「パパ育休」と「育休」の違いとは?社会保険労務士が制度・給付金・取得条件を徹底解説

「パパ育休」という言葉をニュースやSNSで見かける機会が増えました。しかし、「パパ育休と育休は何が違うのか」「両方取得できるのか」「給付金はどう変わるのか」といった点については、正確に理解されていないケースが少なくありません。

本記事では、社会保険労務士の立場から、厚生労働省が公表している公的資料や法令に基づき、「パパ育休(産後パパ育休・出生時育児休業)」と「育休(育児休業)」の違いについて、できる限り公平かつ正確に整理して解説します。制度の詳細は改正が重ねられているため、実際の申請にあたっては、勤務先の人事担当部門や所轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)、社会保険労務士等の専門家にご確認いただくことをおすすめします。

目次

1. 結論:「育休」と「パパ育休」は別の制度である

まず結論からお伝えすると、「育休(育児休業)」と「パパ育休(正式名称:出生時育児休業)」は、育児・介護休業法上、明確に区別された別の制度です。

  • 育児休業:原則として子が1歳(要件を満たせば最長2歳)になるまで取得できる、両親が利用できる基本的な休業制度
  • 出生時育児休業(産後パパ育休):子の出生後8週間以内に、最大4週間(28日)取得できる、より柔軟な短期の休業制度

両制度は法律上の根拠条文も異なり、対象期間・申出期限・分割取得の回数・休業中の就業の可否などに違いがあります。それぞれの制度を組み合わせて利用することで、夫婦が協力しながら仕事と育児を両立しやすくなる仕組みとなっています。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

2. 「育休(育児休業)」とは何か

2-1. 育児休業の法的根拠と対象者

育児休業は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」)第5条から第9条に規定されている制度です。原則として、1歳に満たない子を養育する男女の労働者が対象となります。男性・女性を問わず取得できる点が、この基本制度の特徴です。

有期雇用労働者についても、令和4年(2022年)4月の法改正により、「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が撤廃され、無期雇用労働者と同様の取扱いとなりました(ただし、労使協定により、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者を対象外とすることは可能です)。

2-2. 育児休業の対象期間

育児休業の対象期間は、原則として子が1歳に達するまでです。ただし、保育所に入所できない等の一定の事情がある場合には、1歳6か月まで、さらに1歳6か月時点でも同様の事情がある場合には2歳まで延長することが可能です。

2-3. 育児休業の分割取得

令和4年10月1日施行の改正により、育児休業は原則として2回まで分割して取得できるようになりました。これにより、出産直後だけでなく、保育所入所のタイミングや配偶者の就業状況等に応じて、柔軟に休業期間を調整できるようになっています。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内~令和4年4月1日から3段階で施行~」

3. 「パパ育休(産後パパ育休・出生時育児休業)」とは何か

3-1. 産後パパ育休の法的根拠

産後パパ育休の正式名称は「出生時育児休業」であり、育児・介護休業法第9条の2から第9条の5に規定されています。令和4年(2022年)10月1日から新たに施行された制度です。

法律の条文(第9条の2第1項)では、出生時育児休業について「子の出生の日から起算して八週間を経過する日の翌日までの期間内に四週間以内の期間を定めてする休業」と定義されています。

3-2. 産後パパ育休の対象者

産後パパ育休は、産後休業を取得していない労働者(主に男性を想定した制度ですが、養子縁組の場合など女性が対象となるケースもあります)が、子の出生後8週間以内の子を養育するために取得できる休業です。有期雇用労働者については、子の出生後8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに労働契約が満了することが明らかでない者に限り、対象となります。

3-3. 産後パパ育休の期間と分割取得

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に、最大4週間(28日)まで取得できます。この4週間は、2回に分割して取得することも可能です。ただし、分割して取得する場合は、最初にまとめて申し出る必要があります。

3-4. 産後パパ育休の申出期限

産後パパ育休の申出は、原則として休業開始予定日の2週間前までに行うこととされています。通常の育児休業の申出期限(原則1か月前)と比べて短く、直前の状況に応じて柔軟に取得しやすい制度設計になっている点が特徴です。なお、事業主が雇用環境の整備等について、法定の水準を上回る取組を労使協定で定めている場合は、申出期限を2週間超1か月以内の範囲で事業主が定めることも可能です。

3-5. 産後パパ育休中の就業について

通常の育児休業では、休業中の就労は原則として想定されていません。これに対し、産後パパ育休では、労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主が合意した範囲内で、休業中に一時的・臨時的に就業することが認められています。就業を希望する場合は、産後パパ育休の開始予定日の前日までに就業可能日・時間帯を申し出て、事業主が提示する内容と調整する、という手続きになります。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103504.html

4. パパ育休と育休の違い一覧表

比較項目育児休業(育休)出生時育児休業(産後パパ育休)
法的根拠育児・介護休業法第5条〜第9条育児・介護休業法第9条の2〜第9条の5
対象期間原則、子が1歳まで(延長で最長2歳)子の出生後8週間以内
取得可能日数上限なし(子が1歳になるまでの範囲)最大4週間(28日)
分割取得2回まで2回まで(初回にまとめて申出が必要)
申出期限原則1か月前まで原則2週間前まで
休業中の就業原則不可労使協定があれば、労使合意の範囲内で可能
対象者男女とも(1歳未満の子を養育する労働者)主に男性(産後休業をしていない労働者)

この表からもわかるとおり、産後パパ育休は「育児休業の一種」でありながら、出生直後の限られた期間に、より柔軟に使えるよう設計された特例的な枠組みという位置づけです。

5. パパ・ママ育休プラスとの関係

育児・介護休業法には、両親がともに育児休業を取得する場合に、休業可能期間を子が1歳2か月に達するまで延長できる「パパ・ママ育休プラス」という特例もあります。産後パパ育休・育児休業とパパ・ママ育休プラスを組み合わせることで、両親がそれぞれのタイミングで育児に関わりながら、切れ目なく休業を取得することが可能になります。

出典:厚生労働省「産後パパ育休」「パパ・ママ育休プラス」リーフレットhttps://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001006151.pdf

6. 経済的な支援制度(育児休業給付・社会保険料免除)

育児休業や産後パパ育休を取得した場合、要件を満たせば雇用保険から給付金を受け取ることができます。ここでは税制上の取扱いには触れず、給付制度の枠組みのみを解説します。

6-1. 育児休業給付金・出生時育児休業給付金

雇用保険の被保険者が育児休業(産後パパ育休を含む)を取得し、一定の要件(休業中の就業日数が一定以下であること等)を満たした場合、ハローワークを通じて育児休業給付が支給されます。給付率は、休業開始から180日目までは休業開始時賃金日額の67%、181日目以降は50%です。産後パパ育休を取得した場合は「出生時育児休業給付金」として、同様の給付率(67%)で支給されます。

出典:ハローワークインターネットサービス「育児休業給付」https://hoken.hellowork.mhlw.go.jp/static/ikuji_shussho.html

6-2. 出生後休業支援給付金(令和7年4月創設)

令和7年(2025年)4月から、新たに「出生後休業支援給付金」が創設されました。これは、被保険者本人と配偶者の両方が、子の出生後の一定期間内にそれぞれ14日以上の育児休業(産後パパ育休を含む)を取得した場合に、既存の育児休業給付金・出生時育児休業給付金に、最大28日間、賃金日額の13%を上乗せして支給する制度です。これにより、対象期間中の給付率は合計で最大80%となります。社会保険料免除や給付金の非課税といった要素と合わせると、休業前の手取り収入に近い水準が確保されやすくなるとされています。

出典:厚生労働省「2025年4月から『出生後休業支援給付金』を創設しました」https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001599643.pdf

6-3. 育児休業中の社会保険料免除

育児休業(産後パパ育休を含む)を取得している期間については、要件を満たせば、健康保険・厚生年金保険の保険料が被保険者負担分・事業主負担分ともに免除されます。免除を受けるための主な要件は、その月の末日が育児休業期間中であること、または同一月内で14日以上の育児休業を取得していることです(産後パパ育休期間中に就業した日数は、この14日以上のカウントには含まれません)。賞与にかかる保険料については、令和4年10月の改正により、賞与月の末日を含めて連続1か月を超える育児休業を取得している場合に限り免除の対象となります。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

7. 事業主(企業)が講じるべき義務

育児・介護休業法は、労働者本人の権利だけでなく、事業主が講ずべき義務についても定めています。主なものは以下のとおりです。

  • 雇用環境整備の措置:育児休業・産後パパ育休の申出が円滑に行われるよう、研修の実施、相談体制の整備、取得事例の収集・提供、制度・方針の周知のいずれかの措置を講じること
  • 個別の周知・意向確認:労働者本人またはその配偶者の妊娠・出産等の申出があった場合に、育児休業・産後パパ育休に関する制度を個別に周知し、取得の意向を確認すること
  • 育児休業取得率の公表義務:常時雇用する労働者数が一定規模以上の企業について、男性の育児休業等取得率の公表が義務付けられています(公表対象企業の範囲は法改正により順次拡大されています)

なお、育児・介護休業法は令和6年(2024年)にも改正されており、令和7年4月1日および同年10月1日から、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充など、新たな内容が段階的に施行されています。最新の詳細は厚生労働省の公表資料をご確認ください。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

8. データで見る男性の育児休業取得の現状

厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によれば、令和4年10月1日から令和5年9月30日までの間に配偶者が出産した男性のうち、令和6年10月1日までに育児休業(産後パパ育休を含む)を開始した者の割合(男性の育児休業取得率)は40.5%となり、前回調査(30.1%)より10.4ポイント上昇し、過去最高を記録しました。また、育児休業を開始した男性のうち、産後パパ育休を取得した者の割合は60.6%にのぼり、産後パパ育休が男性の育児休業取得の広がりを後押ししていることがうかがえます。一方で、同調査では女性の育児休業取得率は86.6%となっており、男女間には依然として差があります。

出典:厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」結果概要https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r06/06.pdf

9. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 産後パパ育休と育児休業は同時に取得できますか? 産後パパ育休(子の出生後8週間以内に最大4週間)を取得したうえで、その後にあらためて育児休業(子が1歳になるまで)を取得することが可能です。両者は法律上別の制度として設計されており、組み合わせて利用できます。

Q2. 産後パパ育休は女性も取得できますか? 産後パパ育休は、産後休業をしていない労働者を対象とする制度であるため、養子縁組をした場合など、産後休業の対象とならない女性労働者も要件を満たせば取得することができます。

Q3. 育児休業や産後パパ育休を取得したことを理由に不利益な取扱いを受けることはありますか? 育児・介護休業法第10条等は、労働者が育児休業・産後パパ育休の申出をしたこと、または取得したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁止しています。

10. まとめ

「育休」と「パパ育休(産後パパ育休)」は、いずれも育児・介護休業法に基づく制度でありながら、対象期間・申出期限・分割回数・休業中の就業の可否といった点で異なる特徴を持つ、別建ての制度です。産後パパ育休は、子の出生直後という特に負担の大きい時期に、柔軟に短期間の休業を取得できるよう設計されており、その後の育児休業と組み合わせることで、家庭の状況に応じた休業プランを組み立てることができます。

制度の詳細や自社への適用については、就業規則や労使協定の内容によって取扱いが異なる場合があります。実際の取得を検討される際は、厚生労働省の公表資料や、勤務先の人事担当部門、社会保険労務士等の専門家に個別にご確認いただくことをおすすめします。


参考文献・出典一覧

※本記事は、記事作成時点で公表されている法令・行政資料に基づき作成しています。制度は改正される場合がありますので、最新情報は厚生労働省ウェブサイト等でご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。

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