については、既存の給付(給付率67%)にこの給付金(給付率13%)が上乗せされることで、合計で給付率80%となります。育休中は社会保険料が免除されることや、雇用保険料の負担が生じないことなどを踏まえると、実質的な手取り額は休業前の賃金の10割程度に近づく設計とされています。

4-2. 対象となる期間と「14日以上」の数え方

出生後休業支援給付金の要件について、厚生労働省の育児休業給付Q&Aを引用する形で紹介されている解説記事によれば、被保険者の配偶者に関する要件として、被保険者の配偶者が、出生日又は出産予定日のうち早い日から、子の出生日又は出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間に通算して14日以上の育児休業又は出生時育児休業を取得したこと、または一定の除外事由に該当することが求められています。

除外事由(配偶者の育休取得が要件とならないケース)としては、①配偶者がいない②配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない③被保険者が配偶者から暴力を受け別居中④配偶者が無業者⑤配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者ではない⑥配偶者が産後休業中⑦1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない場合が挙げられています。父親が被保険者の場合、多くのケースで配偶者(母親)が産後休業中に該当するため、実務上は母親側の育休取得日数が要件にならないことも少なくありません。

4-3. 社会保険料免除の「14日」との違い

ここで重要なのは、社会保険料免除の「同一月内14日以上」と、出生後休業支援給付金の「通算14日以上」は、カウントの範囲がまったく異なるという点です。

  • 社会保険料免除:同一暦月内での育休日数が14日以上か(月をまたいだ通算ではない)
  • 出生後休業支援給付金:子の出生後8週間以内などの一定期間を通じて、育休日数が通算14日以上あるか(月またぎでも通算できる)

そのため、「保険料は免除されたが給付金の上乗せ要件は満たさなかった」あるいはその逆、というケースも起こり得ます。両制度は別物であるという前提で、それぞれの要件を確認することが大切です。

4-4. 給付額の上限にも留意

出生後休業支援給付金を含む育児休業給付は、休業開始時賃金日額に上限が設けられています。制度解説記事では、休業開始時賃金日額には上限額(1万5690円)が設けられていますと紹介されており、賃金水準によっては「手取り10割相当」に届かない場合がある点も理解しておく必要があります(上限額は制度の見直しにより変更される可能性があるため、申請時点の最新情報をハローワークでご確認ください)。

5. 実務上・制度利用上の注意点

社会保険労務士の立場から、制度を利用する労働者・運用する企業双方に向けて、押さえておきたいポイントを整理します。

  • 社会保険料免除と給付金は申請主体が異なる:社会保険料免除の申出は事業主が年金事務所に対して行うのに対し、育児休業給付・出生後休業支援給付金の申請は雇用保険の被保険者(またはハローワークへの委任を受けた事業主)が行います。手続きの窓口を混同しないようにしましょう。
  • 配偶者の給付状況の確認が必要な場合がある:出生後休業支援給付金では、配偶者の育休取得実績(14日以上取得しているか)の確認が必要になるケースがあります。解説記事では、配偶者が雇用保険の被保険者の場合、ハローワークで配偶者の給付金支給状況(14日以上の支給があるか)を確認しますとされており、配偶者の出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給決定された後に申請手続きを行う必要がありますとの説明があります。申請のタイミングによっては、配偶者側の手続き状況待ちになることも想定しておく必要があります。
  • 就業日の記録を正確に:社会保険料免除・給付金いずれにおいても、労使協定に基づき育休中に就業した日は「14日」のカウントから除外されます。休業中に一部就業する予定がある場合は、就業日を正確に記録・管理することが、後のトラブル防止につながります。
  • 就業規則・育児介護休業規程の整備:産後パパ育休制度に対応した規程整備は、育児・介護休業法上、事業主に求められる対応です。休業中の就業に関する労使協定の締結有無や、対象者の範囲、申出方法などを規程に明記しておくことが重要です。
  • 制度の公平な運用:育児休業の取得を理由とした不利益取扱いや、取得を阻害する言動は、育児・介護休業法により禁止されています。企業には、防止のための方針策定・周知や相談窓口の設置が求められています。性別や雇用形態にかかわらず、制度が公平に利用できる職場環境を整えることが望まれます。

6. よくある質問

Q. 産後パパ育休を土日にまたいで14日弱しか取得できない場合、社会保険料は免除されませんか。

A. 社会保険料の月額免除については、休業日数が「同一月内で14日以上」であることが必要です。休日も日数に含めてカウントされるため、暦日ベースで14日に届くかどうかを確認する必要があります。14日に満たない場合、その月の月末に休業していない限り、原則として当該月の保険料は免除対象になりません。

Q. 出生後休業支援給付金は、父親だけが14日以上休めば必ずもらえますか。

A. 原則として、配偶者(多くの場合は母親)側にも通算14日以上の育休取得が求められますが、母親が産後休業中であるなど一定の除外事由に該当する場合は、配偶者の育休取得が要件とならないケースもあります。ご自身のケースがどの類型に該当するかは、勤務先の担当部署やハローワークにご確認ください。

Q. 社会保険料が免除される月は、将来受け取る年金額が減ってしまいますか。

A. 育児休業等期間中の保険料免除は、将来の年金額の計算においても、保険料を納めたものとして扱われる仕組みとなっています。具体的な取り扱いの詳細については、日本年金機構の公表資料をご確認いただくか、年金事務所にお問い合わせください。

7. まとめ

「パパ育休 14日以上」というキーワードの背景には、性質の異なる2つの制度が存在します。

  1. 社会保険料免除:同一月内に14日以上の育休を取得すると、その月の健康保険料・厚生年金保険料(労使双方分)が免除される(令和4年10月改正)
  2. 出生後休業支援給付金:子の出生後一定期間内に、両親が通算14日以上の育休を取得すると、既存の給付金に上乗せして給付が受けられ、手取り換算でおおむね10割相当となる(令和7年4月創設)

いずれも「14日」という数字が要件になっている点は共通していますが、カウントの対象期間や申請の窓口はまったく異なります。産後パパ育休の取得を検討する際は、取得日数だけでなく、いつ・どのように休業を配置するかによって、保険料免除や給付金の適用状況が変わり得ることを念頭に置き、勤務先の人事労務担当者や社会保険労務士、年金事務所、ハローワークといった専門窓口に事前に確認しながら計画を立てることをおすすめします。

制度は今後も改正が重ねられる可能性があるため、実際の取得にあたっては、必ず厚生労働省・日本年金機構・ハローワークが公表する最新の情報をご確認ください。


参考資料・出典

(本記事は上記の公的機関の公表資料および、これらを解説する各種専門サイトの記事を参照して作成しています。個別の事案への適用については、必ず一次資料および専門家にご確認ください。本記事は税務に関する内容を含みません。)

目次